研究課題/領域番号 |
23K27226
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補助金の研究課題番号 |
23H02535 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
稲垣 祐司 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (50387958)
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研究分担者 |
矢吹 彬憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋生物環境影響研究センター), グループリーダー (20711104)
天笠 俊之 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70314531)
中山 卓郎 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (70583508)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2026年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 共生 / メタゲノム / 真核微生物 / 原核生物 / ゲノム縮退 |
研究開始時の研究の概要 |
メタバーコーディング/メタゲノム解析は、今のところ培養ができない/困難な原核生物が多数自然環境中に棲息し、その一部は他種生物と共生関係をもつことを示唆する。本研究では、真核生物ゲノムデータに混入した原核生物ゲノムデータを探索し、これまで方法論上の問題で見過ごされてきた真核生物に共生する原核生物(原核共生体)を体系的に検出することを目指す。さらに、メタゲノムや各種真核生物ゲノムデータから効率的に原核共生体のゲノム配列を抽出するプログラムを作成する。最終的に、共生性未培養原核生物の多様性の実態に迫るため、作成した機械学習プログラムを用いて各種メタゲノムデータ中に原核共生体ゲノムを探索する。
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研究実績の概要 |
本研究の端緒となった真核微生物アンキロモナス類 Fabomonas sp. SRT902ゲノムシーケンス中のダダバクテリアゲノムについてアノテーションを行った。ゲノムサイズに関しては、これまでに報告されているダダバクテリアのメタゲノムデータとFabomonas sp. SRT902ゲノムシーケンス中のダダバクテリアのゲノムに明らかな違いはなかった。また細菌類間で保存されている120種類のタンパク質配列にもとづく系統解析では、我々が解読したゲノムをふくむダダバクテリアがデルタプロテオバクテリアの一系統であることが強く示唆された。 Fabomonas sp. SRT902ゲノムシーケンスに混入しているダダバクテリアゲノム配列は、Fabomonas細胞内に共生しているかどうかを検証するため、透過型電子顕微鏡観察を行った。今のところFabomonas細胞内に共生細菌と考えられる構造は確認できなかった。 我々はすでに、未記載真核微生物であるSRT706株、SRT308株のゲノムデータを取得している。これらのデータ内に細菌ゲノム断片を探索したが、今のところ共生細菌のゲノム断片候補となる配列は確認できていない。新たに渦鞭毛藻Citharistes regiusの一細胞を海水から単離し、ゲノムデータを取得した。C. regiusはシアノバクテリアと共生していることは分かったいたが、ゲノムデータ中に1種類のシアノバクテリアのゲノムのほか、2種類のガンマプロテオバクテリアのゲノム、さらには1種類の古細菌ゲノムを発見した。いずれの原核生物ゲノムも環状ゲノムを完全に解読することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fabomonas sp. SRT902ゲノムシーケンス中のダダバクテリアゲノムについてアノテーションが進み、そこにコードされている細菌類に保存されたタンパク質配列をもちいた系統解析で、これまで提唱されていたダダバクテリアがデルタプロテオバクテリアの一群であるという結果を補強することができた。ただし、研究対象のダダバクテリアがFabomonas細胞内に共生しているかどうかは、電子顕微鏡観察では確認できなかった。この結果は我々の予想とは反しているため、ダダバクテリアとFabomonasとの関係を再考し顕微鏡観察を行う必要がある。 これまで解析した真核微生物2種の未発表ゲノムデータには、共生細菌に明らかに由来すると考えられるゲノム断片は確認できていない。しかし、渦鞭毛藻C. regiusのゲノムデータ中に予想されたシアノバクテリア以外に、ガンマプロテオバクテリア、古細菌のゲノムが混在していることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
Fabomonas sp. SRT902ゲノムシーケンス中のダダバクテリアゲノムについて解析を進め、代謝機能等の推測を行う。今のところFabomonas細胞内に共生細菌と思しき構造が観察できていない。そこで透過型電子顕微鏡観察を続けるが、ダダバクテリアがFabomonas細胞内の共生しているのではなく細胞外に付着している可能性も考え顕微鏡観察を行ってゆく。ダダバクテリアがFabomonas細胞と共生しているのか、共生しているのならどのような形式なのか(細胞内か細胞外か等)を明らかにする。最終的に、これまでに解析が終わっている細菌類間で保存された120種類のタンパク質配列を用いた系統解析結果と合わせ英文論文を作成してゆく。 渦鞭毛藻Citharistes regiusのゲノムデータに混入している原核生物ゲノム配列の詳細な解析を進める。シアノバクテリア共生体の環状ゲノムは完全に解読が終わりアノテーションも終了している。そこで他の渦鞭毛藻共生性シアノバクテリアのゲノム、系統的に近縁な自由生活性シアノバクテリアのゲノムと比較を行う。特にC. regius共生性シアノバクテリアのゲノムにコードされるタンパク質レパートリーが、自由生活性近縁種のゲノムと比べてどの程度縮退しているのか、タンパク質の各種機能カテゴリーのうちどのカテゴリーで縮退が進んでいるかに着目して比較解析を行う。同様に2種類のガンマプロテオバクテリアと古細菌のゲノムについて、最も近縁な自由生活性種が何なのか、その自由生活性種と比べゲノムが縮退しているかどうかを検討する。 今後我々の研究グループで取得する真核微生物のゲノムデータ、公共配列データベースにデポジットされている真核微生物のゲノムデータについて、共生細菌ゲノム断片を探索してゆく。
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