研究課題/領域番号 |
23K27455
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補助金の研究課題番号 |
23H02764 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
藤原 弘 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携講座教授 (20398291)
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研究分担者 |
三輪 啓志 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携講座准教授 (00209967)
赤堀 泰 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (80221711)
石原 幹也 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (20707369)
瀬尾 尚宏 東京大学, 工学系研究科, 特任准教授 (50283354)
加藤 琢磨 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (60224515)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 同種γδ-T細胞 / 幹細胞様メモリーT細胞 / CAR-T細胞 / persistence / 固形がん / 細胞免疫療法 / off-the-shelf |
研究開始時の研究の概要 |
血液がんに対する自家CAR-T細胞は臨床的に成功したとは言え約60%の患者は再発する。固形がんに対するCAR-T細胞は現在も成功していない。これらの課題の解決策として、我々は健常者由来同種CARγδ-T細胞の開発を進めている。γδ-T細胞はHLA非拘束性エフェクター細胞であるため同種細胞でも移植片対宿主病リスクが無いと言う大きな利点がある一方で、その生物学的特徴からエフェクター細胞としての機能的持続性が短い傾向があり臨床的有用性を阻害している。本研究では、γδ-T細胞培養法とCAR遺伝子構造の最適化と言う2つの視点から新たな技術開発を進めて、より持続的な臨床効果の達成を目指している。
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研究実績の概要 |
R5年度はγδ-T細胞のpersistence向上を目指すCAR遺伝子構造として、ナイーブ・メモリーT細胞性形質の獲得を助長できる新しい第5世代型CAR遺伝子構造を構築した。現在、レトロウイルスベクターを作製してγδ-T細胞への導入実験を進めている。試験的に構築した候補CAR遺伝子を導入したγδ-T細胞のNOGマウスへの輸注実験を開始して、in vivo persistenceの評価系の整備を進めている。 一方で、CAR遺伝子導入γδ-T細胞のpersistenceを向上させるもう一つの視点であるγδ-T細胞培養系に介入してナイーブ・メモリーT細胞性形質を獲得させるためのNotch ligandシグナルを利用する新規培養法の構築を進めている。現在までの検討では、Notch ligandシグナルを入れるタイミングによってCAR遺伝子を導入した成熟γδ-T細胞の反応性に違いが見られることから、共培養刺激を加えるタイミングの最適化が必要と考えている。 一方で、CAR遺伝子導入γδ-Tのナイーブ・メモリーT細胞性形質獲得とその結果としての機能的persistence向上を評価するためのchronic stimulation法、疲弊抵抗性獲得の評価としてエネルギー代謝プロファイルに注目したアッセイ系を構築した。 これらCAR遺伝子やがん抗原特異的TCR遺伝子を導入した同種γδ-T細胞の機能的persistenceの改善に関するコンセプトを基礎検討して得た知見を論文報告し、また国内外の学会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度はγδ-T細胞のPersistence向上を目指すCAR遺伝子構造として複数の新しい遺伝子構造を構築した。新規CAR遺伝子としてT細胞活性化における第2及び第3シグナルを搭載した新たな遺伝子構造の開発を進めている。構築した新規CAR遺伝子導入γδ-T細胞の機能評価系としているchronic stimulation法を用いた検討、疲弊マーカーを用いた検討、代謝プロファイルを用いた検討系の構築も終了した。幾つかの候補CAR遺伝子を導入したヒトγδ-T細胞を輸注した担癌NOGマウス治療モデルを用いて末梢血中のCARγδ-T細胞を経時的に観察してin vivo persistenceの評価を開始している。 γδ-T細胞の新規培養法開発は、Notch ligand発現feeder細胞との共培養によるがん抗原受容体遺伝子導入γδ-T細胞の表面マーカー、増殖活性、Naive/memory-T細胞への分化傾向、chronic stimulation法を用いた細胞動態と疲弊状態の評価に関する予備検討を行い、Notch ligandを用いた共培養刺激を追加するタイミングの最適化の検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、抗腫瘍効果の増強を裏打ちする機能的persistenceを向上させることを目的としてCAR遺伝子導入γδ-T細胞のメモリーT細胞性形質獲得を助長させるCAR遺伝子の構築を進めている。これまでに候補遺伝子の構成と遺伝子構造の最適化へ向けた基本情報を取得した。R6年度も、この方針を継続し、CAR遺伝子構造の最適化を進めて目的とするCAR遺伝子を完成する。 CAR遺伝子導入γδ-T細胞の拡大培養工程における若返りを助長する目的で、R5年度で作製に成功したNotch ligandシグナルを発現するfeeder細胞を用いて、R6年度は、共培養刺激を加えるタイミングの最適化を進める。 R6年度から、γδ-T細胞のナイーブ・メモリーT細胞形質を得るための新たな視点として、CAR遺伝子を導入するγδ-T細胞ソースの検討を開始する。現在用いているγδ-T細胞は、成人健常ドナー末梢血を刺激拡大培養して得ている。そのため、獲得されるγδ-TCRレパトアは成人ドナーの特性と本拡大培養法の特性による制約を受けている。自然免疫担当細胞であるγδ-T細胞にも複数の亜集団があることが知られており、それぞれ異なる利点を持つ亜集団を有効に活用することで、ヘテロな同種γδ-T細胞製剤の総和的な機能的persistenceの向上に繋げる可能性を検討する。 本研究の最終年度に当たるR7年度は、CAR遺伝子構造の最適化と拡大培養法の最適化の検討をさらに進めて論文化と知財化を目指す。R6年度から開始するγδ-T細胞ソースの検討は、それぞれの細胞ソースから得たγδ-T細胞を用いたCAR-T細胞を試作して、その基本特性を検討する。さらに、次の段階として、同細胞ソース由来かつ機能強化型CAR遺伝子を搭載した次世代型γδ-T細胞製剤の実用化を目指す非臨床開発研究へ繋げることを目指す。
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