研究課題/領域番号 |
23K27263
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補助金の研究課題番号 |
23H02572 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
根東 覚 東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 特任准教授 (20301757)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
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キーワード | マウス / 視覚 / 形の知覚 / 情報処理回路 / 階層性 / 2光子イメージング / 方位選択性 / 形 / 視覚情報処理 / 一次視覚野 / 高次視覚野 / 情報処理 / 神経回路 / 2光子イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
網膜で受容された視覚情報は、視床を経て一次視覚野に送られます。形の情報は一旦線の情報に分解され一次視覚野で受容野の位置と線の傾きや長さの情報として抽出され、形の情報へと再構築されると考えられています。一次視覚野の階層性では2/3層は上位に位置し、他の領野への出力層として機能しています。また一次視覚野2/3層の情報が高次視覚野4層へ送られ形の情報の再構築が階層的に行われていると考えられています。ニューロンの視覚応答の大規模解析とシナプス入力の大規模解析を複合的に行うことで、階層的情報処理回路の構造と情報処理の仕組みを明らかにします。
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研究実績の概要 |
大脳皮質神経回路の作動原理の理解には、神経回路の構造に関する研究と情報表現に関する研究とを結ぶ必要があると考えられます。私はこの研究に視覚情報処理をモデルとして取り組み、特に「形」の知覚に重要な「傾きを持つ線」(方位選択性)の神経情報処理に焦点を当てた研究に取り組んでいます。これまで一次視覚野において、ニューロンの視覚応答の大規模解析から方位選択性ニューロンにミニコラム状の機能構築があること(Kondo, Yoshida and Ohki, Nature Communications, 2016)や、シナプス入力信号の大規模解析から1個のニューロンに「方位選択性」が表現される仕組み(Kondo, Kikuta and Ohki, under revision)を明らかにしてきました。 本研究では「方位選択性」に関する研究をさらに進め、個別のニューロンに表現される「方位選択性」情報が、次に「形」の情報に統合され、そして知覚に至る神経回路基盤を明らかにすることを目的としています。方位選択性はある1つの傾きの線に選択的に反応する性質ですが、例えば四角形は2つの傾きの線から構成されます。線の情報が統合され形の情報へと移行する過程では、2つの傾きの線に選択的反応をするニューロンが現れる可能性を仮定しました。実験はマウスを用いて行いました。まずこのような性質を持つニューロンを探索し、その結果2つの方位に選択的に反応するニューロンを発見しました。次にこのような反応をするニューロンからシナプス入力解析を行い、どのようにしてこのような反応が生じるのか、そのメカニズムの解明を行いました。これらの研究を全期間内(3年間)に視覚野全体で行う予定ですが、2023年度は一次視覚野で行いました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではこれまで行ってきた「方位選択性」に関する研究をさらに進め、個別のニューロンに表現される「方位選択性」情報が、次に「形」の情報として統合され、そして知覚に至る神経回路基盤を明らかにすることを目的としています。方位選択性はある1つの傾きの線に選択的に反応する性質ですが、例えば四角形は2つの傾きの線から構成されます。線の情報が統合され形の情報へと移行する過程で、2つの傾きの線に選択的反応をするニューロンが現れる可能性を考え、このような性質を持つニューロンの探索を行いました。探索には一次視覚野全体にカルシウムセンサーであるGCaMP6sが発現する遺伝子改変マウス(Thy1-GCaMP6s, GP4.3)を用いました。マウスの前にモニターを置き、種々の傾きを持つ動く縞模様を提示し、先の研究(Kondo, Yoshida and Ohki, 2016)で開発した高速3次元イメージングによりニューロン活動の大規模計測を行いました。計測は一次視覚野の2/3層上部・下部および4層に分けて行い(各区分においてそれぞれ約3,000個のニューロンから記録)、細胞体の視覚応答と空間位置情報を計測しました。その結果、異なる2つの方位に選択的反応をするニューロンを見出しました。このニューロンの割合と空間分布を調べた結果、4層にはほとんど存在せず(0.2%)、2/3層に存在することが分かりました(上部:3.1%; 下部:1.7%)。 次にこのような反応をするニューロンからシナプス入力解析を行いました。約300個のスパインから細胞体の場合と同様の視覚刺激を提示し個別のスパインの視覚応答と空間位置情報を計測しました。その結果、細胞体が表現する2つの方位と一致するシナプス入力を別々に受け取っていることを見出しました。つまり細胞体が表現する反応はシナプス入力統合の結果であると考えられました。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究では一次視覚野に焦点を絞り行いました。マカクザルを用いた先行研究では、二次視覚野のニューロンが2本の直線からなる特定の角度に選択的に反応することが明らかにされています(Hegde and Van Essen, 2000; Ito and Komatsu, 2004)。また、2本の直線からなる特定の角度に反応するニューロンの反応は、個々の成分の組み合わせに依存することが計算モデルによって示唆されています(Ito and Goda, 2010)。しかし、マウス視覚野にそのようなニューロンが存在するのか、複雑な形状の情報処理は一次視覚野(V1)から始まるのか、より高次の視覚野から始まるのか、その根底にある神経計算機構は何なのかは不明でした。今回の結果は形の知覚の情報統合がマウスでは一次視覚野の2/3層から始まっている可能性を示唆しています。また2つの方位への選択的な応答は、2つの異なる方位の情報が統合された結果であることを示唆しています。一次視覚野の階層性では2/3層は上位に位置し、高次視覚野への出力層として機能しています。2024年度以降の研究では探索範囲を高次視覚野に拡げ、一次視覚野と同様の実験を行い、形の知覚に関する情報処理回路の解明を進める予定です。
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