研究課題/領域番号 |
23K27030
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補助金の研究課題番号 |
23H02337 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
帖佐 直 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10355597)
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研究分担者 |
菊地 麗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 研究員 (70816214)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2023年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 踏圧ロボット / 被覆植物 / 生育型 / 優占化 / マシンビジョン / 抑草 / 雑草識別 |
研究開始時の研究の概要 |
畦畔やその周辺で、雑草の生長と植生を認識しながら作業する小型の踏圧ロボットを用いて、被覆植物の優占化による持続的な雑草管理を行う技術を開発する。地表面の広葉植物での被覆は抑草に有効であるが、他の雑草が旺盛になると抑草効果が低減する。そこで、踏圧ロボットでの定期的な管理により被覆植物の優占化を試みる。本研究では、最初に、踏圧の被覆植物や他の雑草への作用を調査し、踏圧の影響を推定する踏圧モデルを作成する。次に、畦畔などの画像から被覆植物と他の雑草とを識別し、局所的な踏圧の必要度を判断できる踏圧ロボットを開発する。さらに、これらの開発技術の実際の抑草への供試・検証を行い、導入の方策を示す。
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研究実績の概要 |
踏圧が被覆植物の優占化に有効であることを検証する試験を実施した。被覆植物としてクリーピングタイムとヒメイワダレソウをそれぞれ植栽した試験区を設け、踏圧処理を行った。踏圧頻度は週に9回、3回、0回の3条件とした。これまでの予備試験を拡充させて、夏から秋にかけ区画内の被覆植物と区画内に発生した雑草の植生調査を行い、生育量の指標であるMDR(乗算優占度)を算出した。クリーピングタイム・ヒメイワダレソウ・その他の雑草のいずれも、踏圧頻度が高いほどMDRが小さくなった。予備試験の試験と結果と比較すると、クリーピングタイムについては2年目のMDRのほうが、やや小さくなったが、ヒメイワダレソウについては逆の傾向が見られた。被覆植物以外の雑草のMDRは概して2年目により高くなる傾向が見られたが、ヒメイワダレソウの高頻度踏圧処理区においては、その増加が抑えられていた。これは踏圧頻度の高さに加え、ヒメイワダレソウの踏圧耐性が比較的高いため、1年目から2年目の間に成長して被覆がより広がり、日光の遮蔽などによって雑草の抑制効果がより高くなったものと考えられる。この結果から、雑草のMDRを低く保つためには今回の処理条件の中では週9回の踏圧が最も有効であること、またヒメイワダレソウはクリーピングタイムよりも踏圧耐性が優れ、高頻度の踏圧を施してもある程度の生育を保持し、他の雑草の抑草が可能となることが示された。 植生調査と併せて、対象となる範囲を真上から撮影した画像の解析、LiDARやフォトグラメトリー(SfM)による点群データの活用により、雑草が地表を覆う程度(被覆率)や、3次元での生育量の定量化などについても検討した。被覆率については、画像と点群データとでは得られる結果が異なり、雑草の生育型の違いの識別に利用できる見通しを得た。本成果は、雑草種と生育量を認識するマシンビジョン開発に活用される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、踏圧ロボットを自律的に動作させて被覆植物の優占化を図り、草刈り作業を軽減する畦畔や農道法面の管理システムを構築することである。2023年度は2つ課題を実施した。 最初に、採択前からの予備試験を拡充させて、踏圧が被覆植物の優占化に有効であるとする仮説を検証した。被覆植物としてクリーピングタイムとヒメイワダレソウをそれぞれ植栽し、試験区ごとに頻度を変えて踏圧処理を行った。被覆植物と他の雑草の生育について調査をした結果、雑草のMDRを低く保つためには今回の処理条件の中では週9回の踏圧が最も有効であること、またヒメイワダレソウはクリーピングタイムよりも踏圧耐性が優れ、高頻度の踏圧を施してもある程度の生育を保持し、他の雑草の抑草が可能となることが示された。さらに、植生調査と併行して、RGB画像や点群データを活用したマシンビジョンの開発にも着手した。 課題1「踏圧が及ぼす影響の定量化と踏圧モデルの作成」では、複数年にわたる植生の遷移を調査する必要があり2023~2025年度の実施計画として、最終的に踏圧の影響を推定する踏圧モデルを作成することを目標としている。初年度に、踏圧の効果と適切な踏圧頻度が示されており、当初計画にそった進捗である。課題2「被覆植物と他の雑草のMDRが把握可能なマシンビジョンを搭載した踏圧ロボットの開発」では、2023~2024年度の実施計画として、イネ科雑草と広葉雑草を識別可能なマシンビジョンの開発と、開発したマシンビジョンを搭載した踏圧ロボットの試作を目標としている。初年度の段階で、画像と点群データとでは得られる結果が異なることを活用することで、雑草の生育型の違いを識別できる見通しを得ており、この結果を踏まえ、2024年度には、マシンビジョンを搭載した踏圧ロボットの試作が可能である。 以上を踏まえ、進捗状況は適切であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に行った踏圧効果についての検証を継続するとともに、「被覆植物と他の雑草のMDRが把握可能なマシンビジョンを搭載した踏圧ロボットの開発」、「踏圧ロボットの抑草への適用と評価」に取り組んでいく。 踏圧効果の検証を通じて、被覆植物の繁茂とそれ以外の雑草の生育抑制を同時に実現させるうえで、適切な踏圧頻度が存在すること示された。過剰な踏圧は裸地化を引き起こし、過少な踏圧は抑草効果がないため、一連の取り組みを通じて、被覆植物や雑草の生育を認識しながらのロボットの導入が有効であることも実証されることとなる。2年目は、画像と点群データの活用について精査し、イネ科雑草と広葉雑草を識別し、それぞれのMDRを算出するマシンビジョンを開発する。初年度に得られた結果を踏圧モデルとして整理し、被覆植物を優占化させるための局所的な踏圧の必要性と踏圧強度、踏圧頻度などを判断しながら、作業を行う踏圧ロボットを試作する。ロボットは踏圧のための機構は搭載せずに、走行部が踏圧の作用を担うため、ホイールやクローラタイプなどの適用を想定して、土壌や雑草に作用する2方向の力(荷重とせん断力)の影響を検証する。走行部のタイプに関わらず、操舵はスキッドステア方式(ハンドルによる操舵ではなく、左右の駆動輪もしくは履帯の差動による進行方向を決定する制御方法)による方向制御とすることとし、制御ユニットは共通化する。 当初計画どおり研究は進捗しており、3年目には開発した踏圧ロボットを、雑草管理が必要な緑地に設置し、抑草効果と被覆物の優占化について検証する。検証を通じて、消費エネルギーや動作時間、充電の頻度などの調査を行う。一台のロボットで対応できる面積、大規模経営体や集落規模でのロボットの必要台数、複数台のロボットの運用などについて検討し、持続的な雑草管理を実現する踏圧ロボットの広域的な導入指針を明らかにする。
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