研究課題/領域番号 |
23K27065
|
補助金の研究課題番号 |
23H02372 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
稲葉 睦 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (00183179)
|
研究分担者 |
森下 啓太郎 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (30637046)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
|
キーワード | 赤血球 / 赤芽球造血 / 貧血 / コレステロール / 細胞内輸送 / コレステロール結合タンパク質 / コレステロール結合蛋白質 |
研究開始時の研究の概要 |
TSPO2は後期赤芽球に特異的に発現するコレステロール結合膜蛋白質である。TSPO2は細胞外から取り込んだコレステロールの細胞内動態を制御し、後期赤芽球の正常な増殖と成熟を支える。しかし、その分子機序は不明である。本研究では、TSPO2が細胞内のどこで、どのような分子機作で、小器官や細胞膜の間のコレステロール輸送を担い、コレステロール分布をどのように制御するのかをTSPO2遺伝子のノックアウトマウス/改変マウスの赤芽球や培養赤芽球細胞等を用いて解析し、TSPO2介在性コレステロール輸送の仕組みと意義を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
TSPO2の細胞内分布・コレステロール分布との関係を主にマウスES細胞由来赤芽球系培養細胞(MEDEP)の正常(WT)細胞、Tspo2-/-細胞、ならびにTspo2-/-細胞にTSPO2-HAを導入した細胞(Tspo2-/-HA)を用いて調べた。 1)Tspo2-/-細胞は遊離コレステロールをを小胞体ERでエステル型(CEs)に変換し脂肪滴(LD)に貯蔵する割合が低く、多くは細胞外に失われること、TSPO2-HAの発現でこの異常は解消すること、高コレステロールマウス血清(主にHDL由来のCEsが高濃度)はWTと同程度のCEs蓄積を生じることを明らかにした。 2)MEDEP細胞にTSPO2-HAを導入・発現させると、Golgin、LAMP2、NPC1等との共在からゴルジ装置、リソソームに分布することが示された。同時にcalnexinやRab5, 7, 11等core Rabsとの近接から、各種エンドソーム、小胞体の近傍に位置することも示された。さらにclathrinやcatalaseとも近接した分布が観察された。Tspo2遺伝子をTspo2-HAに変換したMEDEP細胞でも同様の結果が得られた。TSPO2が主にゴルジやリソソームに分布し、小胞体をゴールとして、各種輸送小胞やペルオキシソーム、小胞体との間のコレステロール輸送に関与することが推定された。 3)MEDEP細胞や骨髄由来赤芽球では、TSPO2と細胞内コレステロール両者の分布の相互関連を明確に示すことは困難であった(解像度の不足、ならびに細胞質が狭く明確な分布をしめすことの困難による)。そこでTSPO2-EGFPを導入したHEK293細胞で同様の解析を実施し、それが細胞内遊離コレステロールの分布とほぼ一致することが判明したが、どの小器官が関わるかまでは見同定である。一方でCEsとは異なる分布が明らかであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.本年度の課題1の目的はTSPO2の赤芽球系細胞内分布、ならびに細胞内コレステロール分布との関係を明らかにすることである。細胞内分布については、ゴルジ装置、ライソゾームを含む複数の小器官に存在することは間違いなく、また細胞内輸送小胞への分布の可能性が示された。これはTSPO2が特定の限定された小器官ではなく複数の小器官膜に分布して、それらの間での物質転送に寄与する仮説に適合する。さらに、赤芽球系細胞での検証は困難であったが、TSPO2と細胞内コレステロールの分布にも相関が認められたことは、コレステロールがその小器官間転送の基質になり得ることを示唆している。これらからの本年度の目標への基本的な答を得ることはできた。 2.課題2は上記のような膜間転送の実証と機作の解明に向けた準備である。こちらは次年度以降に継続する課題であり、小器官膜の調製法の確立やTSPO2変異体の作製などを若干の遅れがあるものの開始している。 以上の状況から進捗状況として(2)概ね順調と判定した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度計画の実施過程で、赤芽球系細胞/赤芽球系培養細胞の細胞内局在解析の困難さに直面した。予想されたことではあるが、コレステロールやTSPO2の分布は細胞内小器官マーカーを頼りに概要は推定できるが、細胞自体の小ささ、細胞質領域の狭さなどから厳密な結論は困難なのも確かである。そこで次年度以降では、HEK等の非赤芽球系培養細胞も活用し、概要を従来得たMEDEPや骨髄赤芽球での知見と比較しながら計画を進める。小器官膜の調製もこうした培養細胞にTSPO2等を発現させたうえで実施することが効果的と考える。 一方で、従来、マウス由来の赤芽球や培養細胞を用いている。今年度半ばから共同研究者として骨髄赤芽球細胞解析/貧血病態解析に詳しい森下啓太郎准教授が加わったので、臨床現場での臨床検体の活用/貧血病態に関連づけた解析を同時に進め、TSPO2機能・役割の普遍性検証につなげて計画全体の活性化に努める。
|