研究課題/領域番号 |
23K26991
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補助金の研究課題番号 |
23H02298 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
西川 淳 東海大学, 海洋学部, 教授 (10282732)
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研究分担者 |
酒井 大輔 北見工業大学, 工学部, 准教授 (10534232)
広瀬 裕一 琉球大学, 理学部, 教授 (30241772)
垣内田 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (40343660)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2027年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2026年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | ゼラチン質動物プランクトン / クラゲ / 表皮 / 光反射 / ニップルアレイ構造 / 外皮 / 微細構造 / 光屈折率 / 表皮微細構造 / 光学特性 / 光学シミュレーション / 進化・多様化 |
研究開始時の研究の概要 |
ゼラチン質プランクトンの多くは体を透明にすることで視覚捕食者に対して自身を隠蔽している。加えて、我々の研究により体の表面に特殊な構造をもつことで体の輪郭をぼやけさせる種も存在することが、系統の異なるいくつかの分類群で明らかになってきた。しかし、多くの種で、外皮の表面微細構造とその光学的特性あるいは適応意義については不明なままである。本研究は、ゼラチン質プランクトン外皮の微細構造、物性、光学特性を網羅的に明らかにし、外皮の形態・機能の類型化を行う。また、モデル検証を通して、それらの適応意義について明らかにする。さらに、ゼラチン質プランクトン外皮構造の進化・多様化の過程について解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ゼラチン質動物プランクトン外皮の微細構造、物性、光学特性を網羅的に明らかにし、外皮の形態・機能の類型化を行い、得られた結果とモデル検証を通して、外皮構造の適応意義について明らかにすることを目的とする。また、得られた結果から、ゼラチン質プランクトン外皮構造の進化・多様化の過程について解明することを最終目的とする。 初年度である本年度は、調査船等を用いて、駿河湾、東北沖など様々な海域の様々な深度帯でゼラチン質動物プランクトン試料の採集を実施した。また、水族館で飼育されているクラゲ類についても試料を得た。得られた試料は、刺胞動物門ヒドロ虫綱27種,鉢虫綱23種,棘皮動物門ナマコ綱1種,軟体動物門腹足綱3種,脊索動物門タリア綱5種の計5綱58種約300個体である。それらについて、フォースゲージを用いた外皮組織の硬さ計測と、透過型電子顕微鏡による体表の微細構造および表面構造の観察を行った。さらに、アッベ屈折計を用いて外皮の光屈折率の計測を行った。得られた外皮の微細構造の実測値をもとに、厳密結合波解析(RCWA)を用いて体表における光反射シミュレーションを実施した。クラゲ類における外傘の表皮微細構造は種によって異なり、微絨毛を密生する種ではこの構造が体表の光反射を低減している可能性が示された。また、組織の硬さと屈折率の関係について、情報を得ることができた。さらに、研究の過程においてハダカゾウクラゲの消化管の微細構造についても新たな知見が得られた。成果の一部は、論文1報(Nishikawa and Hirose 2023, Plankton Benthos Res.)、学会発表3回として公表した他、現在論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
知見が限られていたクラゲ類について多くの試料を得ることができ、外皮の微細構造について異なる生息域(表層、中層)や分類群ごとに、より詳細な情報を得ることができた。特に、水族館試料の利用ができたことで種数を大幅に増加することができ、傾向や類型化を検討できる段階に入りつつある。成果の一部は国際シンポジウムおよび国内の学会で発表を行い、一定の評価を得ている。論文発表1件については、Plankton Benthos Research誌のオンライン公開時に、月間アクセス数ランキングの一位を獲得した (2023年12月)。また、研究計画通り、初年度の予算により、高速演算が可能な計算機を組み上げることができ、効率的に光学シミュレーションを行うことが可能となった。さらに、微小な試料を対象とした光反射の定量とスペクトル解析を実現するための計測システムを構築し、標準試料などを用いたキャリブレーションおよび性能確認を経て試用段階に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた刺胞動物(クラゲ類)に関する解析を継続して行い、結果について取りまとめていきたい。また、試料の採集・入手については、引き続き水族館等の協力も得て継続し、より多くの種数、より広範な分類群をカバーしていきたい。また、知見が限られている他の分類群についても、情報を蓄積していきたい。特に、体の一部を空中に露出させているニューストン、毛顎動物、多毛類などの解析も進める予定である。表皮構造の観察については、固定試料が得られ次第、体表微細構造の観察を行い、ナノ構造の情報蓄積を進める。屈折率計測については、可搬性のアッべ屈折計を中心に用いて、生鮮試料の計測を実施する。さらに、フォースゲージによる硬さ計測も同時に行う。また、実際の生体の微小な箇所を狙った表界面反射測定を開始し、さらに実環境に近づけた測定の試みとして、水浸レンズなどを組み込んで顕微分光反射測定システムの機能・性能を改良していく 。今年度同様、高性能コンピュータを用いて微細構造と屈折率のデータをもとに体表の光反射シミュレーションを行う予定である。
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