研究課題/領域番号 |
23K27410
|
補助金の研究課題番号 |
23H02719 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
浜本 洋 山形大学, 医学部, 教授 (90361609)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
|
キーワード | 作用機序解析 / 新規抗生物質 / AMR対策 / 超短時間作用性殺菌化合物 / 電子伝達系 / 感染症治療薬 / 黄色ブドウ球菌 |
研究開始時の研究の概要 |
ライソシンEを中心に殺菌性の抗菌薬における、細胞膜成分の役割をあきらかにする。また、細胞膜成分の合成経路のクロストークの可能性を検証し、ライソシンEをはじめとする抗菌薬における殺菌メカニズムへの寄与を検証する。さらに、本クロストークの増殖における生物的な意義を見出し、新たな抗菌薬の開発に貢献する。さらに本研究であきらかにするライソシンEの殺菌機構を基にして、臨床におけるその位置づけを見出す。
|
研究実績の概要 |
研究代表者が見出したライソシンEは、細胞膜中のメナキノンを標的として、膜障害を伴う超短時間性殺菌活性を示す、他の抗生物質とは一線を画す作用機序を有する抗生物質である。そのライソシンEの極めて迅速でかつ強力な殺菌機序を明らかにするため、当該年度において次の解析を実施した。まず、対数増初期におけるライソシンE曝露後の電子顕微鏡像を取得したところ、仮説通りに細胞分裂面から破壊される像が得られた。また、黄色ブドウ球菌の細胞膜、細胞壁の蛍光染色では、ライソシンE処理によって細胞膜の破壊が観察された。これは、ライソシンEは膜を破壊するという、これまで得られている結果と矛盾がない。さらに、細胞壁も無処理群とは異なる像が認められ、さらに解析を進めている。また、ライソシンE以外の抗生物質に黄色ブドウ球菌を曝露させ、メナキノン生産量に対する影響の解析を進めている。予想された仮説の通り、細胞壁合成阻害を示す抗菌化合物の処理によって黄色ブドウ球菌のメナキノン量が増加するほか、細胞膜障害を示す殺菌性の抗菌化合物の処理によっても増加することがわかった。さらに、細胞壁合成阻害薬とライソシンEの併用により、ライソシンEの殺菌活性がさらに増強されることがわかった。黄色ブドウ球菌における細胞壁合成の中間体の合成に関わる、必須遺伝子の温度感受性変異株を用いた解析を行った結果、温度シフト後にメナキノン量が増大することを明らかにした。また、ライソシンEに対する感受性も増大していた。さらに、スペインのグループとの共同研究において、共同研究者が見出したメナキノンオペロンに逆向きに挿入されている遺伝子の、メナキノン合成における制御機構を解明した。メナキノン合成経路は通常の代謝物とは異なり、精緻な遺伝子発現機構によって合成量が制御されていることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画において1年目に予定していた項目はすべて達成した。具体的には、ライソシンEによって細菌が壊れていく様子を電子顕微鏡及び蛍光顕微鏡によりあきらかにすることができた。また、複数の抗菌薬の曝露によって、黄色ブドウ球菌のメナキノンの合成量が増加することを明らかにすることができた。さらに、2年目に予定していた変異株を用いたメナキノン量の解析や、酸化的ストレスに関与する遺伝子破壊株に対するライソシンEの作用の検討に着手することができている。従って、当初の予定よりも進捗が進んでいることから、「当初の計画以上に進呈している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画通りに研究を遂行する。まず、現在遂行中である様々な種類の抗菌薬によるメナキノン合成に対する影響の検討を完了させる。さらに、メナキノン合成量が変動することが明らかにしている遺伝子組換え黄色ブドウ球菌を用いて、ライソシンEの殺菌活性とメナキノン量の相関をあきらかにする。次に、メナキノン量を増加させた抗菌薬において、黄色ブドウ球菌のATP生産量、酸素消費量、及び、酸化的ストレス応答性を測定し、抗菌薬によって増加するメナキノンが細菌に対してどのような影響を引き起こしているか解析する。それらに加えて、別の研究においてある種類の抗菌薬によって黄色ブドウ球菌が生産する抗酸化物質の生産量が増加することを明らかにした。この抗酸化物質は、細胞内におけるレドックス状態に応じて発現量が変動すると考えられている。そこで、その抗菌薬のメナキノン合成に対する影響と、抗酸化物質の生産量との相関を検討し、メナキノン量の増加と細胞内の酸化的ストレスの関係性を検討する。また、Sub-MIC濃度における抗菌薬作用後のトランスクリプトームを解析し、発現量が変動する反応経路をあきらかにする。次に、来年度実施予定のメナキノン合成に関わるタンパク質の局在を明らかにするために必要なGFP融合タンパク質の発現株の樹立を実施する。
|