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V-ATPaseの酸性度調節によるがん幹細胞の生存戦略の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K27440
補助金の研究課題番号 23H02749 (2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2023)
応募区分一般
審査区分 小区分50010:腫瘍生物学関連
研究機関広島大学

研究代表者

仲 一仁  広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (70372688)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
キーワードV-ATPase / リソソーム / 酸性度調節 / プロトンポンプ / CML幹細胞 / 酸 / CMLマウスモデル
研究開始時の研究の概要

がん幹細胞は,抗がん剤治療後のがんの再発原因となるが,生体内でのがん幹細胞の生存維持における“酸”の役割は明らかでない.本研究では,慢性骨髄性白血病 (CML)のマウスモデルを用いて,リソソームでの酸性度調節を担うV-ATPaseの制御メカニズムを解明し,CML幹細胞の自己複製能の維持,及び抗がん剤抵抗性おける酸性度制御の意義を明らかにする.このV-ATPaseの制御メカニズムを解明することで,正常細胞に対する副作用の少ない,がん幹細胞に特異的な酸の制御機構をターゲットとするがんの再発治療法を開発するための科学基盤の確立を目指す.

研究実績の概要

本研究では,慢性骨髄性白血病(CML)のマウスモデルを用いてリソソームのプロトン輸送をコントロールするV-ATPaseの機能を解析し,CML幹細胞の抗がん剤抵抗性や未分化性の維持における酸性度制御の意義を解明することを目的とした研究を実施している.2023年度,正常造血幹細胞とCML幹細胞との間での遺伝子発現解析を行ない,CML幹細胞はリソソームの酸性度調節に関わるV-ATPaseのAtp6v0e2サブユニットを高発現していることを見出した.次いで,野生型マウス由来の造血幹細胞にAtp6v0e2遺伝子,並びに対照としてGFP遺伝子を導入して,Atp6v0e2・GFP発現造血幹細胞を得た.これらのAtp6v0e2・GFP発現造血幹細胞に対して,ヒトCMLの原因遺伝子であるBCR-ABL1を導入後,マウスに骨髄移植を行なって,CML幹細胞のマウスモデルを構築した.これらのCML発症マウスの生存期間を解析し,CML幹細胞の白血病発症能や未分化性の維持能力におけるAtp6v0e2の役割を解析した.その結果,Atp6v0e2を導入したCML幹細胞を移植したマウスは,GFPを導入したCML幹細胞を移植したマウスと比較して,生存期間が延長して,白血病発症能が低下していることが明らかとなった.さらに,マウス脾臓でのCML幹細胞の細胞数を解析した結果,Atp6v0e2遺伝子を導入したCML幹細胞は,GFPを導入したCML幹細胞と比較して,細胞数が減少していることが判明した.このような結果から,Atp6v0e2はCML幹細胞の増殖・分化を亢進して,未分化性維持能力,並びに白血病発症能を低下させることが明らかとなった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

がん幹細胞は,正常幹細胞と類似の未分化性を有する細胞であり,大量のがん細胞を生み出す能力と抗がん剤治療に対する抵抗性を併せ持つことで再発や転移を引き起こす原因になると考えられている.一般に,がん細胞は抗がん剤治療などの栄養飢餓状態でも,オートファジーなどの細胞内での分解機構によって栄養素を再利用して生存・増殖を可能としている.この分解機構にはリソソームの酸が利用されることから,リソソームの酸性度調節はがんの治療標的に位置付けられている.一方で,がん幹細胞は増殖活性を低く抑えた特殊な低代謝状態を獲得することで未分化性を維持している.しかし,これまで,がん幹細胞における“酸”の役割は明らかではない.そこで,本研究では, CMLのマウスモデルを用いて,リソソームの酸性度調節を担うV-ATPaseの制御メカニズムを解明し,CML幹細胞の自己複製能の維持,及び抗がん剤抵抗性における酸性度制御の意義を明らかにすることを目的とした研究を実施している.
リソソームの酸は,ATPのエネルギーを使ってプロトン (酸) の能動輸送を行うV-ATPaseによって制御されている.V-ATPaseは14種類のサブユニットからなる910kDaの巨大な複合体であり, ATPの加水分解を行うV1ユニットやプロトン輸送を行うV0ユニットが知られている.そこで,2023年度,正常造血幹細胞とCML幹細胞との間での遺伝子発現解析を行ない,CML幹細胞はリソソームの酸性度調節に関わるV-ATPaseのAtp6v0e2サブユニットを高発現していることを見出した.さらに,Atp6v0e2を導入したCML幹細胞は増殖・分化が亢進して白血病発症能が低下することから,Atp6v0e2はCML幹細胞の未分化性の維持に重要な役割を担うことを解明した.

今後の研究の推進方策

Atp6v0e2導入CML幹細胞,並びに対照としてGFP導入CML幹細胞を用いて,リソソーム活性,及びミトコンドリア選択的オートファジー (マイトファジー) の解析を行い,CML幹細胞のV-ATPの酸性度調節,リソソーム活性,ミトコンドリア制御におけるAtp6v0e2の役割を明らかにする計画である.
【Atp6v0e2 導入CML幹細胞におけるリソソームの酸性度の解析】
GFP・Atp6v0e2 導入CML幹細胞を用いて,LysoTracker (酸性物質の検出)と抗Lamp1抗体 (リソソームマーカー) を用いた蛍光染色を行う.次いで,超高解像度共焦点レーザー顕微鏡 (Stellaris 5, Leica社) による解析を行なって,リソソームの酸性度調節におけるAtp6v0e2の役割を解明する.同様に,リソソームpHセンサー分子を導入して,リソソームでの酸性度調節におけるAtp6v0e2の役割を明らかにする.
【ミトコンドリア選択的オートファジーの解析】
GFP・Atp6v0e2 導入CML幹細胞において,抗LC3抗体 (オートファジーマーカー) ・抗Tom20抗体 (ミトコンドリアマーカー),抗Pink1抗体, 抗Parkin抗体 を用いた蛍光免疫染色による解析を行い,マイトファジーの解析を行う.また,透過型電子顕微鏡 (JEM-1400, 日本電子社) によりミトコンドリア構造,及びマイトファゴソームに取り囲まれたミトコンドリアの解析を行い,リソソームの酸性度調節によるミトコンドリア制御機構を明らかにする.

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [国際共同研究] GILO Institute, GILO Foundation(韓国)

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] A novel anticancer quinolone, (R)-WAC-224, has anti-leukemia activities against acute myeloid leukemia2023

    • 著者名/発表者名
      Mino Tatsuji、Ureshino Hiroshi、Ueshima Taichi、Kashimoto Naoki、Yamaguchi Tomonori、Naka Kazuhito、Inaba Toshiya、Ichinohe Tatsuo
    • 雑誌名

      Investigational New Drugs

      巻: 41 号: 5 ページ: 751-760

    • DOI

      10.1007/s10637-023-01393-0

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] Discovery of a novel activin receptor-like kinases (ALKs) inhibitor targeting TGF-β signaling pathways2023

    • 著者名/発表者名
      Mai Arai, Mitsuharu Hanada, Hideki Moriyama, Hiroshi Ohmoto, Kazuhito Naka, Masaaki Sawa
    • 学会等名
      American Association for Cancer Research Annual Meeting
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] CML幹細胞の発生機構の解析2023

    • 著者名/発表者名
      仲 一仁
    • 学会等名
      第7回放射線災害・医科学研究拠点カンファランス
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] A novel ALK5 inhibitor, AL2 shows anti-tumor activity by modulating cancer immunity2023

    • 著者名/発表者名
      Masaaki Sawa, Mai Arai, Mitsuharu Hanada, Hideki Moriyama, Hiroshi Ohmoto, Kazuhito Naka
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術総会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [図書] 組織培養の技術 第4版2023

    • 著者名/発表者名
      仲 一仁
    • 総ページ数
      3
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      9784254310962
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [産業財産権] New methods for treating symptoms in long COVID2024

    • 発明者名
      仲 一仁, 澤匡明
    • 権利者名
      広島大学, カルナバイオサイエンス株式会社
    • 産業財産権種類
      特許
    • 出願年月日
      2024
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 外国

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公開日: 2023-04-18   更新日: 2024-12-25  

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