研究課題/領域番号 |
23K27444
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補助金の研究課題番号 |
23H02753 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
北嶋 俊輔 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 研究員 (90566465)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | cGAS-STING経路 / STK11/LKB1 / 非小細胞肺がん / KRAS |
研究開始時の研究の概要 |
KRAS;LKB1変異(KL)型非小細胞肺がん(NSCLC)が難治性を示す要因の1つである免疫抑制性の微小環境形成に、LKB1変異に伴うSTING発現抑制が果たす役割を解明する。これまでに確立したKL型NSCLCマウスモデルはSTINGの発現が低く抗PD-1治療に対して抵抗性を示すが、STINGアゴニストと併用投与することで腫瘍退縮効果を示す。そこでTet発現誘導システムなどを用いて、腫瘍組織内のがん細胞に対してLKB1あるいはSTINGを再構成した際の免疫微小環境の変化を比較し、KL型NSCLCに特徴的な免疫微小環境形成にがん細胞自身のLKB1変異・STING抑制が果たす役割を解明する。
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研究実績の概要 |
KRAS変異型非小細胞肺がん(NSCLC)の約1/3を占めるKRAS;LKB1変異(KL)型NSCLCは、免疫原性が低く、PD-1阻害薬に対して治療抵抗性を示す。本研究では、KRAS;LKB1変異(KL)型非小細胞肺がん(NSCLC)が難治性を示す要因の1つである免疫抑制性の微小環境形成に、LKB1変異に伴うSTING発現抑制が果たす役割の解明を目指す。まず本年度は、KL型NSCLCが免疫抑制性の微小環境形成を示す分子機序を実験的に解明し制御することを目的として、実際のヒトKL型NSCLCが示す免疫微小環境を再現し、PD-1阻害薬に対しても治療抵抗性を示すマウスモデルの作製を目指した。具体的には、CRISPR/Cas9を用いた遺伝子編集技術により、同系マウス(129S2/SvPasCrl)に移植可能なマウス肺腺がん由来細胞に対してKRAS G12C変異を導入し、さらに同様に遺伝子編集技術によりSTK11/LKB1に遺伝子を欠損させることでマウスKL G12C型肺腺がん細胞を樹立した。これらの細胞は同系マウスに移植することで、免疫細胞とがん細胞の相互作用や抗腫瘍免疫経路を介した薬効を解析することが出来る。実際に、このマウスKL G12C型肺腺がん細胞を同系マウスの皮下に移植したのちに、生着したがん組織の免疫微小環境を解析した結果、ヒトのKL型肺腺がんと同様にCD8陽性T細胞などの細胞傷害性リンパ球の腫瘍内浸潤の割合が低く、PD-1阻害薬に対して治療抵抗性を示した。またSTINGの発現も低下していた。今後は、これらのマウス実験モデルを用いて、LKB1あるいはSTINGの再構成が免疫微小環境に与える影響などを詳細に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、今回新たに作製したKL G12C型肺腺がん細胞を同系マウスに移植した際に形成される腫瘍組織の免疫微小環境やPD-1阻害薬に対する感受性の解析を中心に行なった。その結果、上述したように、ヒトのKL型肺腺がんと同様にCD8陽性T細胞などの細胞傷害性リンパ球の腫瘍内浸潤の割合が低い腫瘍組織を形成すること、またPD-1阻害薬に対して治療抵抗性を示すこと明らかにした。また、がん細胞のSTING発現低下がPD-1阻害薬に対する治療抵抗性に寄与しているかどうかを検討するため、抗PD-1抗体を投与する際に、腫瘍組織内のSTING経路を人為的に活性化させるSTINGアゴニストを併用した。その結果、抗PD-1抗体あるいはSTINGアゴニスト単剤投与時と比較して、有意に腫瘍退縮効果を示した。今後は、抗PD-1抗体単剤あるいはSTINGアゴニストとの併用投与に伴う遺伝子発現や免疫微小環境の変化を比較し、STING再活性化時に特徴的に起こる現象の解析を通じて、KL型NSCLCにおいてSTING経路の抑制が免疫回避機構として機能する分子機序を探る。一方でSTINGアゴニストは、がん細胞のみならず免疫細胞を含む周辺の微小環境を構築する様々な細胞群のSTING経路を活性化するため、STINGアゴニスト投与実験のみで、がん細胞自身のSTING経路の抑制が免疫回避機構としてどの程度寄与するか結論づけることは困難である。そこで、がん細胞自身のSTING経路の活性が免疫微小環境の構築にどのような影響を与えるかを、特異的に解析するため、Tet発現誘導システムにより生体内でがん細胞のSTINGを活性化する実験系を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究方針として、引き続きKL G12C型肺腺がん細胞を同系マウスに移植した際に形成される腫瘍組織の免疫微小環境を詳細に解析する。具体的には、多重免疫染色や空間的トランスクリプトームなどの技術を利用して、がん細胞自身におけるLKB1の再構成あるいはSTING経路の活性化が周辺の免疫微小環境にどのような影響を与えるか解析する。がん細胞自身におけるLKB1再構成あるいはSTING活性化は、本年度に作製したTet発現誘導システムを利用する予定である。またこれまでにKL G12C型肺腺がんモデルにおいて、STINGアゴニストを抗PD-1抗体と併用することで免疫チェックポイント治療抵抗性をある程度克服できることを明らかにしたが、上記と同様に、多重免疫染色や空間的トランスクリプトームなどの技術を利用して、抗PD-1抗体単剤あるいはSTINGアゴニストとの併用投与に伴う遺伝子発現や免疫微小環境の変化を比較解析する予定である。このように遺伝子再構成あるいは薬剤投与により、腫瘍組織内でSTING経路を再活性化させた際に特徴的に起こる現象を明らかにすることで、KL型NSCLCにおいてSTING経路の抑制が免疫回避機構として機能する分子機序を探る予定である。
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