研究課題/領域番号 |
23K27457
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補助金の研究課題番号 |
23H02766 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
南 博信 神戸大学, 医学研究科, 教授 (60450574)
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研究分担者 |
清田 尚臣 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (40515037)
船越 洋平 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50566966)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2025年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | irAE / 免疫チェックポイント阻害薬 / 免疫関連有害事象 / HLA / BCR |
研究開始時の研究の概要 |
ICIによるirAEはT細胞によると従来は考えられてきたが、我々のこれまでの研究でB細胞も大きく関与していると考えられる。本研究ではirAEの組織で免疫細胞動態を解析しこれをを証明する。またICI治療で縮小した腫瘍組織検体を得ることは困難でも、同様の免疫学的機序で正常組織が障害を受けたirAEの検体を得ることは比較的容易であり、これを解析することにより腫瘍組織での免疫反応を推定する。また、HLAやMicro biomeとirAEとの関連のも解析し、免疫細胞動態解析などと合わせてirAEの機序を多角的解析手法で解明する。
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研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による副作用である免疫関連有害事象(irAE)は、一般にはT細胞の過剰な活性化により発症するものと考えられている。しかし、我々が行った先行研究から、B細胞がその発症に深く関与するという仮説を得た。本研究は、irAEに対するB細胞の関与を多角的に検証していくことを目的としており、「B細胞の動態と機能解析」、「irAE組織における浸潤細胞の解析」、「irAE/重症筋無力症における抗アセチルコリン受容体抗体の同定」、「HLAとirAEの相関解析の継続」、「マイクロバイオーム」、「irAE組織と腫瘍組織における免疫細胞動態の類似性」について研究を行う。これらを統合的に研究することで、irAEのメカニズムを解明し、その対応方法として、発症予測や新規治療法の開発をすることが本研究の目的である。 初年度である2023年度は、ICI投与を行う症例に対し、神戸大学医学部附属病院 倫理委員会の承認を得たプロトコールによる同意を得て、投与前後で積極的に検体(血清、末梢血単核球、便、臨床情報)の収集と保存を行った。また、微小組織からの検体採取、便検体の採取/保存、レパトア解析など、それぞれの検体とデータ回収にあたり、必要な条件設定や取得方法の確立を行った。加えて幾つかの課題においてはデータの解析を開始しており、良好な結果を得ている。具体的には、「ICI投与後に発症したirAE/重症筋無力症の解析」や「irAE組織浸潤細胞の解析」について、以下に示すような知見を得ており、今後も引き続き研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「irAE/重症筋無力症とB細胞の関係」の研究で、ICI投与3か月後に筋力低下を発症し、血清抗アセチルコリン抗体陽性にて重症筋無力症と診断した症例で研究目的にICI投与前より定期的に保存しておいた検体(血清、末梢血単核球)で抗アセチルコリン抗体を測定した。興味深いことに、重症筋無力症の症状を認める1か月以上前のICI投与2週目には抗体価が陽転化していた。我々は先行研究にて、ICI投与後1週間目に活性化B細胞が増加することを見出しており、この解析結果と一致する。irAEの原因となるB細胞の過剰な活性は、ICI投与直後からみられることが予測される。さらに、B細胞レパトア解析を開始した。具体的には、ICI投与前後の末梢血単核球よりmRNAを回収し、次世代シーケンサーを用いてBCR(IgG 重鎖)のCDR3領域のアミノ酸配列データを取得した。 「irAE組織における浸潤細胞の解析」については、これを行うために極少量の検体中にある免疫細胞を解析する必要がある。腸炎や肝炎などのirAEの診断は、発症臓器の生検検体より病理学的に診断されるが、本年度は、これら微小検体(生検検体)から浸潤免疫細胞を抽出し、フローサイトメトリーにて解析する技術を確立し、研究を開始した。微量な組織サンプルのより免疫細胞を抽出するため、“コラゲナーゼによるdissociationの条件設定”や“細胞を回収する遠心分離の条件設定”を調整し、10mg程度の微量な検体からであっても数百から数千個のCD4、CD8陽性T細胞やCD19陽性B細胞を解析/単離することが可能となった。irAEとこれら免疫細胞の関連について解析を開始している。 「HLAとirAEの相関解析」研究は、予定症例150例全例の登録を終了しHLAの結果を得てirAEとの相関解析を実施中である。すでに特定のirAEと相関するHLAを複数同定している。
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今後の研究の推進方策 |
「irAE/重症筋無力症とB細胞の関係」については、ICI投与とそれに伴うB細胞の活性が、irAE/重症筋無力症の発症に直接関与していることを明らかにするため、アセチルコリンレセプターに結合可能なBCR/抗体アミノ酸配列を取得し、その配列がICI投与前後のレパトア解析(バルク解析)によりその変化を明らかにする。アセチルコリンレセプターに結合するBCR/抗体アミノ酸配列を同定する方法としては、まず、アセチルコリンレセプター蛋白を合成し、FITCなど蛍光色素で標識をする。次に、患者の末梢血単核球中のB細胞の中から、この蛋白に結合するB細胞をソートし、レパトア解析を行うことで配列を得る。この得られた配列を持つクローンが、ICI投与後早期に急激に増加すると予想している。 「irAE組織における浸潤細胞の解析」の解析技術は十分に確立しており、今後、実臨床でirAEを発症した症例に対して積極的に生検による診断を行い、その残余検体により、組織浸潤免疫細胞の解析を行う。 その他の課題である、「B細胞の動態と機能解析」においては、ICI投与前後でB細胞のサブポピュレーションの変化を解析するために、末梢血単核球をセルバンカーを用いて収集/保存しており(現在20例程度のICI投与症例を登録している)、これを解析する。「マイクロバイオーム研究」としては、ICI投与前および初回画像解析時に便検体の回収を行っており、ICIの効果やirAEの発症と、マイクロバイオームの関係について解析を行う。HLAとirAEの相関をさらに多変量解析等により詳細に検討し、irAEのリスクとなるHLAを同定する。これらにより多角的かつ包括的にirAEとB細胞の関連を明らかにしていく。
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