研究課題/領域番号 |
23K27148
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補助金の研究課題番号 |
23H02455 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
柴田 達夫 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (10359888)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | キラリティ / アクトミオシン / アクティブカイラル流体力学 / カイラリティ |
研究開始時の研究の概要 |
器官の形態や配置の左右非対称性(カイラリティ)は、それらの機能を保つ上で必須である。組織や細胞のカイラリティは、分子のカイラリティから導かれる。しかし、分子のカイラリティがどのように細胞や組織のカイラリティを導くのかの組織化原理は未解明である。本研究ではカイラリティを示す上皮系培養細胞を用いて、分子の配向から細胞のカイラリティがどのように現れ、また細胞のカイラリティから多細胞組織のカイラリティが現れるメカニズムを、高解像イメージングによって解明する。それに基づいた理論を構築することにより、分子から細胞、そして多細胞組織の階層へと、スケールを横断してカイラリティが現れる組織化原理を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、アクトミオシンなどのカイラルな分子の配向が組織化されて細胞質のカイラルな回転流が創発する原理の解明を目指している。本研究で扱う上皮培養細胞における細胞質のカイラルな回転運動には、アクチンとミオシン2の関与がわかっている。共焦点顕微鏡によるタイムラプスイメージングでは、アピカル側の膜に沿って同心円状に分布するアクトミオシンが、核の周りを回転していることを見いだしている。私達はこのアクトミオシンの同心円構造こそが、回転運動の駆動している、細胞スケールのカイラルな性質を持った高次の秩序であると考えている。そこで、この高次の秩序を構成しているアクトミオシンの詳細な空間分布や配向を、高いz分解能を持つ高精度3D時系列計測 Lattice light-sheet microscopy(LLSM)を用いて明らかにするとともに、その動態を定量的に解析した。その結果、この同心円の構造において、回転運動の速度が最大値を示しており、これが回転運動を駆動していることを明らかにした。そして、一見すると非対称性を示さない同心円の構造がいかにしてカイラルな性質を持ちうるのかを解明するために、アクティブカイラル流体力学を応用した理論モデルを開発した。アクチンとミオシン2は相互の滑り運動の際に、アクチンの軸周りの回転運動を引き起こす。これによってアクトミオシンの分子複合体はカイラルなトルク力を生みだす。これを原動力とする理論を構築し、同心円に分布したアクトミオシンから細胞質のカイラルな回転流を生みだすメカニズムを明らかにした。この結果は、細胞カイラリティの形成原理を解明した重要な成果である。この成果はプレプリントとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で扱う上皮培養細胞における細胞質のカイラルな回転運動には、アクチンとミオシン2の関与が明らかになった。共焦点顕微鏡によるタイムラプスイメージングでは、アピカル側の膜に沿って同心円状に分布するアクトミオシンが、核の周りを回転していることを見いだしている。このアクトミオシンの同心円構造こそが、回転運動の駆動している、細胞スケールのカイラルな性質を持った高次の秩序であると考えられる。そこで、高いz分解能を持つ高精度3D時系列計測 Lattice light-sheet microscopy(LLSM)によって、アクトミオシンの詳細な空間分布や配向を明らかにし、その動態をライブイメージング解析した。さらにPIV解析を行うことで、細胞のどこに駆動力があるかを明らかにしている。
一見すると非対称性を示さない同心円の構造がいかにしてカイラルな性質を持ちうるのかを解明するために、アクティブカイラル流体力学を応用した理論モデルを開発した。アクチンとミオシン2は相互の滑り運動の際に、アクチンの軸周りの回転運動を引き起こす。これによってアクトミオシンの分子複合体はカイラルなトルク力を生みだす。これを原動力とする理論を構築し、それを有限要素法によって数値計算するためのプログラムを実装した。その結果、同心円に分布したアクトミオシンから細胞質のカイラルな回転流を生みだすメカニズムを明らかになった。
この上皮由来の培養細胞は多細胞コロニーを形成して、カイラルな集団回転運動を示す。このメカニズムを解明するために、各種の阻害剤を用いて集団回転運動が阻害される因子を同定した。現在までのところ、1細胞回転に関与している因子、および、1細胞回転には関与していない因子が同定されている。それらの因子がどのように協調的に働いて多細胞の集団回転運動を引き起こす仕組みの一端が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で扱う上皮培養細胞における細胞質のカイラルな回転運動のメカニズムを明らかにするために、よく回転する細胞と、十分に回転しない細胞における遺伝子発現の違いを明らかにし、どの因子が回転運動に寄与をしているのかを明らかにする。次に、同定された因子の強制発現やノックダウンによって、回転運動が増強されたり逓減することを確認する。これによって、細胞カイラリティ発現のメカニズムを明らかにする。
この上皮由来の培養細胞は多細胞コロニーを形成して、カイラルな集団回転運動を示す。このメカニズムを解明するために、各種の阻害剤を用いて集団回転運動に変化が現れる因子を探す。そして、葉状仮足や接着斑など、左右差を導しめす可能性のある細胞の性質を探す。さらに、実験結果に基づいて、集団回転運動の理論モデルの構築に取り組む。
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