研究課題/領域番号 |
23K27387
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補助金の研究課題番号 |
23H02696 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
廣橋 良彦 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30516901)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 腫瘍微小環境 / 空間遺伝子発現解析 / 1細胞遺伝子発現解析 / T細胞受容体 / 腫瘍浸潤リンパ球 / 腫瘍抗原 / 1細胞解析 |
研究開始時の研究の概要 |
腫瘍微小環境解析は、がん免疫療法、irAEなどの病態を解明する上で重要な解析である。腫瘍微小環境解析において、組織学的解析、分子生物学的解析、免疫学的解析などがあるが、いずれの解析においても得られる情報に偏りがある。しかしながら、複数の解析結果を統合することは困難である。我々はT細胞受容体(TCR)遺伝子配列に着目し、TCR配列は特異な配列を示す事から、TCR配列をアンカーに複数の解析結果の統合を試みる。
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研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を使ったがん免疫療法は、おおむね10%-40%程度の奏効率を示す。細胞傷害性T細胞 (CTL) 浸潤が多い症例ではICIの有効性が高いとされている。しかしながら、腫瘍へのCTL浸潤は万能のバイオマーカーではなく、腫瘍に浸潤するCTL(腫瘍浸潤リンパ球:TIL)の特異性が問題となる。本研究では、組織学的なTIL浸潤形態と、TILの抗原特異性および免疫学的特性の融合を行う。さらに、組織上においてin situ hybridization 法などを用いて、特異的なTCR遺伝子配列が組織上でどの場所に存在するか解析する。TCR遺伝子配列に紐付けられた、抗原特異性、T細胞機能、組織学的情報を組織上に落とし込み、組織学と免疫学の統合を試みる。本研究において、悪性黒色腫症例で、腫瘍に浸潤するリンパ球 (TIL) 、および、致死性irAE肝炎を来した症例で肝臓に浸潤するリンパ球解析を行っている。合計30種類程度のTCRを選択し、TCR導入T細胞(TCR-T細胞)を作製し、抗原特異性を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、CTLが病態に関わると考えられる症例の解析を行っている。具体的に、ICI治療悪性黒色腫症例およびirAE肝炎症例である。ICI治療悪性黒色腫症例では、ICI奏功例および不応例のTILをsingle cell TCR 解析行うと同時にsingle cell RNA-seq 解析を行った。その結果、ICI奏功例および不応例いずれにおいても、疲弊T細胞が存在する事が明らかとなった。また、single cell TCR解析から得られたTCR配列をもとに、疲弊T細胞由来TCRを導入したTCR-T細胞を作製した。合計20種類のTCR-T細胞を作製している。これらのTCR-T細胞が悪性黒色腫を認識するか、フローサイトメーターにて検討した。その結果、ICI奏功例においても、ICI不応例においても、TILから分離したTCRは自己の悪性黒色腫細胞特異的であることが判明した。この結果から、例えICI不応例であっても、腫瘍局所には腫瘍特異的TIL浸潤がみられているということが判明した。ICI不応例は抗PD-1抗体で治療された症例である。すなわちこの結果は、同症例において、PD-1が免疫からの逃避に重要な働きを担っていなかった可能性を示唆する。また、致死性irAE肝炎症例において、肝臓浸潤リンパ球からTCR-T細胞を作製し、肝芽腫細胞株 HepG2細胞の反応性を検討した。その結果、irAE肝炎において肝臓に浸潤するリンパ球は、HepG2細胞反応性TCRを有する事が判明した。この結果は、irAE肝炎の原因となった病的T細胞は、なんらかの抗原を認識していた可能性を示唆する。
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今後の研究の推進方策 |
上記、悪性黒色腫症例において、腫瘍特異的反応を示したT細胞および、irAE肝炎症例において、肝芽腫特異的反応を示したT細胞が認識する抗原は、おのおのの病態を理解する上で重要な情報となる。今年度において、これらのT細胞が認識する抗原を、TCR-T細胞を用いてスクリーニングする。具体的には、悪性黒色腫症例では、悪性黒色腫細胞からcDNAライブラリを作製する。また、irAE肝炎症例では肝芽腫細胞株 HepG2からcDNAライブラリを作製する。これら作製したcDNAライブラリを用いて、TCR-T細胞が認識する抗原スクリーニングを行う。また、TCR配列をもとに、in situ hybridization プローブを作製し、アッセイを行う。TCRの抗原特異性情報、TCRを有する細胞のT細胞フェノタイプ、TCRの組織上での配置の3情報を統合する。組織上において、T細胞機能を解釈する。
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