研究課題/領域番号 |
23K27267
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補助金の研究課題番号 |
23H02576 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河原 行郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80542563)
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研究分担者 |
加藤 有己 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10511280)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | RNA編集 / 脳・神経 / エカルディ・グティエール症候群 / 自然免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちの体には、ウイルスなどに由来する非自己のRNAと自己のRNAを識別する機構が備わっている。自己2本鎖RNAの場合、RNA編集によってイノシン化修飾されており、これが識別点になっている。このため、RNA編集酵素ADAR1の活性低下は、自己2本鎖RNAに対する自然免疫の異常活性化を招き、脳症を主症状とする先天性免疫異常疾患の原因となる。しかし、なぜ脳症が主症状となるのか、発症に不可欠な2本鎖RNAは全く不明であるため、本提案研究で解明する。
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研究実績の概要 |
AGS様脳症の形成に不可欠な細胞を特定するため、Adar1 (W197A)マウスやAdar1 (K948N)マウスなどの脳症モデルマウスと、Adar1 flox/Tau-Cre TgマウスやAdar1 flox/Gfap-Cre Tgマウスの交配を開始した。すでに、Adar1 flox/Tau-Cre Tgマウスとの交配マウスは誕生し、生後の体重減少や脳のISG上昇などを認めている。ただし、Adar1 (W197A)マウスで観察したような脳症病理所見とは異なっており、今後も、病理学的解析や免疫学的解析により評価する。また、AGS様脳症の形成に関与する分子経路を特定するため、脳症モデルマウスと、IFN受容体サブユニット (Ifnar1) KOマウス、PKR KOマウス、ZBP1 KOマウスなどを交配し、すでに交配マウスは誕生している。Ifnar1 KOマウスと交配すると脳症が改善し、PKR KOマウスやZBP1 KOマウスと交配しても改善しないことなどが判明した。また、脳内のISG発現も、Ifnar1 KOマウスではほぼ正常化したが、PKR KOマウスやZBP1 KOマウスでは正常化しないことも判明した。今後も、これらの交配マウスの詳細な解析を継続する。更に、AGS様脳症発症の鍵を握るRNA編集部位を特定するため、ADAR1 p110, ADAR1 p150, ADAR2それぞれ一種類のみを発現するマウスの樹立に成功した。現在、これらマウスからRNAを抽出し、RNA-seq解析中である。今後、これらの大規模データを使ってRNA編集部位を同定し、そこからADAR1 p150が好む2本鎖RNAの構造、配列要素、イノシンが挿入されやすい位置などを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、交配予定のマウスは順調に誕生しており、様々な表現型や遺伝子発現の異常が検出できているため。
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今後の研究の推進方策 |
AGS様脳症の形成に不可欠な細胞を特定する点については、今後もAdar1 (W197A)マウスやAdar1 (K948N)マウスなどの脳症モデルマウスと、Adar1 flox/Tau-Cre TgマウスやAdar1 flox/Gfap-Cre Tgマウスの交配を進め、適切な時期に脳萎縮、脳内石灰化、アストロサイトの活性化状態、IFNの産生量などを評価する。AGS様脳症の形成に関与する分子経路を特定する点については、今後も脳症モデルマウスと、IFN受容体サブユニット (Ifnar1) KOマウス、PKR KOマウス、ZBP1 KOマウスなどの交配マウスについて詳細な解析を継続する。IFN自体の病態への関与やMDA5の下流シグナルとして翻訳を抑制するPKR経路と細胞死を促進するZBP1経路が知られているが、これらがそれぞれ脳症病態の形成にどのように関与しているのか明らかにする。AGS様脳症発症の鍵を握るRNA編集部位を特定する点については、ADAR1 p110, ADAR1 p150, ADAR2それぞれ一種類のみを発現するマウスのRNA-seqデータを解析し、RNA編集部位を網羅的に特定する。その上で、どういった2本鎖RNAがADAR1 p150の標的となるのか解析を進める。次に、ADAR1/ADAR2ダブルKO細胞株にMDA5を過剰発現させて、2本鎖RNAをMDA5が感知しやすい評価系をたち上げる。ここに、人工合成した未イノシン化修飾2本鎖RNAを導入し、ELISA法によるIFN産生量の測定からMDA5が活性化するかどうかを確かめる。これにより、ADAR1 p150が認識する特定の配列要素を持った2本鎖RNAだけがMDA5の標的となりうることを検証する。
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