研究課題/領域番号 |
23K27433
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補助金の研究課題番号 |
23H02742 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 (2024) 千葉大学 (2023) |
研究代表者 |
山本 一夫 お茶の水女子大学, ヒューマンライフサイエンス研究所, 客員教授 (20174782)
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研究分担者 |
池原 譲 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10311440)
吉富 秀幸 獨協医科大学, 医学部, 教授 (60375631)
山口 高志 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (60626563)
東 和彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 技術系職員 (80422260)
大木 翔太 千葉大学, 大学院医学研究院, 技術職員 (80916180)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2026年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | グリコサミノグリカン / がん微小環境 / 近位依存性標識 / シグナルモジュール / cochlin |
研究開始時の研究の概要 |
グリコサミノグリカン(GAG)鎖は細胞間マトリクスの主要な構成分子であり、増殖因子が結合する足場となっているため、がん微小環境を構成する重要なシグナルモジュールである。我々はGAG鎖を特異的に識別できるプローブを開発しさまざまな特異性をもつ複数の変異体を取得したが、これら変異体にビオチン化タンパク質を結合させた融合タンパク質を作出し、GAG近傍に存在する分子を網羅的に標識することを試みる。シグナルモジュールを構成する分子群を同定をし、GAG鎖を介したシグナルモジュールを網羅的に明らかにする。更に、GAG鎖の硫酸化等を増減させることにより、腫瘍細胞の性質にどのように影響するかを検証する。
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研究実績の概要 |
グリコサミノグリカン(GAG)鎖は細胞間マトリクスの主要な構成分子であり、増殖因子が結合する足場となっているため、がん微小環境を構成する重要なシグナルモジュールである。我々はGAG鎖を特異的に識別できるプローブを開発しさまざまな特異性をもつ複数の変異体を取得したが、これら変異体にビオチン化酵素(TurboID)を結合させた融合タンパク質を作出し、GAG鎖近傍に存在する分子を網羅的に標識することを目標とした。これによりシグナルモジュールを構成する分子群を同定し、GAG鎖を介したシグナルモジュールを網羅的に明らかにすることを目指した。更に、GAG鎖の硫酸化等を増減させることにより、腫瘍細胞の増殖性や運動性などの性質にどのように影響するかを分子レベルで検証し、さらにGAG鎖という切り口から癌の病態の診断・理解に繋げることが本提案の主な目的である。本年度はGAG鎖近傍の分子をビオチン化することを目的に、種々のGAG鎖を認識するcochlinとビオチン化酵素の融合タンパク質の作出を試みた。cochlin融合タンパク質には精製に用いるIgG-Fc領域を付加しているため、ビオチン化酵素を含めた3種類のタンパク質をどのような順番で組み合わせたら発現効率が良いか、且つそれぞれの活性が維持されるかを検討した。5種類の融合タンパク質の発現を試みたが、これら融合タンパク質は分子量が大きいためか、いずれも発現効率が良くなかった。そこで、3つのタンパク質の融合タンパク質を作出するのではなく、本来、発現効率の良いcochlin-Fcタンパク質に15アミノ酸程度の短いビオチン化配列を付加するにとどめ、発現効率の低下を抑えることとした。この手法ではストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼをさらに作用させ、ビオチンフェノール等を基質として近傍のタンパク質を標識する手法も試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はGAG鎖近傍の分子をビオチン化することに焦点を絞り、GAG鎖を認識するcochlinとビオチン化酵素(TurboID)、および精製のためのIgG-Fc領域の融合タンパク質の作出を試みた。試行錯誤し作成した5種類のキメラタンパク質はいずれも発現量が少なく、その後の実験に供するのに十分な量を得ることは難しいと考えられた。そこで次に、cochlinにビオチン化酵素を融合させたタンパク質として発現させるのではなく、15アミノ酸のビオチン化タグ(Avi-tag)を付加した融合タンパク質を発現させ、これにストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼを作用させ、ビオチンフェノールあるいはビオチン化チラミドを基質として用いることにより、近傍のタンパク質のビオチン化を試みることにした。後者は分子量が小さいことから発現量が良く、十分な量の融合タンパク質を得ることができたことから、当初の発現量の少なかった理由は分子量が大きくなりすぎたことが主な理由と考えられた。また、ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼは広く免疫染色などに用いられており、より感度を上げるための工夫や改良がなされている。そのため、ペルオキシダーゼを使い分けることにより、今後のGAG鎖近傍に存在するシグナルモジュールの解明には、検出感度を上げたりバックグラウンドを下げるなどの工夫など、状況に応じて修正して行くことができるため、好都合であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ビオチン化配列をもつcochlin-Fcタンパク質の作成:今年度はビオチン化配列を付加した融合タンパク質の発現に焦点を絞ることとする。まず、cochlin-Fc融合タンパク質を悪性度の異なる培養細胞株(ヒト食道癌TE-9, TE-10, TE-11など)の表面に結合させる。この融合タンパク質にストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼを結合させ、ビオチンフェノールあるいはビオチン化チラミドを基質として、近傍(<20nm)に存在するチロシン残基を選択的にビオチン化する。処理時間、cochlin-Fcタンパク質や基質の濃度などについて最適化する。 (2)cochlin-Fc融合タンパク質の近傍に存在するタンパク質の同定:ビオチン化配列をもつcochlin-Fc融合タンパク質を悪性度の異なる培養細胞株(ヒト食道癌TE-9, TE-10, TE-11等)に振りかけ、上記の手法に基づき近傍に存在する分子をビオチン化する。悪性度の異なる癌細胞株においてどのように異なるかを比較検討するために、ビオチン化後に細胞のライセートを調製し、二次元電気泳動によって分離する。検出はストレプトアビジン標識アルカリホスファターゼなどによりビオチン化されたタンパク質を検出する。大きな相違が認められるスポットに関して、ゲルから切り出し、トリプシンによるゲル内消化によって得られたペプチド断片をOrbitrap型質量分析計でアミノ酸配列を決定し、最終的にタンパク質の同定を行う。 (3)cochlin変異体を用いたシグナルモジュール構成タンパク質の相違:我々は既にGAG鎖結合特異性の異なるcochlin変異体をいくつか作出した。そこで、ビオチン化配列をもつこれら変異体を (1)と同様に作出する。更に(2)の方法に倣い、異なるGAG鎖を介したシグナルモジュールの違いの有無について検討する。
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