研究課題
基盤研究(B)
真核生物が持つミトコンドリアは、酸素呼吸によるエネルギー産生の中核であるだけではなく、微生物感染に対抗する自然免疫シグナリングのプラットフォームとなるなど多彩な機能を持っています。ヒトに感染すると、治療しないと死に至るような重篤な肺炎を引き起こすレジオネラは、ミトコンドリアの酸素呼吸を阻害するけれども排除はしないなど、巧妙な戦術によりミトコンドリアをハイジャックして利用していると考えられています。本研究では、レジオネラとミトコンドリアのアンビバレントな関係の全貌、その背後にある分子基盤を明らかにすることを目的とします。
我々は、レジオネラ感染によるミトコンドリア機能欠損の解析の一環として、レジオネラ感染とマイトファジーの関係を精査した結果、レジオネラ感染がIV型分泌装置依存的にマイトファジーを抑制していることを見出していた。この抑制はレジオネラのIV型分泌装置依存的、かつこれまでにオートファジーへの寄与が明らかにされているエフェクターRavZおよびLpg1137には非依存的に起こっている。さらに、この抑制はマイトファジーに係わるユビキチンリガーゼParkinの上流、PINK1キナーゼの機能不全の形で起こっていることが予備的な解析により示唆されていた。本年度は、まずは現在の研究を進展させることにより、レジオネラ感染によるマイトファジー阻害の第一の作用点を解明を目指した研究を行った。レジオネラ感染が宿主細胞の翻訳を阻害すること、PINK1キナーゼの化学的半減期が短いことが知られていたことから、翻訳阻害によるPINK1キナーゼの枯渇の可能性を考えて、翻訳阻害剤の検討を行ったところ、翻訳阻害剤でも同様のマイトファジー阻害が観察された。その一方で、今日までに知られている翻訳阻害にかかわるレジオネラエフェクター5種のKO株をでは、マイトファジー阻害の回復がみられなかったことから、この現象に未知のエフェクターが関わる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
本年度は人員の異動等による人的リソースの減少などにより、一部の研究に遅れがでている。
レジオネラ感染によるマイトファジー阻害の分子基盤の解明に加えて、新たな人的リソースの活用により、計画どおり研究を推進していきたい。。
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