研究課題/領域番号 |
23K27406
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補助金の研究課題番号 |
23H02715 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
土屋 晃介 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (50437216)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2026年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | パイロトーシス / パターン認識受容体 / 炎症性カスパーぜ / ガスダーミンD / 細菌PAMPs / カスパーぜ-12 / 炎症性カスパーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
パターン認識受容体(PRRs)は、細菌の認識することで宿主の細菌感染への応答を司る。炎症性カスパーゼは、細菌感染などで活性化してパイロトーシスと呼ばれる溶解性の細胞死を誘導する。本研究では、とある炎症性カスパーゼが新規PRRとして細菌の認識に働く可能性を検討する。その成果は、新しい細菌認識メカニズムの発見につながり、ヒト疾患の原因究明や新規感染症治療の開発にも役立つと期待できる。
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研究実績の概要 |
自然免疫は細菌感染と宿主の相互作用に大きな影響を与えるが、その全容は未解明である。我々は、細菌を認識する新しいパターン認識受容体(PRRs)の同定に向けて、炎症性カスパーゼに着目している。炎症性カスパーゼは、細菌分子を認識してパイロトーシスと呼ばれる溶解性の細胞死を誘導することで感染における宿主防御や病態形成に関与する。我々は、役割が未解明の炎症性カスパーゼの中であるカスパーゼ-12の機能解析を行なっている。今年度、特定の哺乳種に由来するカスパーゼ-12が他の炎症性カスパーゼと同様にガスダーミンD(GSDMD)を切断してパイロトーシスを誘導することがわかった。その活性は種によって大きく異なり、ヒトやチンパンジーなどの類人猿では極めて低く、マウスでは中程度、ネコやイヌのような食肉目で高いことがわかった。また、マウスでは活性部位の突然変異によって活性が低くなっていることがわかり、保存型への復帰変異を導入するとパイロトーシス誘導活性が高くなることがわかった。カスパーゼ-12のリコンビナント蛋白標品は、GSDMD蛋白を切断し、その切断部位は他の炎症性カスパーゼと同じであった。さらに、カスパーゼ-12を発現させた培養細胞を用いて、カスパーゼ-12の活性化機序を調べた。カスパーゼ-12は以前、小胞体ストレスで活性化されると報告されていた。しかしながら、小胞体ストレスやインフラマソームでカスパーゼ-12が活性化されることを示す結果は得られず、代わりに、細菌(リステリアおよび黄色ブドウ球菌)の感染やそれら細菌のライセートを細胞内に導入することで活性化する可能性が示された。これは、カスパーゼ-12が細菌を認識するPRRとして働くことを示唆する画期的な発見である。この研究に関して、学会発表や公演を行なっており、また、最初の論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、カスパーゼ-12がGSDMDを切断してパイロトーシスを誘導することを証明する実験結果を得ることができた。また、カスパーゼ-12が細菌分子によって活性化される可能性を強く示唆する実験結果も得られている。さらに、関連論文の投稿まで行なっており、本研究は順調に進展していると判断できる。計画していた実験のうち、ネコのマクロファージを用いた感染実験は、入手したマクロファージ株におけるカスパーゼ-12およびGSDMDの発現レベルが低かったため完遂できなかったが、マウスのマクロファージを使用した実験で必要な実験データを得られたため、研究計画全体には大きな影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はカスパーゼ-12が認識する細菌分子を同定する。まず、細菌リポペプチドやリポタイコ酸(LTA)、リポ多糖(LPS)といった既知の炎症誘導分子がカスパーゼ-12を活性化するか調べる。これらの細菌分子をカスパーゼ-12/GSDMD発現細胞と対照細胞にトランスフェクション試薬(リポフェクトアミン3000)を用いて細胞内に導入する。パイロトーシスの誘導はLDH放出で判定する。これらの分子がカスパーゼ-12のリガンドであった場合、リポペプチドを産生しないlgt欠損Staphylococcus aureus株、LTAを産生しないlgt欠損Staphylococcus aureus株、LPSを産生しない大腸菌株などを用いた確認実験を行う。マクロファージを用いた検討も行う。マウス/ネコのマクロファージ(不死化骨髄マクロファージ、FHS-1細胞、Fcwf-4細胞)に上記の分子を導入し、パイロトーシスが誘導されるか確認する。さらに、カスパーゼ-12およびGSDMDをCRISPR/Cas9法で欠損させてパイロトーシスへの関与を確認する。いずれの分子もカスパーゼ-12のリガンドでなかった場合、細菌ライセートを分画してカスパーゼ-12活性化分子を特定する。まず、カスパーゼ-12活性化分子が親水性または疎水性であるか調べる。Triton X-114の温度依存的な水層分離を利用して細菌ライセートを親水性および疎水性の画分を得る。カスパーゼ-12活性化分子がいずれの特性を持つか判明すれば、それぞれに適したカラムクロマトグラフィーでさらに分画してカスパーゼ-12活性化能を調べる。
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