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疾患由来幹細胞における細胞運命破綻の機序解明を目指した1細胞分化系譜の比較解析

研究課題

研究課題/領域番号 23K27159
補助金の研究課題番号 23H02466 (2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2023)
応募区分一般
審査区分 小区分43060:システムゲノム科学関連
研究機関東京大学

研究代表者

中戸 隆一郎  東京大学, 定量生命科学研究所, 准教授 (60583044)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
キーワードシングルセル解析 / バイオインフォマティクス / 細胞分化 / 細胞運命制御 / 細胞運命解析 / コヒーシン / 疾患解析
研究開始時の研究の概要

コヒーシン複合体はゲノム立体構造形成および転写制御に重要な役割を担っており、その機能欠失は先天性奇形症候群であるコルネリア・デ・ランゲ症候群 (CdLS)の要因となることが知られているが、詳細な発症機序は未だ不明である。本申請では疾患モデル幹細胞を用いた細胞分化系とシングルセル解析を組み合わせた「細胞分化系譜解析」によって、CdLSの表現型が最も強く現れる分化ステージ及び関連する因子群を同定することを目指す。この目的を達成するため、細胞分化軌道を疾患モデル幹細胞と健常細胞の間で定量的に比較し、疾患細胞における細胞運命制御の破綻点を直接的に同定可能な情報解析技術を確立する。

研究実績の概要

(1) Rad21, NIPBL、BRD4, MED12について、CRISPERi を用いたiPS細胞のノックダウン系を確立した。SMC1Aについても同じくノックダウン系を作製したが、ノックダウン効率が十分でなかったため、ノックダウンに用いる転写開始点の見直しを進めている。
(2) 1細胞解析のための最新ツール群をまとめたDockerパイプラインShortCakeを構築した。本イメージを活用し、最新の細胞系譜解析法であるCellRank, Dynamo, CellOracleなどのツール群を用いた細胞系譜解析ワークフローを確立した。
(3) GiWi法を用いた分化実験では、約15日間でiPS細胞から心筋細胞 (Cardiomyocyte) へ分化が完了する。ここで、心筋前駆細胞(day8)を用いたシングルセルデータを生成し、解析を実施した。その結果、得られたデータの可視化において軌道様のクラスタがほとんど観測されず、ひとまとまりに固まった細胞群が観測された。このことは、iPS細胞の細胞分化の低速性により、単一時点における細胞分化状態の細胞間ばらつきがほとんどなく、むしろ単一の細胞群(ここでは心筋前駆細胞)を観測しているのに近い結果が得られていることを示している。
(4) コヒーシンに関連するタンパク質群をノックダウンした多数のサンプル群を生成し、大規模マルチオミクス解析を実施した。そのような大規模比較解析を実現するため、新規の解析手法CustardPyを開発した。本手法を用いた解析により、遺伝子発現に特に重要なゲノムの立体構造、そこで重要になる因子、エピゲノム状態との相関などを明らかにした。本成果を論文として発表した [Nakato et al., Nature Communications, 2023]。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1) iPS細胞のノックダウン系について、順調に因子数を増やし、各々80%~90%以上の高いノックダウン効率を達成している。細胞分化効率が依然課題であるが、iPS実験の専門家の先生方に分化実験についてアドバイスいただきながら、分化効率を改善に向けて全力を挙げている。
(2) CellRankなどの手法を用いた細胞運命推定手法の適用可能性について検討を進めているが、複数の遷移を同時に含む場合など得られた軌道が複雑である場合に細胞運命推定がうまく機能しないことが報告されており[Bergen et al., Molecular Systems Biology 2021]、そのような複雑な軌道に対しても頑健に軌道推定するための方法を検討した。その結果、scVelo, UniTVelo, cellDancerなど異なるモデルを用いる複数のツールを用いることで、より頑健に細胞運命を推定可能であることを確認した。
(3) iPS細胞の分化系を用いたscRNA-seqデータ生成と解析のパイロット実験を達成した。
(4) 当初計画していたシングルセルデータを用いた分化軌道をより明確に観測するため、ヒト・マウスよりも発生速度の速い生物種を用いることを検討した。その結果、東京大学の中村遼平博士に協力いただき、メダカの発生系を用いた細胞運命解析を行うことで合意した。

今後の研究の推進方策

(1) iPS細胞の分化実験について、上述した観測結果から考えると、シングルセル解析を用いたとしても得られる情報量はバルクRNA-seqと大きく変わらない懸念がある。そのため今年度は、より安価なバルクRNA-seqを用いて多数の時点でサンプルを取得し、時系列解析を展開することを検討する。ここで、バルクRNA-seqを入力に、サンプルに内包される細胞組成を推定するBulk deconvolutionを用いることを検討する。
(2) メダカを用いたシングルセル解析について、コヒーシン関連因子を対象としたノックダウン系を構築し(モルフォリノを用いる)、シングルセルデータを生成する。今年度中に複数のノックダウン系を用いたシングルセルデータを取得する予定である。
(3) CellRank, Dynamoなどは、正常・疾患モデル細胞からそれぞれ得られた複数のシングルセルデータをまず統合した後解析する。これに対し、各サンプルを統合せずに分化軌道をアラインメントし比較するTrajectory alignmentが提案されている(cellAlignなど)。今年度はそのような軌道比較手法についても検討を進める。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Context-dependent perturbations in chromatin folding and the transcriptome by cohesin and related factors2023

    • 著者名/発表者名
      Nakato Ryuichiro、Sakata Toyonori、Wang Jiankang、Nagai Luis Augusto Eijy、Nagaoka Yuya、Oba Gina Miku、Bando Masashige、Shirahige Katsuhiko
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 号: 1 ページ: 5647-5647

    • DOI

      10.1038/s41467-023-41316-4

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Large-scale multi-omics analysis to explore the function of cohesin complex2023

    • 著者名/発表者名
      Ryuichiro Nakato
    • 学会等名
      NTU-UTokyo Joint Conference 2023
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Large-scale computational genomics: tools for decoding genomic features2023

    • 著者名/発表者名
      Ryuichiro Nakato
    • 学会等名
      Human Genetics Asia 2023
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Large-scale multi-omics analysis to dissect the context-specific role of cohesin in chromatin folding and gene expression2023

    • 著者名/発表者名
      Ryuichiro Nakato
    • 学会等名
      CEEHRC 9th Annual Canadian Conference on Epigenetics
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-18   更新日: 2024-12-25  

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