研究課題/領域番号 |
23K27429
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補助金の研究課題番号 |
23H02738 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
原 博満 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (20392079)
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研究分担者 |
阿戸 学 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 部長 (20392318)
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90359985)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 結核 / TREM2 / マクロファージ / Trem2 / 免疫回避 / 抗酸菌 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は結核菌脂質によるTREM2-DAP12シグナルの活性化が、骨髄の造血前駆細胞から許容的性質のマクロファージを誘導するとともに、そのマクロファージの長期生存を促す可能性を見出した。本研究では、この脂質によって誘導されるマクロファージ分化の分子メカニズムを解明するとともに、高病原性結核菌感染によって出現する許容的Mφの分化誘導と潜伏持続感染におけるTREM2の役割をマウス感染試験によって検証し、結核菌脂質によるマクロファージの活性化制御を介した結核の病態形成の新たなメカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
EGFP発現M. bovis BCGをマウスに感染させ、肺浸潤細胞のFACS解析を行い、許容的v集団の同定を試みた。その結果、EGFP陽性細胞はマクロファージにほとんど検出されず、iNOS陽性・陰性細胞の区別も明確でなかった。そこで、蛍光タンパク(GFP、DsRed、HcRed)発現結核菌株(M. tuberculosis H37Hv)を用いた感染試験に切り替えることを決め、感染試験に供するためのこれら結核株の培養とcfuの決定を実施している。 BCG感染後40日目の骨髄細胞を採取しin vitroで培養したところ、細胞内にBCG菌は検出されないものの、M-CSFの添加を必要とせずにマクロファージ分化が誘導されることを見出した。これらのマクロファージはTREM2やPD-L1を高発現していた。このことは、抗酸菌が感染した骨髄細胞では、マクロファージ分化へのコミットメントが生じることを示唆していた。 In vitroで骨髄細胞をBCG菌(生菌 or 死菌)と共培養した結果、BCG菌の生菌、死菌の両方でマクロファージ分化が誘導できることを見出した。これらのマクロファージのLPS刺激後のサイトカイン産生と貪食能調べた結果、これらのマクロファージはM-CSF誘導BMDMと同様のサイトカイン産生能と貪食能を有することがわかった。 脂質刺激により誘導される骨髄由来マクロファージの前駆細胞の探索を行った結果、これらは骨髄中の単球からは誘導されず、cMOPから誘導されることが判った。 米国より入手したPGL陽性の高病原性結核菌W北京株(HN878)を野生型マウスの肺に噴霧感染(500 cfu)し、1ヶ月後に肺内菌数の測定を行なったが、菌の定着や病原性を示すに至らなかった。そのため、別のソースから、イギリス由来の同株を入手した。本株の病原性を検証するための準備を再び進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
入手した高病原性結核菌W北京株を用いたマウス感染試験の予備試験を実施したら、同株の病原性が、文献に報告されているそれとはかけ離れており、マウス肺への感染定着を得られなかったため、別のルートから新たに同株を入手し、これの培養拡大の条件検討からやり直すことになった。 蛍光タンパク発現BCG菌を用いて、フローサイトメーター解析による許容的マクロファージ集団の同定を試みたが、許容的マクロファージと殺菌的マクロファージを区別する重要なマーカーであるiNOSの発現誘導がBCG感染では著しく低く、BCG菌の感染系を使用したアプローチは断念し、蛍光タンパク質発現結核菌を用いた方法に切り替えることにした。以上の理由から、計画が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)許容的Mφを同定するため、蛍光蛋白発現結核菌株を用いたマウス感染試験の予備試験を実施する。感染1ヶ月後のマウスの肺を採取し、cfu測定を行うとともに、肺浸潤細胞を単離し、FACS解析を実施する。FACS解析では、結核菌の含量が高く、iNOS発現量の低いマクロファージを許容的マクロファージとして同定を試みる。 (2)BCG感染後の骨髄細胞から誘導されるマクロファージの機能(サイトカイン産生、貪食能、抗酸菌の殺菌能)や長期生存能を調べる。結核菌感染後のマウスの骨髄細胞を採取しマクロファージ分化が誘導されるかを調べる。これらのマクロファージがBMDMとは異なる性質を示した場合、RNAseq解析によりDEGの探索を行う。 (3)新たに入手した結核菌W北京株を用いてマウスの肺感染試験を実施し、本株がマウス個体において強い病原性を発揮するかを検証する。病原性が確認できた場合は、PGLR欠損マウスやPGL欠損HN878を用いた試験を同様に実施し、本菌の病原性がPGLRおよび菌のPGL発現に依存するか否かを検証する。感染肺を採取し、(1)の検討で同定した許容的マクロファージ集団がW北京株感染肺に存在するか、その集団がPGLR欠損マウスの感染肺やPGL欠損株の感染肺では変動するかについて解析する。また、感染肺に浸潤するマクロファージ集団のシングルセルRNAseq解析を見据え、結核菌感染肺の固定、固定した組織の分散化、分散化した組織の蛍光抗体による染色とMACSによる精製条件を検討する。
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