研究課題/領域番号 |
23K27389
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補助金の研究課題番号 |
23H02698 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
谷田部 恭 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (90280809)
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研究分担者 |
岸川 さつき 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (10906598)
加島 淳平 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 短期レジデント (80893883)
小林 祥久 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30734628)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2025年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 肺腺癌 / 浸潤性粘液腺癌 / KRAS / KRAS変異 / 喫煙者肺腺癌 / アイソフォーム / 発現解析 / 前駆病変 |
研究開始時の研究の概要 |
浸潤性粘液腺癌は形態学的に気管支関連上皮との関連が指摘されてきたが、発生部位は末梢肺実質でTTF-1も陰性を示し、特徴的な腺癌といえる。これまでの解析から浸潤性粘液腺癌では発現KRASアイソフォームが異なることを見出した。その結果をさらに発展させ、肺腺癌としては通常型腺癌とは異なり、腸への分化を示す特徴的な腺癌の病態形成を明らかにすることで、肺腺癌の全体の特徴を明らかとしたい。そのため、以下の3つの観点から検討を行う。 1. KRAS変異アリルと遺伝子増幅・アイソフォームの解析 2. 浸潤性粘液腺癌における前駆病変・進展過程の解明 3. 異型腺腫様過形成でのKRASアイソフォームの違い
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研究実績の概要 |
KRAS陽性肺腫瘍は、KRAS-AAH、非喫煙者末梢型KRAS肺癌、喫煙関連KRAS腺癌、浸潤性粘液腺癌などに大別することができる。また、KRAS変異は生物学的にcellular senescenceとoncogenicの逆説的な役割を有することが知られており、臓器・細胞の特性やKRAS変異バリアント、KRAS変異isoformsの発現割合などによってその生物学的役割が異なることが報告されている。そこで本研究では、肺癌におけるKRAS変異の生物学的意義について検討を試みる。KRAS変異を有する肺腺癌179例を全エクソーム解析、トランスクリプトーム解析を行い、その分子生物学的、臨床病理学的に違いがあるか検討した。その結果、 14例の非喫煙者末梢型KRAS肺癌、95例の喫煙関連KRAS腺癌、49例の浸潤性粘液腺癌、3例の喫煙関連KRAS扁平上皮癌、その他の18例に大別することができた。unsupervised hierarchical clusteringで喫煙者KRAS肺癌と浸潤性粘液腺癌では異なるクラスターを形成するほか、KRAS変異バリアントの分布も異なり、KRASアイソフォームの発現量に違いが見られた。これら解析の中で浸潤性粘液性腺癌の一部では、突然未分化癌に転化し、明瞭な結節を形成する現象が少数ながらも見いだされ、その生物学的意義について解析し、同一クローンによる腫瘍の脱分化現象であることを報告した。さらに、肺組織のマスター制御因子であるTTF-1変異は浸潤性粘液性腺癌で特異的に見いだされ、その空間トランスクリプトームを行っている。また、解剖学的特徴とそれに関連する発生機序から見た非小細胞肺癌全体の中での浸潤性粘液腺癌の位置づけや特殊性を分子生物学的にレビューし、国際病理学会の英国機関誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KRAS変異を有する肺腺癌179例を全エクソーム解析、トランスクリプトーム解析を行い、そのunsupervised hierarchical clusteringで喫煙者KRAS肺癌と浸潤性粘液腺癌では異なるクラスターを形成することが明らかになった。現在では公開されているTCGAデータを合わせて、アイソフォームの発現パターンの解析によっても検証されていることを確認している。これら結果をまとめ、雑誌投稿中である。また、浸潤性粘液腺癌におけるTTF-1の変異についてはframeshift insertion/deletion, structural variation deletion, nonsense mutationsが多くの症例で検出されており、その発現低下を裏付ける結果が得られている。これら解析の中で浸潤性粘液性腺癌の一部では、突然未分化癌に転化し、明瞭な結節を形成する現象が少数ながらも見いだされ、そのクローン性も含めてそのメカニズムや生物学的意義について解析た結果については、「粘液結節を伴う浸潤性粘液腺癌」として英文誌に発表した。さらに、解剖学的特徴とそれに関連する発生機序から見た非小細胞肺癌全体の中での浸潤性粘液腺癌の位置づけや特殊性を分子生物学的にレビューし、国際病理学会の英国機関誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは浸潤性粘液腺癌にKRAS変異が多いことに着目し、に検討を行ってきた。その結果、その特徴を示すことができたが、その結果に加えてもう一つの特徴である浸潤性粘液腺癌におけるTTF-1の変異について検討を進めていきたい。通常型腺癌においてはTTF-1が遺伝子増幅を示し、高悪性度や転移能と相関することをすることをこれまでの解析で示してきた。しかしながら、浸潤性粘液腺癌では機能喪失変異を来すという点で特徴的であり、両者の違いを示すことで浸潤性粘液腺癌の特徴を追求していきたい。具体的には、通常型腺癌から浸潤性粘液腺癌への移行を示す腺癌を取り上げ、その変異の腫瘍内における分布や発現パターンの変化について空間トランスクリプトームを用いて検討を進めていきたい。
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