研究課題/領域番号 |
23K27037
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補助金の研究課題番号 |
23H02344 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 石根 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10290909)
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研究分担者 |
前田 義昌 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30711155)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2023年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | イオン輸送 / 光合成 / クロロフィル / リン酸回収 / 輸送体 / シアノバクテリア / Mgイオン / Mg輸送体 / ポリリン酸 / リン酸イオン / Mg2+輸送体 / ゲノム比較 |
研究開始時の研究の概要 |
光合成に不可欠な金属イオンであるMg2+を光合成の起源生物であるシアノバクテリアが、どの様に細胞内に取り込んで利用しているかを明らかにすること、及びその機能を向上して効率よく細胞外のリン酸をポリリン酸として細胞内に取り込んで回収する手法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803株のMg2+輸送に関わるメカニズムの解明を目指している。Mgは光合成色素のクロロフィルの配位金属としてシアノバクテリアには不可欠であり、またSynechocystisが過剰のリン酸を細胞内にポリリン酸として蓄積する際のカウンターイオンとしても重要な金属イオンである。しかしながら、シアノバクテリアのMg2+の輸送のメカニズムはこれまで未解明である。Mg2+の輸送機構の解明によって、光合成へのMgイオンの関わりと高濃度のリン酸を含んだ廃水などからのリン酸の効率的な回収技術の開発に発展できることが期待されている。 Synechocystisの染色体配列から、他のバクテリアでMg輸送に働くタンパク質群(MgtE, CorA, MgtA/B)のホモログ遺伝子を検索し、MgtE:slr1216、CorA:sll0671, sll0507、MgtA/B:sll0672, slr0822, sll1614の6つの候補遺伝子を見出した。これまでに、slr1216、sll0671,sll0507、sll0672遺伝子の単独破壊株を作製した。シアノバクテリアは細胞内に複数コピーの染色体をもつが、いずれの変異株においても全ての染色体が欠損型に置き換えられており、これらの遺伝子は生存には必須な物ではないことがわかった。シアノバクテリアの通常の培養条件では、Mg2+を0.3 mM添加して培養しているが、野生株を0.1 mMのMg2+存在下で培養すると生育が制限されることがわかったので、これらの株を0.1 mMのMg2+を含む培地で培養した。その結果、sll0507の欠損株で野生株やその他の変異株に比べて有意に生育が制限されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに他のバクテリアのMg輸送に関わるとして知られているMgtE、CorA、MgtA/Bのホモログを、Synechocystisのゲノム配列からピックアップし、それらの変異株の中からMg2+の制限条件で生育が明らかに悪い株を見出している。この表現型は、Mg輸送に関わる輸送体の変異株として予想された表現型の1つである。しかしながら、十分なMg2+供給条件では、生育に差は見られないことから、この候補輸送体の他にMg2+輸送に関わるタンパク質が存在している可能性が残されている。 当初、他のバクテリアのMgイオン輸送とは全く異なった仕組みでのMg取り込み系がシアノバクテリにあったら、もっと大がかりなスクリーニングや網羅的な発現解析を行う必要があると思っていたが、少なくとも1つ相同性を用いたスクリーニングにより、候補遺伝子が絞られてきたことは、計画の1年目としては非常に良かったと考えている。引き続き、残りの候補遺伝子の探索と多重変異株を作製することで、絞り込みを進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにSynechocystisのMg2+イオンの輸送に関わる輸送体遺伝子の候補として、sll0507を見出している。ただ、この単独変異株は、通常の人工培地に含まれる0.3 mMのMg2+存在下では生育に大きな差は見られていないことから、この輸送体の他にもMg2+の輸送に関わる仕組みが存在することが強く示唆されている。残りの2つの候補遺伝子slr0822、sll1614の欠損株の作製および、sll0507との二重変異体の作製を早急に進めたい。 また、Mg2+欠損条件でのsll0507遺伝子の発現量の変化をRT-PCRによって確認し、Mg欠損条件で発現量が増加するかどうかについても検討したい。これが確認できれば、他の候補遺伝子もMg欠損条件で発現量が増加すると考えられるので、残りの5つの候補遺伝子の発現を解析し、あるいはRNA-seqにより、Md欠損条件での遺伝子発現の変化を網羅的に調べることでも、第2第3の候補遺伝子の特定に繋げることができると期待できる。
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