研究課題/領域番号 |
23K27345
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補助金の研究課題番号 |
23H02654 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
城野 博史 熊本大学, 病院, 准教授 (40515483)
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研究分担者 |
刈谷 龍昇 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (40757663)
大槻 純男 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (60323036)
松井 啓隆 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (60379849)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | CYLD / 個別化医療 / 分子標的治療 / 分子診断 / 効果予測マーカー |
研究開始時の研究の概要 |
がん分子標的薬はドライバー遺伝子診断により有効症例の判別が可能となり、がん薬物治療は有効症例の判別が不可欠な時代となりつつある。一方、臨床実装されたがんゲノム医療では90%以上もの患者が治療対象外であり、診断により治療不応とされたがん患者に提供できる治療はない。本研究では、腫瘍抑制遺伝子 CYLD の発現消失(機能喪失)が、従来の診断では“適応外”とされた各種分子標的薬の感受性を劇的に向上させるという新事実を突破口に、治療不応と診断されたがん患者に対して、CYLD 発現を指標とした新たな治療選択提供の道を切り開く。
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研究実績の概要 |
CYLD依存的形質転換が導く分子標的薬感受性向上を基軸とした、治療不応癌患者への新たな分子標的薬治療の提供を目指し、期間内に以下の2つの研究項目に関する成果を得た。
【1】CYLD依存的形質転換に基づく各種分子標的薬の感受性向上メカニズムの解明:CYLD発現消失により各種分子標的薬の感受性獲得・向上が認められたがん種を対象に、Western blot等により各細胞シグナル分子のリン酸化やユビキチン化等の活性化状態を検討した結果、CYLD発現消失により活性化される細胞シグナルとして、ERKシグナル(非小細胞肺がん)、PARPシグナル(卵巣がん、トリプルネガティブ乳がん)等の過剰な活性化が、各種抗がん剤の感受性向上に関与している可能性を見出した。また、新たな候補分子標的薬の探索の観点から、リン酸化プロテオミクスによる活性化シグナルの網羅的解析を試みた結果、神経膠芽腫におけるWntシグナル等の新たな細胞内シグナルの同定に成功した。
【2】CYLD分子診断の効果予測マーカーとしての有用性の検証:CYLD分子診断の指標となる腫瘍組織におけるCYLD消失メカニズムとして、腫瘍組織における低酸素環境により惹起されるAktシグナルの活性化が一部関与している可能性を見出した。さらに、CYLD発現を低下させた各種がん細胞(乳がん、卵巣がん、口腔がん等)を移植した異種移植(CDX)モデルを用いた分子標的薬の感受性試験を実施した結果、in vivo動物実験においても、各種分子標的薬(ボルテゾミブ、オラパリブ、ゲフィチニブ等)の感受性が向上している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、CYLD依存的形質転換が導く分子標的薬感受性向上を基軸として、治療不応癌患者への新たな分子標的薬治療の提供を目指しているが、本年度の研究結果から、【1】CYLD発現低下による各種分子標的薬の感受性向上メカニズムについて、各種がん細胞内において分子標的薬の感受性向上に関与する薬効の標的となる細胞シグナルが複数同定されていること、【2】CYLD分子診断の効果予測マーカーとしての有用性について、異種移植(CDX)モデルを用いた分子標的薬の感受性試験の結果、動物モデルを用いた検討においても、各種分子標的薬(ボルテゾミブ、オラパリブ、ゲフィチニブ等)の感受性が向上している可能性が示されていること、などの成果が得られており、次年度以降計画しているCYLD依存的形質転換を基軸とした新たな分子標的薬治療の確立を遂行する上で十分な知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間全体の目標である、CYLD依存的形質転換を基軸とした新たな分子標的薬治療の確立を実現するため、昨年度から引き続き以下の項目を中心に研究を実施する。 【1】CYLD依存的形質転換により分子標的薬の感受性が向上するがん種を探索・拡大し、感受性の向上する分子標的薬の作用メカニズムを引き続き解明する。加えて、CYLD発現低下が確認されたがん種を対象にリン酸化プロテオミクス解析を実施し、細胞内シグナルの同定を基盤とした新たな候補分子標的薬の探索を継続して行う。 【2】CYLD分子診断の指標となるCYLD消失メカニズム解明を継続して実施し、CYLD発現を消失させた各種がん細胞を移植した異種移植(CDX)モデルを用いた各種分子標的薬の感受性試験の結果を基盤とし、患者由来腫瘍移植(PDX)モデルを用いた感受性予測実験の準備を進める。
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