研究課題/領域番号 |
23K27050
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補助金の研究課題番号 |
23H02357 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 幹 東北大学, 農学研究科, 教授 (20250730)
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研究分担者 |
米倉 真一 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (40443113)
喜久里 基 東北大学, 農学研究科, 准教授 (90613042)
徳武 優佳子 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (90824657)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | ニワトリ / 骨格筋 / リガンド依存性転写因子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、①骨格筋細胞における脂質代謝調節転写因子群およびインスリンシグナルの活性化に対する細胞分化機能のin vitro解析、②初期成長時におけるLXRおよびFXR機能のin vivo調節誘導、③転写活性の栄養学的調節による実用的手法の開発、を通して食肉生産性向上(骨格筋重量の向上、飼料効率の改善)の技術基盤創りを実践する。
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研究実績の概要 |
Liver X receptor(LXR)やFarnesoid X receptor(FXR)などのリガンド依存性転写因子が骨格筋の代謝に関与していることがマウスなどで明らかとなっている。LXRやFXRのリガンドである胆汁酸や酸化コレステロールは、ヒナの初生期に急増することを考えると、初生期の骨格筋細胞の増殖・分化がリガンド依存性転写因子による調節作用を強く受けているものと推定される。本研究では、LXR、FXRをはじめとする一連の転写因子と、これらの転写因子の機能発現を制御するインスリンシグナルに着目して、家禽骨格筋細胞の増殖・分化に対するこれらの転写因子の作用とメカニズムを解明し、「栄養素(リガンド)による転写活性の制御→初生期の骨格筋細胞増殖促進→食肉の効率的生産」という新たな畜産の技術基盤を構築することを目的として行う。 事業初年度である本年度は、ニワトリ胚から骨格筋細胞を調整し、ニワトリ骨格筋の分化を経時的に観察する培養条件を用いて、LXR、FXR、およびSREBPsの発現変動を調べた。その結果、ニワトリ骨格筋細胞では、分化が進行するに伴いLXRおよびSREBP2の発現が上昇し、コレステロールの代謝が活性化している可能性が示唆された。一方で、FXRやSREBP1の発現は非常に低く、その発現の変動も認められなかった。そこで、LXRのアゴニストであるT0901317およびFXRのアゴニストであるGW4064を培地に添加して、細胞の増殖および分化に対する影響を観察したところ、T0901317の添加により、骨格筋細胞の分化を明確に抑制し、分化マーカーであるMyogeninの発現が有意に低下するとともに細胞の融合が抑制された。よって、ニワトリの骨格筋細胞の分化は、LXRにより制御されている可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニワトリ胚から調整した骨格筋細胞を用いて、リガンド依存性転写因子の一つであるLXRが骨格筋細胞の分化調節因子の一つであることをはじめて明らかにし、次年度以降のリガンド依存性転写因子を制御することによる新たな効率的食肉生産技術開発のターゲットとしてLXRに着目することが適切であることを明らかにすることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。論文や学会等による公表は、現時点では行っていないものの、次年度には少なくとも学会における発表と論文投稿を予定しており、この点においても問題はないものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果から、ニワトリの骨格筋分化にはリガンド依存性転写因子の一つであるLXRが強く関与していることが示された。そこで、今後は ①リガンド依存性転写因子の骨格筋細胞分化・増殖調節メカニズムを明らかにするために、LXRの下流に存在するSREBP、さらにその下流に位置する脂肪酸とコレステロールの合成に着目して、その作用機作を明らかにする。さらには、転写因子および酵素をタンパク質のレベルで解析する。具体的には、まず、最も下流に位置するコレステロール合成酵素、および脂肪酸合成酵素の阻害剤をLXRのアゴニストとともに添加し、初代骨格筋細胞の分化の様相を観察する。同様に、SREBPの阻害剤であるFatostatin Aを添加して細胞分化を観察する。 ②LXRのリガンドである酸化コレステロール、あるいはグルコースとグルコース-6-リン酸のin vivoにおける濃度が血中および筋肉中でどのように変化しているかを観察し、これら代謝産物によってin vivo骨格筋が制御されている可能性を探る。具体的には、孵化前、孵化直後、3日齢、42日齢の血液と筋肉を採取し、上記の分子をGC-MSで測定する。 ③LXRのin vivoにおける遺伝子発現の経時的変動を観察し、LXRの発現自体を制御することが可能であるかを検討する。具体的には、孵化前、孵化直後、3日齢および42日齢の骨格筋におけるLXRの遺伝子発現を測定し、その変動を観察する。また、これまでの研究で骨格筋細胞の分化抑制による増体改善効果が認められている栄養素を給餌した場合の発現も併せて解析する。 以上を通じで、次年度に行う予定のリガンド依存性転写因子を制御することによる新たな効率的食肉生産技術の構築へと発展させる。
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