研究課題/領域番号 |
23K27482
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補助金の研究課題番号 |
23H02791 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
平井 宏和 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70291086)
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研究分担者 |
今野 歩 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40509048)
細井 延武 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90543570)
六本木 麗子 群馬大学, 未来先端研究機構, 助教 (80719857)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | ミクログリア / AAV / 血液脳関門 / アルツハイマー病 / 遺伝子治療 / Iba1 / カプシド / 大脳皮質 / マウス / 遺伝子発現 / microRNA / 神経変性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いる遺伝子治療は難病治療に革新的な成果を上げつつある。ミクログリアはさまざまな神経疾患の発症に関与することから、ミクログリアへの遺伝子発現を可能にするAAVは神経疾患の遺伝子治療ツールとして極めて有望である。本研究では、静脈内投与で脳のミクログリアだけに効率的に遺伝子発現が起こるAAVの開発を行う。得られたミクログリア標的AAVベクターを用いてアルツハイマー病モデルマウスの作出及び、治療法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
我々はミクログリア選択的遺伝子発現を可能にするAAVプロモーターカセット(mIba1pr.-miR.T)を開発し、2022年に報告した。ミクログリアに遺伝子発現させる場合、従来のAAV9カプシドを用いているが、AAV9はミクログリアへの親和性が低く、ミクログリアへの外来遺伝子の発現効率は十分ではなかった。またAAV9-mIba1-miR.Tは線条体や小脳ではミクログリア選択的な遺伝子発現を示したが、大脳皮質に投与した場合、圧倒的なニューロンへのリークが観察されることが問題であった。一方、最近、ミクログリア選択性はないが、ミクログリアに易感染性のAAVカプシド変異体、AAV -MG1.2が報告された。そこで本研究では、AAV9からAAV -MG1.2に変更することで、ミクログリア特異的、かつ効率的な遺伝子発現が得られるのか検討した。 AAV-MG1.2-mIba1pr.-miR.Tをマウスの大脳皮質に投与して、3週間後に観察したところ、AAV9を使ったときとほとんど変わらず、ニューロンへの圧倒的な遺伝子発現が見られた。また脳関門透過型カプシドPHP.BとAAV-MG1.2のモザイクカプシドを持つ、AAV-MG1.2/PHP.B-mIba1pr.-miR.Tを作製し、マウスに静注して4週後に観察したが、ミクログリアへの遺伝子発現は見られなかった。以上が当初の計画であったが、全くうまく行かなかったため、AAVゲノムの改良を行った。その結果、従来のAAV9-mIba1-miR.Tのミクログリア特異性10%以下から、新規AAV9-mIba1-miR.Tでは90%と大幅に上昇、ミクログリアへの遺伝子発現効率も10%程度から70%まで大きく上昇した。まとめると、マウス大脳皮質への直接投与でミクログリアに特異的かつ、高効率で遺伝子発現を可能にするAAVベクターの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は以下であった。 1.脳実質投与mIba1pr.-miR.Tとミクログリア易感染性AAV-MG1.2カプシドからなるAAV-MG1.2-mIba1pr.-miR.Tをマウス大脳皮質に直接投与することで、ミクログリア選択的、効率的、かつ機能変容に十分な遺伝子発現が可能であることを示す。 2.静注 AAV-MG1.2及びマウスの血液脳関門を透過するAAV-PHP.Bからなるモザイクカプシドを外被にもつAAV-MG1.2/PHP.B-mIba1pr.-miR.Tを作製し、マウスに静注することで、中枢神経系の広い領域のミクログリアに遺伝子発現可能であるのか検証する 両方とも行ったが、1ではAAV-MG1.2を用いてもAAV9を用いた結果と変わらなかった。また2の静脈投与においても、AAV-MG1.2/PHP.BとPHP.Bを比較したが、どちらもミクログリアへの発現はほとんど見られなかった。 そのため、カプシドではなくAAVゲノムに着目して、異なるmiR.Tを使用したり、miR.Tの位置を変化させたりする実験を繰り返し、マウス大脳皮質への直接投与でミクログリアに特異的かつ、高効率で遺伝子発現を可能にするAAVベクターの開発に成功し、特許出願も行った。当初の方法ではないが、マイルストーンを達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究項目:令和5年度に開発に成功した、改良型AAV9-mIba1pr.-miR.Tを用いて、令和6年度以降の研究を遂行する。 1. 改良型AAV9-mIba1pr.-miR.Tを用いて機能分子(カルシウムセンサーやチャネルロドプシンなど)を発現させてミクログリア機能をモニターできるのか検証する。 2. 改良型AAV9-mIba1pr.-miR.Tを用いて、ミクログリアをターゲットしたアルツハイマー病マウスモデルの作製、及び既存のアルツハイマー病マウスモデルの遺伝子治療を試みる。 2について、アルツハイマー病の患者及びモデルマウスにおいて、ミクログリアの活性化と電位依存性カリウムチャネルKv1.3の発現増強の相関が報告されている(Revuelta M et al. Front Cell Neurosci. 2022)。またアルツハイマー病モデルマウスにKv1.3のブロッカーを作用させることで、炎症誘発性ミクログリアの機能が減弱、アミロイド沈着が減少、海馬の神経可塑性が増強し行動異常も改善することが報告されている(Di Lucente J et al. Glia. 2018 Sep;66(9):1881-1895.)。そこで、 ①野生型マウスのミクログリアにKv1.3を過剰発現させるとミクログリアが活性化し、行動学的障害が出現すのか、さらにアルツハイマー病モデルマウスの病状初期にKv1.3を過剰発現させることで進行が促進するのか検討する。 ②アルツハイマー病モデルマウスのミクログリア選択的に、miRNAを用いてKv1.3をノックダウンすることで、細胞学的、電気生理学的及び行動学的なフェノタイプが改善するか明らかにする。
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