研究課題/領域番号 |
23K27343
|
補助金の研究課題番号 |
23H02652 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉岡 靖雄 大阪大学, 微生物病研究所, 特任教授(常勤) (00392308)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
|
キーワード | ワクチン / アジュバント / 感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
粒子状物質であるアルミニウム塩(アラム)は、高い安全性から、第一選択されるアジュバントである。しかし、ワクチン抗原とアラムとの強い吸着がアジュバント活性に必須であり、適用困難なワクチン抗原も多数存在する。一方で他のアジュバントは、強い副反応からワクチンヘジタンシーを招きかねない状況にあり、アラムの汎用性拡大・有効性改善が必要不可欠となっている。そこで本研究では、申請者が独自に見出した、アラムに強力に吸着可能な「アラム吸着ペプチド」を用い、「安全・安心で、あらゆる抗原で強力にワクチン効果を発揮可能な、アラムを用いた新規ワクチンプラットフォーム」を確立する。
|
研究実績の概要 |
アルミニウム塩(アラム)は粒子状のアジュバントであり、有効性の高さは勿論のこと、高い安全性・保存性や安価であることから、世界中で最も利用されてきたアジュバントである。しかし、アラムへの吸着性が乏しいワクチン抗原では、アラムと抗原が体内で速やかに遊離してしまうため、デポット効果やB細胞刺激が得られず、免疫応答が乏しいことが知られている。そこで本申請研究では、先駆けて見出したアラム吸着ペプチドの汎用性・有用性を実証する。令和5年度は、インフルエンザウイルス由来HA、新型コロナウイルス由来S、肺炎球菌由来PspAなど、5種類以上の組換え蛋白質を用いて、アラム吸着ペプチドの有用性・汎用性を評価した。その結果、アラムへの吸着力が弱い組換え蛋白質について、アラム吸着ペプチドの付与でワクチン効果が増大すること、一方で、そもそもアラムへの吸着力が強い組換え蛋白質においては、アラム吸着ペプチドを付与しても効果が増大しないことを明らかとした。また特に、アラムとの吸着が弱い新型コロナウイルス由来RBDを用いた場合、アラム吸着ペプチドの有用性が顕著に示された。具体的には、野生型RBDワクチン群と比較して、アラム吸着ペプチドを融合したRBD-Xのワクチン群は有意に高いRBD特異的抗体を産生した。またシュードウイルスを用いて抗体の中和活性を評価したところ、抗体産生と相関して、RBD-Xワクチン群では、野生型RBDワクチン群と比較して、有意に高い中和抗体価を示した。さらにワクチン後、マウスに新型コロナウイルスを感染させたところ、野生型RBDワクチン群では体重が減少した一方で、RBD-Xワクチン群では体重減少が全く観察されず、SARS-CoV-2感染を強力に防御可能であることが判明した。また、アラム吸着ペプチドにより、抗原量を約30倍削減できることが明らかとなった。さらに、アラム吸着ペプチドの長さなどの最適化にも成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、当初の予定通り研究を実施した。特に、アラム吸着ペプチドのコンセプトを実証すると共に、予想以上に強力にワクチン効果を誘導し得ることを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
交付申請書にも記載したが、当初の予定通り、下記などを実施する。 「VLPへの適用」:これまで組換え蛋白質での検討は実施した一方で、ウイルス様粒子(VLP)での有用性は評価できていない。そこで、ノンエンベロープウイルスのVLPを用いて(特許申請の都合で詳細は記載しない)、アラム吸着ペプチドの有用性を評価する。 「体内動態評価」: MHCⅡでの抗原提示能をフローサイトメータで簡便に評価可能なEaペプチドをEGFPに融合したEa-EGFPを抗原に用い、アラム吸着ペプチドとの融合蛋白質の動態をマウスで評価する。具体的には、アラムと共にワクチンし、リンパ節・投与局所の抗原提示細胞への取り込みをフローサイトメータにより経日的に評価する。さらに、MHCⅡに提示されたEaペプチドを認識する抗体を用い抗原提示を経日的に評価する。 「混合アジュバントへの適用」:ウイルスに対するワクチンでは、抗原特異的なCD8陽性T細胞やTh1型CD4陽性T細胞が、ウイルス感染細胞を排除し、重症化予防に寄与することが知られている。アラムではこれらを誘導できないものの、申請者はこれまで、アラムとCpG核酸を併用する混合アジュバントにおいて、CpG核酸がアラムに強く吸着することで、これらT細胞応答を強力に誘導し得ることを見出している(iScience. 2021)。さらに、アラムへの吸着により、CpG核酸の全身分布が抑制され、CpG核酸の副反応も飛躍的に低下することを見出している。そこで、本混合アジュバントとの併用効果を検証する。 「mRNAワクチンへの展開」:現状のmRNAワクチンは脂質ナノ粒子を送達キャリアとして活用しているものの、体内から速やかに消失する。アラム吸着ペプチドを用いることで、脂質ナノ粒子とアラムの吸着力を向上できれば、新たなmRNAワクチンを開発可能になると考えられるため検証する。
|