研究課題/領域番号 |
23K27416
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補助金の研究課題番号 |
23H02725 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋口 隆生 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (50632098)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | ウイルス学 / 構造生物学 / 糖鎖生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
パラミクソウイルスの多くはシアル酸を受容体とするとされてきたが、各ウイルスのトロピズムを考慮するとシアル酸だけでは説明がつかない。我々は最近、ムンプスウイルスがシアル酸単体ではなく、α2,3 結合型シアル酸を含む3糖構造を特異的受容体として認識すること、非分岐型の糖鎖を優先的に利用することを明らかにした。この成果により、ムンプスウイルスでは糖鎖構造・発現局在に一定の相関をしたトロピズムが明らかになってきた。そこで、本研究では、様々なパラミクソウイルスが認識する糖鎖受容体構造とトロピズムの相関性を明らかにすることに取り組む。
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研究実績の概要 |
パラミクソウイルスは、ヒトやコウモリを含む様々な動物種から分離されている。パラミクソウイルスの受容体結合蛋白質の立体構造から、多くはシアル酸を受容体として使うと考えられていた。しかし、我々は最近、ムンプスウイルスがシアル酸単体ではなく、 α2,3 結合型シアル酸を含む3糖構造を特異的受容体として認識することを明らかにした。さらに、糖鎖を受容体とする他のパラミクソウイルスもシアル酸単体ではなく、より複合的な糖鎖を受容体として利用している可能性を示唆するデータも得られた。そこで、本研究では、様々なパラミクソウイルスが認識する糖鎖受容体構造を糖鎖相互作用解析や生物物理学的解析、構造解析、感染実験を用いて多角的、かつ、詳細に解明することにより、パラミクソウイルスの受容体認識機構と細胞侵入機構の総合的な解明と理解を目的に研究を行っている。 本年度は、糖鎖を受容体として認識すると考えられている複数のパラミクソウイルスのHemagglutinin-neuraminidase(HN)蛋白質の受容体結合ドメインの蛋白質発現に最適なコンストラクト作製と発現後の蛋白質精製条件を検討した。さらに、パラミクソウイルス受容体結合に連動して構造変化を起こすと考えられているstalkドメインの性状解析も行った。また、機能解析のための膜融合アッセイ系の構築を行った。さらに、X線結晶構造解析を行うために必要なパラミクソウイルス受容体結合蛋白質単独での結晶化スクリーニングも実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)糖鎖アレイを用いたHN蛋白質と糖鎖の相互作用解析: 本実験項目では、シアル酸を受容体として使うとされている代表的なパラミクソウイルスのHN蛋白質を発現・精製し、糖鎖との相互作用解析を行ため、各HN蛋白質のコンストラクトの調整と蛋白質発現・精製を行う。得られた蛋白質の性状解析を行い、蛋白質収量や多量体形成能、可溶性を評価する。本年度は、一部のパラミクソウイルスHN蛋白質について、蛋白質収量を最大化できるコンストラクトの調整と複数のヒト細胞培養発現系の検討を行った。得られた精製蛋白質の性状解析のためゲルろ過クロマトグラフィーによる解析と精製後の安定性試験を実施した。 (2)HN蛋白質と糖鎖受容体との結合力解析: 本実験項目では、上記1の実験で候補に挙がった糖鎖と精製HN蛋白質を用いて、結合力測定を行い、結合力の高い糖鎖構造を選抜し、次項目の構造解析に供する。本年度は、結合力測定を実施するために大量に必要になる精製HN蛋白質の作製に取り組んだ。十分な収量が確認されたサンプルについて相互作用解析を実施した。 (3)HN蛋白質と糖鎖受容体との複合体構造解析: 本実験項目では、上記のパラミクソウイルス受容体結合蛋白質の精製蛋白質をもちいて糖鎖との構造生物学的解析を行う。構造解析に適したヒト培養細胞発現系(293SGnTI(-)細胞)を用いて、前述の研究項目1と2の実験結果に基づき、各HN蛋白質に対する糖鎖受容体アナログとの複合体構造解析を行う。本年度は、構造解析を実施するために大量に必要となる精製HN蛋白質の作製に、293SGnTI(-)細胞発現系を用いて取り組んだ。十分な収量が確認されたサンプルについては順次X線結晶構造解析を実施し、一部でウイルス蛋白質単独での結晶化に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)糖鎖アレイを用いたHN蛋白質と糖鎖の相互作用解析: 結合力が強かった糖鎖受容体候補分子の解析を行い、共通配列や差異配列を抽出する。また、レスピロウイルス属、ルブラウイルス属、アブラウイルス属のそれぞれに特徴的な配列などを抽出する。
(2)HN蛋白質と糖鎖受容体との結合力解析: 結合力測定に必要な大量の蛋白質を確保するために新しい発現系の導入およびコンストラクトの調整を随時行う。またラベルフリーの測定系に比べて必要タンパク質量が少なくて済む結合力測定系の検討も行う。
(3)HN蛋白質と糖鎖受容体との複合体構造解析: 糖鎖との結合が観測しやすいX線結晶構造解析の系に持っていくため、実験項目2と同様に必要な大量の蛋白質を確保するために新しい発現系の導入およびコンストラクトの調整を随時行う。結晶化が困難なサンプルについては、クライオ電子顕微鏡構造解析にも取り組む。
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