研究課題/領域番号 |
23K27370
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補助金の研究課題番号 |
23H02679 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村野 健作 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80535295)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 転写 / トランスポゾン / 生殖細胞 / 転写共役抑制 / 小分子RNA / SUMO / 転移因子 / 核構造 |
研究開始時の研究の概要 |
転移因子(トランスポゾン)の無秩序な転移・増殖は、宿主にとってゲノム恒常性維持の脅威となる。一方で、トランスポゾンはゲノム進化の原動力であり、宿主の遺伝子発現系に取り込まれ、プロモーターなど複雑な発生を可能にする遺伝子プログラムの構築に寄与してきた。本研究課題では「いかに宿主ゲノムが自己と非自己を区別し、トランスポゾンを飼い慣らしながら破綻をせずに進化してきたか?」を追求し、宿主と転移因子の共生関係の理解をめざす。
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研究実績の概要 |
ゲノムの膨大な領域を占める転移因子(トランスポゾン)は、細胞内においてゲノム上の位置を転移することのできる塩基配列であり、「動く遺伝子」と呼ばれている。その無秩序な転移・増殖は宿主にとってゲノム恒常性維持の脅威となる。ショウジョウバエの卵巣において、小分子RNA(piRNA)とその結合パートナーであるPiwiタンパク質の機能複合体は、レトロトランスポゾンのmRNAを認識し、転写と共役することによって周辺に凝集したヘテロクロマチンを形成し、転写を抑制している。一方で、Piwi-piRNA経路に関連する因子として同定されたPanx-Nxf2複合体の機能解析から、ヘテロクロマチン形成に非依存的なレトロトランスポゾンの抑制機構が存在することがわかってきたが、その詳細な分子機構は明らかとなっていない。 Panx-Nxf2複合体によるトランスポゾン抑制機構の詳細を解析するため、転写と共役させたドキシサイクリン誘導発現系と人工係留ルシフェラーゼレポーター(Luc)を組み合わせた実験系を確立した。ラムダファージ由来のboxB配列を含む新生鎖mRNA上に、ラムダN-Nxf2またはラムダN-Panxを係留するとLuc活性が抑制される。本実験系と質量分析法により、新生鎖mRNA上のPanxがSUMO(Small Ubiquitin-like MOdifier)修飾を受けることを見出した。SUMOの発現抑制によりレトロトランスポゾンmdg1が劇的に脱抑制されたことから(100倍以上)、SUMO修飾がトランスポゾン抑制の中心的な役割を担うことは間違いない。また、SUMO修飾E3酵素Su(var)2-10と、Panxとの相互作用が報告されているSov(Small ovary)が関与していることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Panx-Nxf2複合体によるトランスポゾン抑制機構の詳細を解析するため、転写と共役させたドキシサイクリン誘導発現系と人工係留レポーターを組み合わせた実験系を確立した。新生鎖RNA上にラムダN-Nxf2またはラムダN-Panxを係留するとルシフェラーゼ活性が抑制される。本実験系を用いて、新生mRNA上におけるNxf2-Panx複合体の相互作用因子を免疫沈降法と質量分析法により探索した。その結果、これまで報告されているp15やctpの他にSUMOタンパク質(10 kDa)が検出された。詳細な実験により、PanxはSUMO化され、トランスポゾン二段階転写反応抑制機構の初期段階において機能を発揮することがわかってきた。SUMOのノックダウンによりPiwi-piRNA経路が標的とするレトロトランスポゾンmdg1が劇的に脱抑制されたことから(100倍以上)、SUMO修飾がトランスポゾン抑制の中心的な役割を担うことは間違いない。SUMOタンパク質、SUMO修飾E3酵素Su(var)2-10、Panxとの相互作用が報告されているSov (Small ovary)の発現抑制を行なったところ、いずれもラムダN-Panxの係留によるレポーター遺伝子の抑制を解除した。Su(var)2-10によるSUMO修飾、およびマルチジンクフィンガータンパク質であるSovが、転写と共役する転写反応抑制メカニズムに関与していることがわかってきた。
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今後の研究の推進方策 |
Sovのドメイン欠損変異体を作製し、トランスポゾンの抑制に関与するドメインを同定する。Sovタンパク質のドキシサイクリン誘導発現系と人工係留レポーターを組み合わせた実験系の確立を目指す。SUMOやSu(var)2-10に対するsiRNAを用いて、Sovによる転写抑制におけるSUMO修飾関連因子の関与を検討する。免疫沈降法と質量分析を組み合わせ、Sovを新生RNA上へ係留した時、相互作用する因子の探索を行う。免疫沈降の際には、脱SUMO化酵素阻害剤であるN-エチルマレイミド(NEM)存在下で行い、SUMO修飾によって活性制御を受ける因子に焦点を絞る。
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