研究課題/領域番号 |
23K27277
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補助金の研究課題番号 |
23H02586 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
新明 洋平 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00418831)
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研究分担者 |
河崎 洋志 金沢大学, 医学系, 教授 (50303904)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 複雑脳 / フェレット / アストロサイト / グリア細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
アストロサイトは脳内で最も多く存在する細胞であるが、古くから脳の隙間を埋める糊であり脳活動にはあまり積極的には関与していないと考えられてきた。しかし、近年のアストロサイトの解析技術の発展により、進化におけるアストロサイトの数の増加、形態および機能の変化が高次脳機能の発達に重要であったと考えられている。そこで本研究では、哺乳動物の進化におけるアストロサイトの変化の分子機構とその機能的意義の解明を目的とする。さらには、アストロサイトの制御による疾患モデルマウスの記憶・学習障害の改善を目指す。
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研究実績の概要 |
哺乳動物の進化の過程で大脳は肥大化し、その表面には明瞭なシワ(脳回)を獲得するなどその構造は複雑化してきた。細胞レベルでは神経細胞とグリア細胞の数が著しく増加し、さらにこれらの細胞は形態的かつ機能的にも発達した。これまで申請者らは、皺脳動物(脳回など発達した脳構造を持つ動物)であるフェレットを用いて進化における神経細胞の増加の分子機構や脳回におけるその重要性を明らかにしてきた。一方、皺脳動物でのアストロサイト研究の重要性は世界的に注目されているが、解析技術が確立されていなかったこともありその研究は遅れている。本研究では、申請者らが独自に開発してきたフェレットでの実験系を用いて、皺脳動物におけるアストロサイトの形態的および機能的な発達の分子機構とその機能的意義を解明する。さらに本研究で確立するアストロサイトの制御技術を活用して、記憶・学習障害の治療にアストロサイトの利用が有効であるかを検討する。本年度は、フェレットのアストロサイトの形態解析を行なった。その結果、フェレットのアストロサイトには、マウスにはなくヒトに見られる形態的多様性をが存在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していたアストロサイトの形態的解析を終了することができた。実際、マウスに比べてフェレットの白質アストロサイトのサイズが大きいこと、ヒト白質に見られるアストロサイトの形態的多様性がフェレットにも存在することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
1)皺脳動物のアストロサイトに特徴的な遺伝子発現の解析 申請者らは既に、フェレットとマウスの大脳由来のアストロサイトを用いて、RNA-Seq解析による網羅的な遺伝子発現の比較解析を行い、マウスに比べてフェレットで発現が高い遺伝子を複数見いだしている。今後、ヒトのアストロサイトのRNA-Seqデータと比較することにより(Kelley et al., Nat. Neurosci, 2018)、フェレットとヒトで共通して発現が高い遺伝子を絞り込む。さらに、定量的解析が可能であるRNAscope in situ hybridization (ISH)法を用いてフェレットとマウスの脳組織における発現パターンを調べることにより、フェレットのアストロサイトの成熟期に高い発現を示す遺伝子を絞り込む。
2)皺脳動物のアストロサイトを特徴づける分子機構の解析 1)で絞り込んだ候補遺伝子が、アストロサイトの形態と機能制御に重要であるかをin vitroとin vivoの両方の実験系で調べる。最初に、マウスとフェレットの初代培養アストロサイトにおいて、候補遺伝子の過剰発現およびCRISPR/Cas9によるノックアウトを行う。形態への影響をGFAP抗体を用いた免疫染色により解析し、候補遺伝子を絞り込む。次に、in vitro解析で形態制御に関わることが明らかになった遺伝子に関して、フェレット大脳でのin vivo解析を行う。フェレット大脳のアストロサイトにおいて候補遺伝子の過剰発現もしくは遺伝子ノックアウトを行い、形態への影響を調べる。また、カルシウムウェーブを解析することにより機能的特性への影響を調べる。これらの解析から同定された遺伝子の更なる解析を進め、進化におけるアストロサイトの形態的および機能的変化を生み出した分子機構を明らかにする。
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