研究課題/領域番号 |
23K27337
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補助金の研究課題番号 |
23H02646 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
楠原 洋之 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00302612)
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研究分担者 |
中村 和昭 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 薬剤治療研究部, 室長 (80392356)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 薬物動態 / in vitroモデル / ヒト由来初代培養細胞 / トランスポーター / 薬物代謝 / 薬物輸送 / 初代培養細胞 / ヒト予測 / ADME / ヒトモデル |
研究開始時の研究の概要 |
非臨床段階で実施する薬物動態特性や薬物相互作用リスク、安全性予測は、新薬の開発の成否を決定する極めて重要な課題である。ヒトにおける予測性を高めるため、ヒト由来試料を用いたin vitroモデルを開発することを目的とする。培養時の添加物や細胞培養デバイスを利用することで、薬物動態ならびに安全性に資することができる優れたモデルを開発することに取り組む。
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研究実績の概要 |
薬物動態に関連する重要な臓器由来の初代培養細胞を用いて、ヒトADMET予測を実現することに取り組んでいる。本年度では、肝細胞や腎上皮細胞、小腸細胞を利用して、培養方法に関する条件検討を実施した。初代培養肝細胞の接着性の不良の原因として、細胞表面に付着している細胞外マトリックス(ECM)が細胞表面の細胞接着分子を被覆することにより培養基材(コラーゲン)と肝細胞の接着を阻害している想定し、初代培養肝細胞に付着しているECMの同定を行うとともに、その除去により非接着性の初代培養肝細胞の接着性が向上することを見出した。当該肝細胞を利用して、薬物動態特性を評価することにも成功している。PXB社が発売するShizuku等による肝細胞の機能維持に関する知見も得た。腎上皮細胞に関しては、tight monolayerの形成が難しくなったものの、細胞のロット変更、ECMの変更等により形成を確認すること、YPACの作用を確認することができた。薬物輸送試験を実施した。小腸陰窩由来細胞に関して、ドナー情報からBCRPの遺伝子変異をホモで有しているロットを確認し、個体間変動を検討するため、複数のBCRP基質を検討し、多型による影響を評価することに成功している。胆汁酸輸送ASBTなど回腸特異的な機能を発現することも確認しており、領域特異的な機能を評価することにも適したモデルであると考えられる。しかし、電気抵抗値は低く、細胞間隙を介したリークも大きいことから、培養法の改良は必要である。オーファントランスポーターとして、SLC35F1の薬物輸送機構の解析を行った。当該トランスポーター基質は細胞内代謝等を受けることから、輸送を特徴づけるため、代謝酵素阻害剤の添加等による影響を評価したことに加え、N末端を欠損した変異体が再現性よく薬物輸送を誘導することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト由来試料として、肝細胞・腎細胞・小腸上皮細胞を対象として、肝細胞についてはECM除去前後での遺伝子発現にわずかに変化が見られたものの、その発現変化は、初代培養肝細胞のロット間差に比べ極めて小さいことを確認し、ヒト凍結肝細胞のADMET研究への利便性を高めることに成功している。プレータブルとするとことで、薬物代謝や肝細胞に対する薬物応答を評価することを容易に評価することを実現した。当該細胞を用いて、これまでADME上の課題に取り組む環境が整った。小腸上皮細胞に関しても、陰窩由来未分化細胞スフェロイドの培養方法を検討することで、ADME試験のための細胞確保のハードルを下げることに成功した。現在の分化方法によっても、小腸吸収上皮細胞の機能を再現することができ、薬物動態の個人間変動を検討する上で有用なプラットホームとなり得ることを実証している。その一方で、TEER等が低めであるなど、当該細胞を利用する上で、機能改善が必要であることを見出している。他の種の細胞でTEERを改善する薬物を見出しており、当該細胞の細胞機能が改善することを見込む。また、分化に伴う培地成分のバイオマーカーに関する知見も得ており、ヒト細胞における有用性を検証することを計画している。腎上皮細胞に関しては、細胞培養条件の見直しからスタートしたが、フィルター上の単層膜の形成を再現することに至っており、当初の計画を実施する準備が整った。オーファントランスポーターの機能について、再現性の高い結果を得られるところまで、実験条件を詰めることができた。ドメインの重要性に関する知見も得ており、順調に研究が伸展している。
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今後の研究の推進方策 |
薬物動態に関連する重要な臓器由来の初代培養細胞を用いて、ヒトADMET予測を展開する。2023年度の研究は順調に伸展しており、引き続き、ヒト由来細胞の利用を促進するための条件検討を進めるとともに、当該細胞を用いた研究を展開する。肝細胞からの効率的なECM除去条件の検討による接着性の向上と細胞特性の解析を進めている他、肝細胞が接着性を獲得することのメリットを活かして、薬物トランスポーター介在性薬物相互作用リスク評価、薬物曝露時における肝細胞における薬物代謝や活性の機能調節機構に関する知見を得る。これらは医薬品開発における課題の解決に向けた取組となる。小腸上皮細胞に関しては、吸収上皮細胞におけるTEERを改善するための培養方法(薬物の探索)を探索し、その機序に解明することにも取り組む。TEER以外のバイオマーカーの探索と、バイオマーカーとなることの合理性を解明する。腎RPTECに関しては、薬物輸送試験の結果に基づき、当該細胞を用いて評価できる薬物輸送を解明する。最近、腎近位尿細管上皮細胞をスフェロイド培養とすることで、トランスポーター機能を発現することが報告された。当該細胞はTEERが低く、細胞透過性試験には適していないことも報告されていることから、小腸上皮細胞と同様に単層膜の機能改善をはかることができるか検討を加える。オーファントランスポーターの機能解析に向けて、変異体を更に作成し、重要なドメインに関する情報を得ることで、生理的意義を解明することに取り組む。
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