研究課題/領域番号 |
23K27316
|
補助金の研究課題番号 |
23H02625 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
三枝 大輔 帝京大学, 薬学部, 准教授 (90545237)
|
研究分担者 |
可野 邦行 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (50636404)
松本 洋太郎 東北大学, 薬学研究科, 講師 (90420041)
青木 順 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 招へい教員 (90452424)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
|
キーワード | MSイメージング / S1P / MALDI / スフィンゴ脂質 / 細胞外小胞 / 質量分析計 |
研究開始時の研究の概要 |
初めに、スフィンゴ脂質を細胞オルガネラレベルで検出できる MSイメージング法を開発する。検出された脂質分子種は、レーザーマイクロダイセクションとLC-MS/MSなどにより評価する。次に、脂質ラフトあるいはエクソソーム分泌過程で分布蓄積するスフィンゴ脂質を可視化する。エクソソームに含まれる脂質の評価には、LC-MS/MSを用いる。最終的には、病変部位に対し、開発したMSイメージング法を用いた脂質変動解析から創薬標的を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
スフィンゴ脂質は、細胞膜形成あるいは脂質メディエーター機能により、生体の恒常性維持に必須の分子群であり、がんや免疫疾患発症に関連することが示唆されている。また、細胞膜に含まれる脂質ラフトや細胞外小胞のエクソソームの主要構成脂質でもあり、スフィンゴ脂質の代表分子であるスフィンゴシン一リン酸(S1P)を介したエクソソーム分泌機構が細胞間シグナル伝達に重要な役割を担うことが判っている。 しかしながら、スフィンゴ脂質変動を細胞膜脂質ラフトレベルで直接観察することは困難であり、機能解析の障壁となっていた。そこで本研究の目的は、スフィンゴ脂質を細胞オルガネラレベルで検出できるMSイメージング法を開発し、脂質ラフトあるいはエクソソーム分泌過程で分布蓄積するスフィンゴ脂質を可視化し、病変部位での変動を捉えることで創薬標的を明らかにすることである。 投影型MSイメージングによるオルガネラレベルでの可視化を実現するためには、各分析条件における高感度化が必須である。R5年度は、主に①投影型MSイメージング分析による細胞オルガネラ由来に含まれる分子の検出、②CyclicIMSによる糖セラミドの分離、③導電性粘着フィルムの高感度化、④Phostag誘導体化試薬の合成および⑤細胞外小胞に含まれるスフィンゴ脂質分析の最適化を実施した。今後開発した条件の再現性を評価し、全ての技術を組み合わせることにより、オルガネラレベルにおけるスフィンゴ脂質の可視化に挑戦する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度の進捗は以下の通りである。①投影型MSイメージング分析は、細胞および脳組織切片の分析に挑戦したが、装置に設置する金属プレート上での細胞培養ならびに切片の作成が障壁となった。そこで、細胞培養を専門とする新潟大学の研究者に協力を得ることで、分析試料を準備し、投影型MSイメージング分析を実施することができた。現在データ解析中であるが、細胞オルガネラに分布する数種の分子のイメージング画像を取得することができている。 ②CyclicIMSの糖セラミド異性体分離に挑戦したところ、イオンモードの工夫により、MS内部における分離に成功した。ゴーシェ病モデルマウスから得られた脳組織切片のMSイメージングに挑戦したところ、各種糖セラミドのイメージング画像を取得することができた(論文投稿準備中)。 ③オルガネラレベルの脂質を高感度に分析することが必要であるため、導電性粘着フィルムの改良を試み、リン脂質分子種について、ITOコートガラスと同等のレベルまで高感度化することができた。さらに、適切な切片の厚みや電圧条件についても最適化し、本成果を論文発表した。 ④新たに、ZnをMnに置き換えたPhostag誘導体化試薬を合成した。MALDI-MSによる分析を実施したところ、誘導体化されたS1P由来のスペクトルを確認することができた。一方、ZnのPhostagと比較してMnのPhostagはマトリックス結晶のサイズが大きいため、高空間分解能に向けて障壁となる可能性が考えられるため、精製過程を検証する必要がある。 ⑤細胞外小胞に含まれる脂質分子種を分析するためには、LC-MS/MS分析による評価を実施する際にも分析法の高感度化が必須である。我々は、リン脂質分子種のテーリングを改善することにより、微量の細胞外小胞から複数の脂質分子種を精密に分析することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに、オルガネラレベルのスフィンゴ脂質分析技術開発に向けた各種条件検討にて一定の成果が得られている。これらについては引き続き実施するが、R6年度は特に投影型MSイメージングによるスフィンゴ脂質の可視化に焦点を当てた研究を進める。 投影型MSイメージングによる細胞のイメージング画像を取得することができたが、目的とするスフィンゴ脂質のマススペクトル領域のピークは極めて少ないため、装置を目的のm/z領域を高感度に検出できるようチューニングする予定である。また、レーザーに用いるレンズ系統を更新したため、高感度分析できることが期待される。また、データ解析に時間を要するため、得られたスペクトルデータの解析の効率化を目指したデータ変換や可視化の方法を考案する。 R6年度の大きな課題となることは、Phostagに用いられるZnは、世界的な資源問題が生じ、極めて入手困難となった。従って、本研究の推進ならびに目標達成には新たな試薬が必要になる。R5年度は、Mnを基盤とした新たなPhostagの合成を試みた。試薬をMALDI分析したところ、Znと同等のピーク強度を得ることができたが、結晶の形状がZnと異なることが判明した。オルガネラレベルの分析を実施するためには、精製の工程を工夫する必要がある。以上の技術的な改良により、本研究の加速を図る。
|