研究課題/領域番号 |
23K27174
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補助金の研究課題番号 |
23H02481 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩崎 秀雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00324393)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 概日リズム / シアノバクテリア / kai遺伝子 / 概日時計 / 時間生物学 / KaiC / KaiA / サーカディアン / 生物時計 / LabA / Synechococcus |
研究開始時の研究の概要 |
シアノバクテリアは体内時計の優れた実験系であり、特に生化学振動子の試験管内再構成系は突出して新たな地平を切り拓いてきた。しかし、 試験管内再構成系とin vivoの細胞内の生理学的機能との対応関係の間には、まだ多くの未解明のギャップがある。全ゲノムに及ぶ概日発現ネ ットワークと生化学振動子との関わりや、日周環境下での増殖に関わる時刻依存的な増殖制御などはその代表的なものである。本研究計画は、 これらを総合的に解析することで、生化学振動子による環境適応制御の実相をより強力に解明することを意図している。
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研究実績の概要 |
概日時計を持つ最も単純なモデル生物,シアノバクテリアの振動発生の基本は,三つの時計蛋白質KaiA, KaiB, KaiC間の生化学的相互作用にあり,Kai蛋白質をATPと混合するだけで,KaiCの自己リン酸化振動を試験管内で再構成できる。この生化学振動子は,二成分制御系因子SasA-RpaAを介して,全ゲノムにわたる転写リズムを駆動する。この標的には時計遺伝子自身も含まれ,生化学振動子自体の量も周期的に変化する。つまり,転写翻訳フィードバックループ(TTFL)は二次的な振動ループを構成する。しかし,試験管内と細胞内のギャップはまだ大きく,生化学振動子が細胞内でどのように機能しているか、さらにそれがどのように細胞生長に関わる生態学的な日周環境適応機構と関連しているのか未知の部分が多い。本研究では時計遺伝子の発現振動を含む概日転写ネットワークのうち、重要なミッシングリンクと考えられている、A.転写翻訳フィードバックの重要な制御因子とされながら明らかになっていない因子LabAの作用機序、B.高振幅で概日発現するシグマ因子群の概日転写ネットワークにおける意義、C.日周変動下における概日時計を介した生長制御の分子機構、を明らかにすることにより、タンパク質振動子から概日転写ネットワークを介して個体の日周適応までを統一的に理解することを目指している。2023年度は初年度のため、以下の【現在までの進捗状況】に記したとおり、研究計画A, Bに加え、時計遺伝子kaiAの解析を中心に行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画A: labAの機能解析については、labA欠損株の表現型が、エピトープタグ付きのLabAをコードする遺伝子によって相補できることを確認した。また、同様にエピトープタグを持つLabAを薬剤で誘導できる株を作製した。それぞれからRNAを抽出し、RNAseqとDNAマイクロアレイの解析を進めている。いっぽう、in vitroの解析のため、labAを大腸菌内で誘導発現させる形質転換体を複数種類得たが、いずれも大腸菌内で十分な蓄積が見られなかった。これが何を意味するのか自明ではないが、大腸菌ではなく無細胞翻訳系を用いたLabAの精製を試みる。 研究計画B:3種類の高振幅シグマ因子遺伝子をオペロン化し、trcプロモーターの下流で構成的に恒常発現する株を作製した(内在性のシグマ因子遺伝子はすべて欠損させた三重欠損背景を宿主として用いた)。しかし、詳細を検討すると、mRNAは想定通り発言していたものの、特にRpoD6タンパク質の蓄積量が野生型の平均発現量よりかなり低いことが明らかになった。このことから、抜本的にデザインを変更し、タンパク質レベルで野生株の平均発現量が担保される株を新たに構築中である。 また、kaiA遺伝子欠損株で最近報告した減衰振動に関して、リボスイッチを用いて非常に低レベルでkaiAを誘導できる系を開発し、kaiA発現量に依存した概日リズムの周期長・振幅の変化を定量的に解析し、興味深い結果を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
labAについては、2010年の報告依頼、ほぼ新たな報告がなかったが、ごく最近、米国のCarl Johnson教授のグループがlabA欠損株のトランスクリプトーム解析やRpaAリン酸化との関りに関して重要な報告を行っている(Yao et al. PNAS, 2024)。この中には、私たちの本研究申請書の予備データと同じ結果も含まれている。一方、本研究計画の骨子であるLabA蛋白質自体の機能解析は含まれていないため、特にLabAの組換え蛋白質を用いた標的分子の探索や、当該論文に含まれていない過剰発現株を持ちいた解析などを早く進めていく必要があると考えている。 シグマ因子の解析についても、上述のように新たなデザインに基づく解析を行っていく。また、当初は解析対象としていなかった第4のシグマ因子RpoD2についても併せて解析していくことにした。 研究計画Cの酸化還元との関りについては2023年度はあまり進められなかったため、予備実験から進めていく。 KaiAタンパク質とリズムの安定性・周期長に関してはかなりデータが溜まってきているので、2024年度中の論文作成を目指す。
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