研究課題/領域番号 |
23K27470
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補助金の研究課題番号 |
23H02779 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
籠谷 勇紀 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (70706960)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 細胞免疫療法 / 免 疫監視・腫瘍免疫 / 自然免疫 / エピジェネティクス / NK細胞 / キメラ抗原受容体 / 養子免疫療法 / メモリー形成 / 悪性腫瘍 / NK細胞 / 遺伝子改変 |
研究開始時の研究の概要 |
がん抗原を認識するキメラ抗原受容体 (CAR)導入T細胞療法は、一部の血液がんにおいて実際の臨床に導入されているが、個別に細胞製剤を準備する必要があることに加え、稀に重篤な神経毒性が発症するなど、安全性においても課題がある。近年、NK細胞にCARを導入するCAR-NK細胞療法が開発され、少数例ながら臨床試験で有望な治療効果と安全性が示された。しかしT細胞と比べて長期生存能に劣り、持続的な治療効果という点で懸念が残る。本研究では、NK細胞に長期生存能を付与するための遺伝子改変方法を探索・同定を通じて、優れた治療効果を示すCAR-NK細胞療法の開発につなげることを目指す。
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研究実績の概要 |
キメラ抗原受容体(CAR)導入NK細胞は、造血器腫瘍に対しては臨床試験で有望な結果が報告されているものの、標準的な製造プロトコール、基本的な安全性、治療効果についてのデータは十分ではない。従来の理解と異なり、NK細胞にもT細胞に類似したメモリー様状態が存在し、その背景にある遺伝子発現、エピゲノムプロファイルの変化が明らかとなってきた。そこで本研究ではNK細胞のメモリー形成に中心的に関わる転写ネットワーク、エピジェネティックプロファイルを特定の遺伝子改変により再現することで、長期生存能・持続的な治療効果を誘導できるCAR-NK細胞療法を開発することを目標とした。 本年度は、CAR-NK細胞に長期生存能を付与する遺伝子改変方法の探索を進め、有望な遺伝子標的を同定することに注力した。健常人由来末梢血単核球、または臍帯血細胞よりCD56陽性NK細胞を単離した上で、解析に用いた。特にNK細胞が終末分化状態に至る過程で発現変化を来す遺伝子に着目して、それらの遺伝子の過剰発現、及びCRISPR/Cas9によるノックアウトを行った際の既往変化をin vitroで解析した。その結果、遺伝子Aのノックアウトにより、NK細胞の長期的増殖能が顕著に向上することを見出した。細胞傷害活性には大きな変化がなかった。遺伝子AノックアウトCAR-NK細胞は、マスサイトメトリー解析においても広範な細胞表面抗原の発現変化を示し、またRNAシークエンスにおいてもコントロールNK細胞と比較して1500個程度の遺伝子で有意な発現変化が確認された。 次年度以降は遺伝子AノックアウトCAR-NK細胞の持続的抗腫瘍効果をin vivoにおける実験系で評価する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたNK細胞の遺伝子改変に伴う機能変化の解析を進め、有望な遺伝子修飾標的を同定した。さらに、その分子メカニズムの一端を、遺伝子、タンパクレベルでの広範な発現解析を通じて明らかにすることができた。また、次年度以降進めるin vivo腫瘍モデルでの検討においても、今年度はCAR-NK細胞による治療モデルを整備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究データに基づき、遺伝子Aの改変(ノックアウト)に伴うNK細胞の機能変化をさらに解析する。CAR-NK細胞の抗腫瘍効果評価については、既に確立したB細胞性腫瘍NALM6をCD19標的CAR-NK細胞により治療するモデルを用いる。遺伝子AをノックアウトしたCAR-NK細胞が、高い抗腫瘍効果を示すか、体内での持続性の向上が見られるかについて評価を進める。また、遺伝子AはNK細胞の増殖能を顕著に向上させることから、腫瘍化のリスクについても評価を進める。in vitroにおける長期培養、及びin vivoでの経時的な末梢血のフローサイトメトリー解析により、異常増殖を示すNK細胞が存在しないことを確認する。 さらに2023年度までに、遺伝子AノックアウトNK細胞が特徴的な表面抗原形質を獲得することを明らかにしたことから、2024年度はそれらのマーカーを指標にNK細胞を分取して、遺伝子発現プロファイルを調べる。細胞集団ごとの遺伝子発現変化の変遷を追うことで、NK細胞のメモリー形成・終末分化過程における分化経路を明らかにすることを目指す。遺伝子Aはエピゲノム制御因子の1つであることから、遺伝子発現変化の背景としてエピゲノム変化が関与している可能性が高い。そこでATACシークエンスにより、遺伝子改変NK細胞がコントロールNK細胞と比較してどのようなエピジェネティック再構成を示すか明らかにするとともに、遺伝子発現データとの相関性について確認する。
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