研究課題/領域番号 |
23K27021
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補助金の研究課題番号 |
23H02328 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
緒方 英彦 鳥取大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90304203)
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研究分担者 |
周藤 将司 松江工業高等専門学校, 環境・建設工学科, 准教授 (00726292)
兵頭 正浩 鳥取大学, 農学部, 准教授 (60611803)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
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キーワード | プレキャスト部材 / 蒸気養生 / 前養生時間 / 拘束治具 / 凍害劣化解析 / 凍結融解抵抗性 / 気泡径分布 / 熱伝達率 / 緊張力 / 凍害診断 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では,積雪寒冷地における農業水利コンクリート構造物の建設や改築で利用される大型プレキャスト部材を対象に,製造方法および部材の連結等により作用する応力がコンクリートの凍結融解抵抗性や実環境で供用される部材の耐凍害性に及ぼす影響を明らかにするとともに,プレキャスト構造物の構造的特徴や積雪寒冷地特有の環境を踏まえた凍害診断手法および凍害劣化予測手法を確立して提案する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では,積雪寒冷地における農業水利コンクリート構造物の建設や改築で利用される大型プレキャスト部材を対象に,製造方法および部材の連結等により作用する応力がコンクリートの凍結融解抵抗性や実環境で供用される部材の耐凍害性に及ぼす影響を明らかにするとともに,プレキャスト構造物の凍害診断手法や凍害劣化予測手法を確立することを目的にしている。本年度は,製造方法が凍結融解抵抗性に及ぼす影響,実環境における部材の耐凍害性の評価,拘束圧を導入した凍結融解試験方法の開発,積雪を考慮した温度解析条件について研究を行った。 製造方法に関しては,二次製品メーカーで打設したコンクリートを対象に,蒸気養生をするまでの前養生時間とコンクリートの凝結時間の関係に注目し,前養生時間を始発時間前,終結時間後として蒸気養生を行った2種類のコンクリート供試体を作製した。作製したコンクリート供試体は,二次養生として気中養生を行い,気泡径分布の測定および気泡の形態の微視的観察を行うとともに,凍結融解試験(JIS A 1148のA法)により凍結融解抵抗性を評価した。実環境における部材の耐凍害性の評価に関しては,同じコンクリートで同様に前養生時間が異なる角フリューム(500×2,000mm)を2体作製し,中国山地の岡山県真庭市に位置する鳥取大学農学部教育研究林において暴露試験を開始した。拘束圧を導入した凍結融解試験方法に関しては,JIS A 1148に適用可能な拘束治具を設計・製作し,拘束圧の管理方法,気中条件および水中条件における凍結融解試験への適用性の評価を行った。積雪を考慮した温度解析条件に関しては,積雪状況が異なる北海道内の3地点(岩見沢,浦河,帯広)でコンクリート供試体を暴露し,解析に用いるための温度データ(供試体の内部温度と表面温度,外気温)および積雪状況を確認するための定点画像データを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題における研究項目の一つ目は,プレキャストコンクリートの製造方法が凍結融解抵抗性や実環境で供用される部材の耐凍害性に及ぼす影響を明らかにすることである。本年度は,前養生時間を変えた2種類のコンクリート供試体と角フリュームを作製した。供試体は,円柱供試体の測定を鳥取大学,角柱供試体の測定を松江工業高等専門学校で行い,前養生時間に加えて部材の形状が凍結融解抵抗性に及ぼす影響についても検討を加えることができた。また,西日本で有数の積雪地である岡山県真庭市において作製した角フリュームの暴露試験を開始することができ,プレキャスト部材の耐凍害性の評価を実環境で行うための準備を整えることができた。 研究項目の二つ目は,プレキャスト部材の連結等により作用する応力がコンクリートの凍結融解抵抗性に及ぼす影響を明らかにすることである。本年度は,JIS A 1148に適用可能な拘束治具を設計し,コンクリートに導入する拘束圧の管理方法を検討した。その上で,拘束治具をSUS304で製作し,採用した方法であるひずみゲージ法の検証を気中条件および水中条件の凍結融解試験で行った。水中凍結融解試験における拘束圧の管理および凍結融解抵抗性の評価方法は,次年度も継続する予定であるが,拘束圧を導入したコンクリートの凍結融解試験方法の確立に向けて拘束治具の基本性能の確認ができた。 研究項目の三つ目は,プレキャスト構造物の凍害診断手法や凍害劣化予測手法の開発である。本年度は,実環境における凍害診断手法の研究対象として角フリュームの暴露試験を開始するとともに,凍害劣化予測手法の一部を担う積雪の影響を考慮した温度解析のためのデータを収集することができ,凍害診断手法と凍害劣化予測手法の研究に着手するための準備を整えることができた。 このように本研究課題は,おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
プレキャストコンクリートの製造方法が凍結融解抵抗性に及ぼす影響に関する研究では,二次製品メーカーの協力の下,実際のプレキャスト製品と同じ設備を用いて作製したコンクリート供試体および部材を用いている。本年度は,前養生時間を始発時間前,終結時間後として蒸気養生を行った2種類のコンクリート供試体を作製した。ただし,二次製品メーカーにおける蒸気養生槽の使用時間の関係から前養生時間の設定が限定的になったこと等もあり,次年度は実際のプレキャスト製品で行われる前養生時間も考慮して供試体の作製を行い,前養生時間が凍結融解抵抗性に及ぼす影響の評価を行う。また,プレキャスト製品は,一般に製造後,工場内の野外ヤードにストックされ外気に曝される。このことを踏まえ,作製したコンクリート供試体を促進中性化試験装置により中性化し,出荷までの環境が凍結融解抵抗性に及ぼす影響を評価する。 拘束圧を導入した凍結融解試験方法に関しては,本年度にJIS A 1148に適用可能な拘束治具を設計・製作できたため,次年度以降は水中凍結融解試験における拘束圧の管理および凍結融解抵抗性の評価方法の研究に着手する。拘束圧の管理では,凍結時と融解時で拘束圧が変化することが事前実験により明らかになっていることから,試験中のコンクリート供試体周りの水膜の影響も加味した上で,拘束治具により作用する軸力とコンクリート供試体内部の応力の関係を明らかにする。凍結融解抵抗性の評価方法では,拘束治具を保持した状態でのコンクリート供試体の共鳴振動法および超音波法の適用性を評価する。 プレキャスト構造物の凍害劣化予測手法に関しては,本年度に積雪の影響を考慮した温度解析のためのデータを収集することができたことから,次年度は収集した温度データと定点画像データを用いて積雪状況が異なる条件での温度解析を行い,積雪が熱伝達率に及ぼす影響を明らかにする。
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