研究課題/領域番号 |
23K27153
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補助金の研究課題番号 |
23H02460 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀 哲也 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (70550078)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | セントロメア / ゲノム / 染色体 / クロマチン |
研究開始時の研究の概要 |
生命活動に必須なゲノム情報の継承に重要な、セントロメアの位置の制御に関与する分子ネットワークの理解を目的とする。特に、セントロメアの位置決定に重要なヒストンタンパク質CENP-Aの導入に必須な動原体因子および翻訳後修飾を同定し、その機能と意義を調べる。これら結果をもとに、CENP-A導入過程の人為的操作に挑戦し、セントロメアの位置の安定性への影響を検証することで、セントロメア機能を継承する分子実体を理解する。
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研究実績の概要 |
1)ニワトリ細胞を用いた解析から、CENP-CがCENP-Aのクロマチンへの導入過程に関与することが新たに示唆された。これまでCENP-Aのシャペロンタンパク質HJURPがセントロメアに局在するKNL2複合体と結合し、CENP-Aをセントロメアに導入する仕組みを報告していた。2023年度において、CENP-CもHJURPと複合体を形成することが共免疫沈降実験で明らかとなった。さらに、遺伝学的な解析から、CENP-Cを染色体上へ異所局在化させたときに生じるCENP-Aのクロマチンへの導入は、KNL2複合体に依存せずに生じることが明らかになった。これら解析から、KNL2複合体に依存した仕組みに加えてCENP-Cを介したCENP-Aの導入の仕組みが、セントロメア上でも機能している可能性を示した。 2)薬剤による同調法を適用し、CENP-Aが導入されるG1期の細胞集団を回収し、定量的ChIP-seq解析により各種セントロメア関連因子の欠損変異細胞におけるHJURPタンパク質のセントロメアへの局在量の変化を調べた。具体的には、KNL2複合体に含まれる2種の因子、KNL2、Mis18-alphaおよびCENP-A導入への関与が示唆されたCENP-Cを対象として、オーキシンホルモン誘導によるタンパク質分解系による欠損変異細胞を樹立した。これら解析から、セントロメアへのHJURPの局在は、KNL2複合体とCENP-Cの双方に依存していることを示唆する結果が得られた。 3)CENP-Aの導入を制御する仕組みの解明を目指し、KNL2を対象に、機能ドメインおよび相互作用因子の探索を行った。KNL2の複数のドメイン欠損変異体を発現する細胞株を樹立し、これらドメイン欠損タンパク質をベイトとした共免疫沈降実験を行い、高感度質量分析により共沈降タンパク質の同定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CENP-Aのクロマチン導入過程に関わる制御因子とメカニズムの解明に向けて、2023年度は、研究計画 (1) CENP-A導入過程に関与するCCANタンパク質と機能ドメインの同定、(2) CENP-Aの導入を制御する翻訳後修飾に関与する因子と責任酵素の同定、について主に研究を進めた。以下、進捗状況を記す。 1)LacO-LacIによる異所局在系を使用した遺伝学的な解析から、これまで知られていなかったCENP-Cタンパク質のCENP-A導入過程への関与の可能性が示唆された。これまでの定説は、CENP-Aの導入過程はKNL2複合体が関与する仕組みのみで説明されていたが、本研究から新しい視点による解釈の必要性が指摘された。現時点では、見出した活性が実際にセントロメア上で機能しているか不明であり、より詳細な解析が必要である。また、薬剤による同調法を適用した定量的ChIP-seq解析により、CENP-A導入活性の指標となるHJURPの局在について定量的な解析を行った。この解析方法と遺伝学的手法を組み合わせ、CENP-Aの導入に必要な因子およびそれらの機能ドメインが関与する過程について、より定量的に評価することが可能となった。 2)既に対象となるKNL2複合体の構成因子KNL2の変異体解析から、幾つかの機能ドメインを同定し、それらドメインの欠損変異タンパク質と相互作用する因子を高感度質量分析により同定した。また、(1)で明らかにしたCENP-Cにも着目し、示唆されたHJURPとの相互作用の仕組みの理解への予備的な実験も進めている。これらの因子や相互作用は、計画(2)に挙げたCENP-A導入の制御に関わる翻訳後修飾の対象の候補として有力であり、その仕組みの解明に向けて重要な知見といえる。 以上から、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1) 2023年度の研究により、CENP-A導入過程に関与することが明らかになったCCANタンパク質について着目し、アルファフォールド構造予測を参考にドメイン欠損変異株を作成し、細胞遺伝学的および細胞生化学的な解析により機能領域の同定を行う。具体的には、変異細胞株におけるCENP-Aの導入効率を調べるとともに、CENP-Aの導入に必須なHJURPのセントロメアへの局在量を、定量的ChIP-seq法により解析する。HJURPが局在を示すG1期の細胞の取得は、これまでの研究で確立した薬剤を用いた同調方法(NR法)を適用して行う。 2) CENP-A導入過程に関与する既知のMis18複合体やHJURPタンパク質に加えて、2023年度の研究によりその関与が示唆されたCCANタンパク質を対象として、NR法によりG1期の細胞集団を取得し、共免疫沈降実験により対象タンパク質を濃縮精製し、高感度質量分析により修飾状態の変化を解析する。高感度質量分析では同時に、修飾の導入あるいは除去を行う責任酵素についても検索を進める。同定したG1期に特有な修飾パターンを示すアミノ酸残基については、非修飾型・疑似修飾型アミノ酸変異を導入した変異細胞を樹立し、責任酵素については条件的欠損変異細胞を樹立し、SNAPアッセイによるCENP-A導入効率やタイミングの変化を解析する。さらに、HJURPタンパク質の局在量についても(1)と同様に定量的ChIP-seq法により解析する。これら解析により、CENP-A導入を制御する修飾について、責任酵素および標的アミノ酸残基を同定する。
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