研究課題/領域番号 |
23K27402
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補助金の研究課題番号 |
23H02711 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49040:寄生虫学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
稲岡 健ダニエル 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (10623803)
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研究分担者 |
松永 哲郎 東北大学, 医学系研究科, 講師 (00723206)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | イオウ代謝 / 寄生虫 / 環境適応 / ミトコンドリア / 住血吸虫 / 硫化水素代謝 / 感染現象 / 生化学 / 構造生物学 / 創薬 / 呼吸鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
感染症を理解し克服するためには、宿主内の特殊な環境における病原体の生存・増殖戦略、病原性発現機構、宿主の防御機構、媒介昆虫を含む環境因子などを包括的に理解することが重要である。多くの寄生虫の生息部位である腸管、腸間膜門脈系、また肝臓は有毒ガスである硫化水素(H2S)が高濃度に存在しており、H2S無毒化経路が機能していると考えられる。本研究は寄生虫におけるH2S無毒化経路の実態を解明し、この系の普遍性と多様性を明らかにし、将来的には他の寄生虫にも有効な創薬研究を展開するための生物学的・生化学的な基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究は寄生虫におけるH2S無毒化経路の実態を解明し、この系の普遍性と多様性を明らかにし、将来的には他の寄生虫にも有効な創薬研究を展開するための生物学的・生化学的な基盤を構築する。本研究は寄生虫の高濃度H2S環境適応機構を明らかにする事を最終目的としている。その第一段階としてH2S無毒化系路に関わると考えられるS. mansoniの酵素群に着目し、代表者等がそれぞれ得意とする分野の手法を駆使し、1)「全生活環ステージを用いた発現解析と細胞内局在」、2)「生化学的解析」、3)「構造生物学的解析」、4)「阻害剤を用いたケミカルバイオロジー」を行い、高濃度H2S環境適応機構を明らかにする。 SmSQOR, SmPDO, SmRhoda及びSmSUOXの抗体を作製し、タンパク質レベルで各生活環ステージにおける発現解析を行った。その結果、SmSQORの発現はセルカリア、成虫と寄生虫卵において発現が確認された。さらに、SmSUOXにおいては、セルカリアステージで発現が最も低く、成虫と寄生虫卵においては発現が確認できた。 生化学的解析においては、SmSQOR、SmSUOX、SmPDOおよびSmRhodaについては精製方法を確立し、そのうちSmSQORとSmSUOXの生化学的解析を終了した。SmPDOおよびSmRhodaに関しては、精製酵素を用いてヒトの酵素が用いる基質で活性測定を試みたが、活性は確認できなかった。 さらに、SmSQOR、SmSUOX、SmPDOおよびSmRhodaの大量精製法の検討を開始し、SmSUOX、SmPDOおよびSmRhodaにおいては1L培養から10 mg以上精製できる方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた1年目の計画とおおむね順調に進んでいる。
【1~2年目:酵素群の発現および細胞内局在解析】 SmSQOR, SmPDO, SmRhoda及びSmSUOXの各生活環ステージにおける発現をmRNAレベルで確認ができていないが、それぞれの抗体を作製してタンパク質レベルで解析を開始し、SmSQORとSmSUOXにおいては順調に進んでいる。さらにこの抗体を用いて虫体の切片を用いて免疫染色の最適化を開始している(稲岡)。 【1~3年目:生化学的解析】計画しているSmSQOR、SmPDO、SmRhoda及びSmSUOXの大量発現及び精製法を確立した。SmSQORのみ大量に精製は出来ていないが、1L培養から3-4 mgの精製酵素が得られている。精製したSmSQORおよびSmSUOXを用いて、基本的な酵素学的特性を明らかにした。 【1~3年目:構造生物学的解析】大量精製法を確立した酵素を順次用いて、結晶構造解析を行う。既に、SmSQORとSmSUOXの結晶化条件検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
【1~2年目:酵素群の発現および細胞内局在解析】 SmSQOR, SmPDO, SmRhoda及びSmSUOXの各生活環ステージにおける発現をトランスクリプトーム解析でmRNAレベルの確認を試みる。この結果と、それぞれの抗体を用いてタンパク質レベルで解析を行いmRNAおよびタンパク質レベル、さらに虫体を用いて各酵素の活性を測定し、総合的に解析を行う。さらに、それぞれの抗体を用いて虫体の切片を用いて免疫染色で、発現部位と局在を解析する。 【1~3年目:生化学的解析】SmSQOR以外のSmPDO、SmRhoda及びSmSUOXは大量発現及び精製法を確立してあるため、SmSQORの大量精製を引き続き検討する。精製したSmPDOおよびSmRhodaを用いて、活性測定法を確立し、基本的な酵素学的特性を明らかにする。 【1~3年目:構造生物学的解析】大量精製法を確立した酵素を順次用いて、結晶構造解析を行う。既に、SmSQORとSmSUOXの結晶化条件検討を開始し、今後はSmPDOおよびSmRhodaの結晶化条件検討を開始する。結晶が出来次第、SPring-8でX線回折データを測定し、結晶構造解析を行う。
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