研究課題/領域番号 |
23K27378
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補助金の研究課題番号 |
23H02687 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 立命館大学 (2024) 京都大学 (2023) |
研究代表者 |
市村 敦彦 立命館大学, 薬学部, 准教授 (10609209)
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研究分担者 |
植田 洋平 京都大学, 医学研究科, 助教 (30848213)
伊藤 宣 公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構(臨床医学研究所 臨床医学研究開発部), クリニカルサイエンスリサーチグループ, 研究員 (70397537)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 細胞内Ca2+ / 軟骨内骨化 / 骨関連疾患 / 空間遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
軟骨細胞の増殖や機能的な成熟は、成長に伴って骨が伸びる際に必要なだけでなく、関節の摩擦を減らし円滑な稼働を可能としています。そのため、軟骨細胞の機能不全や損傷は骨に関連する重大な疾患を引き起こします。私達は細胞内シグナル分子であるカルシウムイオン濃度の軟骨細胞内における変化を1細胞レベルで観察出来る技術を開発しました。本研究では、独自の細胞内Ca2+イメージングと空間トランスクリプトーム解析を統合することによって、軟骨組織における細胞内カルシウムシグナルネットワークとその分子的基盤を詳細に明らかにします。一連の解析から、軟骨が関連する骨関連疾患治療に役立つ新たな知見の取得を目指します。
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研究実績の概要 |
本研究では、軟骨組織における時空間特異的な細胞内Ca2+シグナル制御と制御に関わると思われる分子を詳しく解明し、生理機能調節との関連を明らかにすることにより、軟骨が関連する疾患治療に役立つ新たな知見の取得を目指している。本年度は空間遺伝子発現解析を実施し、概ね研究計画時に沿って解析を進めた。 野生型マウス軟骨組織における遺伝子の空間的発現部位を調べるため、胎生17.5日齢のマウス大腿骨組織を用いて6 μmの病理染色用切片を作製し、H.E染色によって組織形態や細胞形態とその配置を調べた。次に、病理組織切片を用いて10x Genomics社 VISUMを用いた空間トランスクリプトーム解析を実施した。解析に必要なクオリティのRNAを保持したサンプルをスライド上に切片を維持するための条件設定にやや時間を要したが、解析可能な試料の安定的取得条件を設定できた。解析データを元に、Ca2+イメージングへと進めるための膜タンパク質発現について複数取得することができた。 空間遺伝子発現を踏まえて未同定のCa2+応答を明らかとするため、胎生17.5日齢のマウス大腿骨組織についてこれまで解析したことのない組織内の位置にある、形態的分類に必ずしもとらわれない軟骨細胞について、Ca2+イメージングを行った。自発的Ca2+変動など複数のパラメータについて定量的に比較した。空間遺伝子発現情報で得られた情報から、新たな細胞内Ca2+シグナル賦活可能なリガンド-膜タンパク質を複数同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究計画時に想定していた通りに進行しており、部分的には計画を上回る進捗を得られている。VISIUMによる胎生期マウス大腿骨試料の解析は、解析実務を担当した東京大学鈴木研究室にとっても初の試みだったため、安定して剥がれないようにスライド試料を提出できる条件を設定する段階でかなりの時間と労力を要した。しかし、最適化への継続的努力で条件設定に成功し、解析実施まで辿り着けたため、順調に推移したと判断した。また、解析結果に基づいたCa2+イメージングも一部実施できており、すでに複数のリガンド-膜タンパク質について軟骨細胞内Ca2+シグナルを活性化できる組み合わせを発見済みである。これらの理由から、総合的に計画通りに進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の優先事項は、まず軟骨細胞内Ca2+シグナルを賦活可能な薬理的手法についての評価を完遂し論文を公表することである。論文草稿はすでに完成が近づいており、データの追加が完了次第投稿することができる予定である。投稿後も査読内容に沿った修正や追加の必要性が生じると予想されるため、次年度はその対応にまずは注力することを最優先とする予定である。これと並行し、空間発現解析結果から得られたリガンド-膜タンパク質の組み合わせについて、さらに詳細に解析を進めていく。すでに、Ca2+透過性イオンチャネルについてもこれまで同定済みの分子メカニズムとは異なる候補分子を同定するに至っており、薬理学的解析と遺伝学的解析を組み合わせてその検証を進めていく。同時に軟骨形成に異常を来すことをすでに同定済みの遺伝子改変マウス由来の試料に対する空間遺伝子発現解析も進めることで、軟骨細胞内Ca2+シグナルネットワークを詳細に明らかにすることを目指す。また、VISIUMは有効な手段であるが、空間解像度が胎生期マウス軟骨組織に対して不足していることがわかったため、より目的に合致した手法による解析も模索していく予定である。
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