研究課題/領域番号 |
23K27392
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補助金の研究課題番号 |
23H02701 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
河合 太郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (50456935)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 自然免疫 / 炎症 / サイトカイン / マクロファージ / シグナル伝達 / エピジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
TLRsやRLRsに代表される自然免疫受容体はウイルスや細菌の構成成分を認識し、炎症性サイトカインやI型インターフェロン、ケモカイン等の産生を誘導することで生体防御に貢献する。一方、その破綻は急性・慢性炎症を誘導し、様々な炎症性疾患や自己免疫疾患を引き起こすことが知られており、自然免疫受容体を介する応答は多段階に制御されている。本研究では、自然免疫受容体を起点とした炎症制御機構ならびにその破綻により生じる炎症性疾患発症機序について、研究代表者が新規に同定したZAIPのもつ炎症抑制機能ならびにノックアウトマウスを用いた炎症性疾患における役割を中心に、新たな炎症制御機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
我々は、CRISPR/Cas9システムを用いたノックアウトスクリーニングにより、炎症性サイトカインの一つIL-6の発現抑制に関わると考えられる新規因子としてZAIPを見出した。ZAIPは約130kDaのタンパク質であり、ZFドメイン以外に既知の機能ドメインとの相同性は示さず、その機能については不明である。ZAIP欠損マクロファージを樹立し、解析を行ったところ、野生型細胞と比較してLPS刺激に対し100倍以上ものIL-6発現が認められた。細胞内局在を調べたところ、LPS刺激に応じて核内に集積したことから、LPSによる炎症応答制御に関わる可能性が示唆された。さらに、ZAIP欠損細胞ではヒストンH3K4モノメチル化(H3K4me1)が亢進しており、ZAIPはヒストン修飾を介してLPS誘導性遺伝子の発現制御を行っていることが示唆された。また、ZAIPに結合タンパク質の同定を行ったところ、ヒストンメチル化酵素複合体であるCOMPASS複合体の構成因子を得た。したがって、ZAIPはエンハンサー領域のヒストン修飾制御を行うことでIL-6等の炎症関連遺伝子の発現制御を行う炎症抑制のマスター因子である可能性が考えられた。今年度、LysM-Creマウスを用いて、マクロファージ・好中球特異的にZAIPを欠損するコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを樹立し、解析を開始した。ZAIP cKOマウスでは野生型と比してLPS投与後のIL-6増加を認め、敗血症により早期に死亡した。また、コラーゲン誘導型の関節リウマチモデルを用いて解析した結果、ZAIP cKOでは顕著な関節の腫脹を認めた。これらのことから、生体内においてもZAIPが炎症抑制に働いていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロファージ特異的にZAIPを欠損するコンディショナルマウスの樹立に成功し、その表現型についての解析を開始した。その結果、ZAIP欠損マウスにおいて炎症の亢進を認める知見を得ることができた。また、ZAIP欠損細胞において発現が顕著に誘導される遺伝子についてもRNA-seqを用いて網羅的に解析を行い、ZAIPにより制御される遺伝子群をリスト化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ZAIPが制御するゲノム領域をChip-seqにより特定し、標的となる炎症関連遺伝子の特定を目指す。また、マクロファージ特異的にZAIPを欠損するマウスを用いて、敗血症、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎等の疾患に対する感受性の検討を行う。また、ZAIPをT細胞やB細胞で欠損するマウスの作成も行う。
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