研究課題/領域番号 |
23K27253
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補助金の研究課題番号 |
23H02562 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45050:自然人類学関連
小区分45060:応用人類学関連
合同審査対象区分:小区分45050:自然人類学関連、小区分45060:応用人類学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中務 真人 京都大学, 理学研究科, 教授 (00227828)
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研究分担者 |
鍔本 武久 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20522139)
森田 航 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (20737358)
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
日下 宗一郎 東海大学, 人文学部, 准教授 (70721330)
國松 豊 龍谷大学, 経営学部, 教授 (80243111)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 中新世 / 化石霊長類 / ヒト上科 / オナガザル上科 / ニッチ分割 / ロコモ-ション / 咀嚼 / 古環境 |
研究開始時の研究の概要 |
ケニアのナカリ層は、最古のヒト亜科ナカリピテクスに加え数種を超える同時代の霊長類が知られる希有な例である。この時代に起きた霊長類の系統交代の様相を明らかにするため、この霊長類群集における適応の多様性を評価する。ナカリ層の発掘を行う他、発掘されている化石霊長類の系統的位置付け、化石資料の機能形態分析に基づく初期オナガザル科の運動適応、エナメル質化石の同位体分析による食性推定を行う。また、それら化石霊長類に共伴する哺乳類動物相からの古環境推定、ユーラシアとの関連についての分析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は人類とアフリカ類人猿の分岐が始まる直前期、アフリカ霊長類がいかなる多様性をもっていたかをナカリ層(約1000万年前)の化石霊長類相から解明し、その種間関係を分析することを目的とする。 9月にケニア国立博物館で未同定・未記載の哺乳類化石の分析を進めた。主な分析対象は、知られている最古のオナガザル科マイクロコロブスの標本である。未発表であったマイクロコロブスの全身骨格、マイクロコロブスの下顎骨新標本の記載と分析、マイクロコロブスの肘関節の機能形態学的分析で、これらは3本の論文として、現在投稿中である。主要な発見には、ナカリで発見されたマイクロコロブス属を、複数の下顎骨標本に基づき、同属のタイプ種であるトゥゲネンシスとして同定したことがある。また、マイクロコロブスには現生コロブス亜科に特徴的な跳躍運動適応が見られず、樹上での上下方向の移動を含む四足歩行運動に適応的な特徴が見られ、四肢骨に認められる幾つかの機能的特徴ではオナガザル亜科に類似していることを明らかにした。 発掘調査では8月から9月に、NA39地点において2週間の発掘を行った。 2018年に発掘を始めたレンズ状堆積物の発掘を継続し、トレンチを約16平米まで拡張した。その結果、オナガザル科を含む哺乳類化石の産出がみられた。2018年度の発掘区画では、ほとんど化石が含まれていなかったが、分布密度が高くなる傾向が認められたことから、翌年以降も発掘を継続することとした。 歯冠形態による食性適応多様性の評価としては、ポアチエ大学の研究者と協力して、マイクロコロブスの大臼歯の特徴を評価した。その結果、葉食に適応した現生コロブス亜科とは明瞭に区別されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナカリで最も豊富に産出している霊長類であるマイクロコロブスに関する3報の論文を投稿した。これまで、マイクロコロブスの研究は模式標本であるただ一つの下顎骨と、2012年に代表者等が報告した部分骨格についてしか存在していなかったが、本研究によって飛躍的に情報が豊かになった。 また、NA39地点の発掘調査では、対象としたレンズ状堆積物から初めて霊長類化石が得られた他、化石の分布密度も高まっており、更なる発掘の成果が期待されるところである。 歯冠形態の三次元的解析については、まず現生種既存データの活用によって化石標本を記載した。今後、現生種の種類と個体数を増やすとともに化石標本を追加し、より精度の高い分析が行えると考える。 安定同位体分析がやや遅れているものの、予備調査の準備は進んでおり、計画終了年までに結果が得られると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、発掘調査は2024年度でいったん終了し、得られた資料の分析と調査の取りまとめに力点を移す。発掘は2024年の8月から9月に約3週間行う予定である。 既に得られている資料については、マイクロコロブス研究がかなり進展しているため、マイクロコロブス以外のオナガザル科の同定を進める。また、安定同位体分析による霊長類の食性分析とその多様性評価に力を入れる。化石歯エナメル質の安定同位体分析による霊長類と他の哺乳類の食性と利用環境を炭素と酸素の安定同位体比に基づいて評価する他、亜鉛、マグネシウム安定同位体も分析に含め、探索的方法も用いて霊長類種間の食性の多様性を調査する。まず利用許可取得が容易な破片化石で続成作用の評価など予備的分析を進め、破壊分析対象とする標本の選定を行う。マイクロコロブス骨格の分析として残されている、ほぼ完全な頭蓋骨の復元を進める。土圧により圧迫変形した頭蓋骨を仮想的に原形復元し、咀嚼に関する機能解析と頭蓋腔サイズの推定を行う。 研究の成果がまとまりつつあるため、積極的に学会発表を行っていく。
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