研究課題/領域番号 |
23K27428
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補助金の研究課題番号 |
23H02737 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
澤 新一郎 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (80611756)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 3型自然リンパ球 / RORgt / 転写因子 / ILF / ワクチン / ILC3 / 液性免疫 / エンハサー / 転写制御 |
研究開始時の研究の概要 |
腸管粘膜には孤立リンパ濾胞(ILF)と呼ばれるリンパ組織が存在し、免疫応答の場になる。しかし、ILFが免疫記憶の場であるかは不明である 。本研究ではILFの構成細胞である3型自然リンパ球(ILC3)に着目し、腸管免疫記憶形成の原理解明を目指す。 本計画ではノロウイルス類似粒子(VLP)の経口投与モデルに「ILC3を特異的に減少または欠損した遺伝子改変マウス」を用いたILC3機能のl oss of function 実験と「同定済み核内受容体のリガンド」を用いたILC3機能のgain of function 実験を組み合わせ、ILC3と粘膜免疫記憶の 成立および維持の関係をin vivoで証明する。
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研究実績の概要 |
腸管粘膜には孤立リンパ濾胞(ILF)と呼ばれるリンパ組織が存在し、免疫応答の場になる。しかし、ILFが免疫記憶の場であるかは不明である 。本研究ではILFの構成細胞である3型自然リンパ球(ILC3)に着目し、腸管免疫記憶形成の原理解明を目指す。 本計画ではノロウイルス類似粒子(VLP)の経口投与モデルに「ILC3を特異的に減少または欠損した遺伝子改変マウス」を用いたILC3機能のl oss of function 実験と「同定済み核内受容体のリガンド」を用いたILC3機能のgain of function 実験を組み合わせ、ILC3と粘膜免疫記憶の 成立および維持の関係をin vivoで証明する。令和4年度までの研究により、ILC3分化過程において転写因子複合体Runx/CbfbがRORgt遺伝子の非コード領域に存在する複数のエンハンサー領域に結合し、RORgt遺伝子発現を誘導することが明らかにした。令和5年度は2箇所のエンハンサーのうち、5’側の領域(以下Peak1)の両端にloxP配列を挿入したRorc-Peak1 floxマウスを作成し、RORgtエンハンサーのうち、5’側の領域へのRunx/Cbfbの結合はILC3におけるRORgtたんぱく質の発現維持ではなく最終分化・成熟に関するチェックポイントとして重要な役割を果たすと推察された。また、RorcCre; Cbfb flox/floxマウスでは腸管関連リンパ組織(GALT)のうちパイエル板および腸管膜リンパ節は正常に形成されていたが、ILC3サブセットのうちLTi-like細胞が特異的に欠損し、孤立リンパ濾胞(ILF)が完全に欠失していた。ノロウイルス類似粒子(VLP)の経口投与モデルを用いたILC3の免疫記憶形成の検証は次年度に行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ILC3分化過程において転写因子複合体Runx/CbfbがRORgt遺伝子の非コード領域に存在する複数のエンハンサー領域に結合し、RORgt遺伝子発現を誘導することが明らかにし、第52回日本免疫学会学術総会のシンポジウムで発表した。令和5年度は2箇所のエンハンサーのうち、5’側の領域(以下Peak1)の両端にloxP配列を挿入したRorc-Peak1 floxマウスを作成後、タモキシフェン誘導性にCreの核以降を誘導可能なRosa26-CreERT2マウスと交配しRosa26-CreERT2; Rorc-Peak1 flox/floxマウスを作成し、RORgtエンハンサーのうち、5’側の領域へのRunx/Cbfbの結合はILC3におけるRORgtたんぱく質の発現維持ではなく最終分化・成熟に関するチェックポイントとして重要な役割を果たすことが明らかになった。一方、ヒトノロウイルスワクチンを経口投与し、ノロウイルスへの中和活性を有する高親和性抗体の産生を検証するプロジェクトに関してはマウスの遺伝的背景を揃えるためのバッククロスに時間を要し、令和5年度中の遂行は次年度に持ち越された。
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今後の研究の推進方策 |
腸管ILC3が抗原特異的なIgA産生に重要な役割を果たすか?という本プロジェクトの中心的命題に対する答えを得るために、これまでに樹立し、C57BL/6Jへのバッククロスを繰り返してきたRorc-Peak1欠損マウスおよびRorcCre; Cbfb flox/floxマウスに対し、ヒトノロウイルスワクチンを経口投与し、ノロウイルスへの中和活性を有する高親和性抗体の産生を検証する。 これまでの研究では腸管関連リンパ組織(GALT)のうち、パイエル板がT細胞依存的な高親和性抗体の産生の場であると理解されてきた。しかしながら、これまでパイエル板を特異的に欠損するマウスモデルがなく、高親和性抗体産生におけるパイエル板の重要性を実験的に証明した報告はない。同様に、GALTのうち、孤立リンパ濾胞(ILF)を特異的に欠損するマウスモデルがなく、高親和性抗体産生におけるILFの寄与も明らかでない。我々の研究グループではILFのみを特異的に欠損するRorcCre; Cbfb flox/floxマウスに加え、パイエル板を特異的に欠損する遺伝子X欠損マウスの樹立に成功している。令和6年度はこれらのマウスにヒトノロウイルスワクチンを経口投与することで、ノロウイルスへの中和活性を有する高親和性抗体の産生にパイエル板またはILFどちらが主体的な役割を果たすか否かを検証する。
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