研究課題/領域番号 |
23K27019
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補助金の研究課題番号 |
23H02326 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
取出 伸夫 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (70212074)
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研究分担者 |
渡辺 晋生 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10335151)
坂井 勝 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (70608934)
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
徳本 家康 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80445858)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | 反応移動 / 根群域 / 好気・嫌気分解 / 炭素・窒素循環 / 団粒 / 養分吸収 / 反応移動モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,水分不飽和の畑から湛水状態の水田までの窒素炭素動態の包括的な解明と体系化を目的に,水田と畑を対象に重量ライシメータと実験室内の土カラムにおける有機物分解過程の水分,溶液・ガス成分,熱の集中モニタリングを行う.不均一な流れを表現する動相・不動相モデルを加えた土中の水分・溶質・ガス・熱移動モデルに好気・嫌気条件の有機物分解モデルを連結させ,炭素・窒素成分の形態変化と反応移動の解析を行う.そして,根群域スケールから団粒スケールにおける不均一な酸素供給と好気・嫌気分解速度の評価行う.それにより,土中の好気・嫌気状態の混在の実態把握を試みる.
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研究実績の概要 |
本研究では,水分不飽和の畑から湛水状態の水田までの窒素炭素動態の包括的な解明と体系化を目的に,水田と畑を対象に重量ライシメータと実験室内の土カラムにおける有機物分解過程の水分,溶液・ガス成分,熱の集中モニタリングを行う.令和5年度は,Unisence社のニードル型溶存酸素,pH,酸化還元電位測定装置を用いた微細な分布の測定装置を確立した.ステッピングモータを用いたニードル型センサの可動装置を自作し,ミリメートル単位の空間分布の測定を可能にした.今後,実験室の水田を模したカラム実験において,表面酸化層,根域周辺分布の測定に応用する予定である.ガラス室内に設置した下端の圧力調整が可能な重量ライシメータ(直径30cm,高さ30~100 cm)では,引き続き下端調節の制御法の検討を行った.また.高さ100 cmのライシメータを用いて溶質分散実験を行った. これまで開発してきている有機物分解モデルに対しては,CEC と AEC の pH 荷電曲線の文献データに対する変異荷電モデルの適合法の検討,陽イオン,陰イオン交換を伴う黒ボク土中の窒素成分の検討を行った.また,荷電を考慮しない有機物分解モデルに対しては,植物根の窒素成分の能動吸収,分解過程における溶解有機物の生成,大気からの窒素固定を追加した.今後,荷電を含むモデルにおいても同様の拡張を行う予定である.また,水田を対象とした好気・嫌気の有機物分解モデルでは,老朽化水田防止のためのスラグ肥料の投入効果についての試算を行い,還元化の進行抑制効果を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験,数値計算プログラムともに予想外の困難の解決に多大の時間を要するのは常であるが,より精度の高い計測,計算にむけておおむね順調に進展している.重量ライシメータの下端圧力の制御法は課題は残るものの,制御のアルゴリズムの改良が進んだ.そして,高さ100 cmのライシメータを用いて溶質分実験を行うことができた.また,ミリメートル単位で測定位置の制御できるニードル型センサは,今後の測定が期待できる. 計算プログラムは,利用しているHYDRUSのバージョンアップ(version 5)に伴い,有機物分解プログラムも新バージョンへと移行した.その際,プログラムのさらなる改良を行い,より安定した精度の高い計算が可能となった.プログラムの解説も,version 5版へと改良中である.
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今後の研究の推進方策 |
これまで開発した好気・嫌気条件下の有機物分解を伴う土中の反応移動モデルに対して,植物根による補填吸水モデル,各種イオンの能動的吸収モデルを追加する.その際,陽イオンの吸収にはH+,陰イオンにはOH-が吸収量と等しく放出されると仮定し,電荷バランスを保つとする.さらに,pH緩衝作用にはH+の授受が生じる反応基を用いた変異荷電モデル,また,NH4+は陽イオン交換,NO3-は陰イオン交換を考慮することにより,窒素成分の電荷バランスとpHを考慮した養分吸収のモデル化が可能になる.さらに,不均一な水分溶質流れの影響を考慮するために動相・不動相モデルを加える.そして,植物の吸水,養分吸収を含む水田土,畑土を対象とした数値実験を行う.水田土では,鉄分が欠乏して還元化の進行した老朽化水田対象に,硫化水素とメタンの発生条件,還元防止のために用いられる鉄,マンガンに富むスラグ肥料の効果を検討する.また,水分不飽和の団粒土の有機物分解過程を対象に,団粒内部のDO, Eh分布,還元物質の変化,CH4やN2Oなどの発生を評価し,団粒土中のミクロな酸化・還元状態の混在の実態を明らかにする. より精密なモニタリングを行うために,水田土と団粒構造の発達した黒ボク土を対象に室内の小型土カラム実験(内径9cm,長さ30cm程度)を行う.水田土に対しては,酸化的下層土を持つ水田を再現し,ニードル式DO,Eh, pH電極によるモニタリングを行う.表面酸化層は,電極の可動装置を用いて,地表面から数 cm深さの鉛直分布を測定する.そして,還元の進行過程に注目した反応移動モデルによる解析を行い,表面酸化層の形成条件を検討する.また,局所的な還元の進行によるメタンの発生要因を検討する.
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