研究課題/領域番号 |
23K27361
|
補助金の研究課題番号 |
23H02670 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
飯野 正光 日本大学, 医学部, 上席研究員 (50133939)
|
研究分担者 |
金丸 和典 日本大学, 医学部, 准教授 (10456105)
太向 勇 日本大学, 医学部, 助手 (20836556)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
|
キーワード | カルシウム / 膵β細胞 / 小胞体 / ミトコンドリア |
研究開始時の研究の概要 |
膵β細胞から分泌されるインスリンは、血糖値を低下させる唯一のホルモンとして糖代謝制御に必須であり、糖尿病の病態に深く関与している。本研究では、インスリン分泌はどのように調節され、病態でどのように変化するのかという根源的問いに新たな視点から答えたい。そのため、インスリン分泌が細胞内Ca2+濃度によって制御されていることを利用し、特に細胞内小器官の機能に着目しながら、Ca2+動態に関与する分子を同定する。さらにその分子機能を新たに開発した生体内Ca2+イメージング法を用いて、生体内で解析することにより、インスリン分泌調節機構とその病態における破綻を明らかにし、薬物による治療法開発の基盤を形成する。
|
研究実績の概要 |
膵β細胞内Ca2+動態はインスリン分泌のキーファクターであり、糖尿病の病態と密接に関係している。このCa2+動態については、細胞膜を介する細胞外からのCa2+流入機構について解析が進んでいるものの、Ca2+動態に深く関与する細胞内小器官である小胞体とミトコンドリアがどのような役割を果たすのか十分明らかにされていない。本研究では、独自に開発した新たな解析法を活用して、細胞内小器官の機能に留意しながら、膵β細胞のCa2+動態を明らかにし、それが病態と共にどのように変化するのかを細胞レベルと生体レベルで明らかにすることを目的としている。 高グルコース中で周期的Ca2+濃度上昇を繰り返しているβ細胞に対して、副交感神経活動を模倣するムスカリン受容体刺激が及ぼす影響について研究を進めた。パルス状ムスカリン受容体刺激を行った際に小胞体からのCa2+放出に先行するCa2+濃度上昇と、それに引き続く下降の特徴的な2相性応答(MTD)が観察される。上昇相には陽イオンチャネルを介した脱分極/Ca2+流入が関与すると考えられるので、その候補分子の一つを培養β細胞MIN6においてゲノム編集を用いてノックアウトしたところ、高グルコース中での周期的Ca2+濃度上昇が激しく乱れることが観察され重要な役割を持つことが明らかになった。一方、IP3加水分解酵素(IP3 5-ppase)をβ細胞特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスでは、ムスカリン受容体刺激に伴うIP3シグナルが抑制される。このマウスから作製した膵島標本を用いてMTDを解析したところ、MTD下降相がIP3シグナル抑制とともに抑制されるという興味深い現象が明らかになった。さらに、単一膵島標本において細胞内Ca2+動態の観測とインスリン分泌量の測定を同時行える実験系を立ち上げ、今後の解析に備えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度の交付申請書には、パルス状ムスカリン受容体刺激を行った際に小胞体からのCa2+放出に先行するCa2+濃度上昇と、それに引き続く下降の特徴的な2相性応答(MTD)について以下の2項目の研究実施計画を挙げた。 1)ムスカリン受容体刺激後、小胞体からのCa2+放出に先行して細胞質のCa2+濃度が上昇する。従ってCa2+流入経路があるはずであり、候補となる陽イオンチャネル膵β細胞でノックダウンすることにより、その関与を検証する。 2)IP3加水分解酵素(IP3 5-phosphatase)をβ細胞特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスでは、IP3シグナルが抑制されるので、低グルコース中でのムスカリン受容体刺激によるCa2+放出は抑制される。この際に、MTDも抑制されるか否かを検証し、IP3によるCa2+放出とMTDの関係を明らかにする。 1)についは、候補分子の一つを培養β細胞MIN6においてゲノム編集を用いてノックアウトしたところ、高グルコース中での周期的Ca2+濃度上昇が激しく乱れることが観察され重要な役割を持つことが明らかになった。2)に関しても以下の結果を得た。IP3加水分解酵素(IP3 5-ppase)をβ細胞特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスでは、ムスカリン受容体刺激に伴うIP3シグナルが抑制される。このマウスから作製した膵島標本を用いてMTDを解析したところ、MTD下降相がIP3シグナル抑制とともに抑制されるという興味深い現象が明らかになった。さらに、計画には記載していなかったが、単一膵島標本において細胞内Ca2+動態の観測とインスリン分泌の同時測定系を立ち上げ、今後の解析に備えることができた。以上の通り、計画は順調に進んでおり、一部は予想を上回って進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
MTDについては、どのような機構により下降相の抑制が生じるのか細胞膜のイオン機構に着目しながら研究を進める。また、パルス状のムスカリン受容体刺激に加えて、持続的ムスカリン受容体刺激によるβ細胞のCa2+シグナル機構への影響とそのメカニズムについて、ムスカリン受容体下流のシグナルに着目して研究を進める。さらに、細胞レベルで明らかになってきた副交感神経系の作用について、生体内β細胞のCa2+イメージング法を用いて、生体内での意義を明らかにしていく。加えて、老齢マウスや糖尿病モデルマウスを用い、病態においてCa2+シグナル機構にどのように変化するか、またそのメカニズムは何かを明らかにしたい。 このような研究成果を論文として取りまとめて発表を行う。
|