研究課題/領域番号 |
23K27545
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補助金の研究課題番号 |
23H02854 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長縄 慎二 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50242863)
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研究分担者 |
曽根 三千彦 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30273238)
田岡 俊昭 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (30305734)
西口 康二 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30447825)
伊藤 倫太郎 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (80813336)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 神経変性疾患 / メニエール病 / 磁気共鳴画像 / Glymphatic system / 緑内障 |
研究開始時の研究の概要 |
脳や感覚器の各種変性疾患の発症前段階やうつ病、COVID-19後遺症など従来の画像で明らかな異常が描出されない状態での早期介入機会創出の ため、脳や感覚器の血管透過性と老廃物排泄機能に着目した。脳、眼球や内耳についてこれらの時空間的情報を一度に非侵襲的にヒトで取得で きる独自開発した各種先端MRI技術を用いて、健常加齢性変化の正常範囲の確立と各疾患の未病状態検出のための基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
脳や感覚器の各種変性疾患の発症前段階における早期介入機会創出のため、老廃物排泄機構(waste clearance system)の機能低下とBlood Brain Barrier, Blood Retinal Barrier, Blood Labyrinthine Barrierの透過性の亢進の両者に注目した新しい視点から研究を展開するという当初の目的に従い研究を進めている。 昨年度(2023年度)は、海外のグループ(ドイツ、アメリカ、インド、ベルギー、スエーデンなど)との密なコミュニケーションによって現時点での研究到達状況を調査して、複数の国際共著を含めた総説出版をまず行った(JMRI 2023; Invest radiol 2023; J Vestib Res 2023)。また一部の海外のグループの手法の問題点も指摘して、科学を正常な方向へ戻す努力も行った。この内容はNat comm 2023に出版した。さらに並行して進めていた高感度パスルシークエンスの最適化には目途がついた。睡眠障害患者の介入前後のデータ解析と論文作成、髄膜リンパ管のS状静脈洞周囲や頭蓋骨骨髄における分布や発達程度のデータ解析と論文作成、内耳内リンパ、外リンパへの造影剤微量分布の解析とその論文執筆等を進めている。S状静脈洞周囲の髄膜リンパ管の発達と頭蓋内のクリアランス機能との関連については、世界初の画期的な結果である。さらに内リンパにおける造影剤の分布の検出と解析も世界初である。加えて、動物眼球における薬剤分布の解析方法の確立と、ヒトへの応用も進めつつある。非造影での脳における間質液動態解析手法のさらなる洗練も進めている。非造影法では、DTI-ALPS indexの他、新たな方法の提案も検討している。非造影、造影の両手法を用いた海外との共同での軽微頭部外傷患者コホートでの間質液動態の解析も継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際的な研究進捗状況の把握ができたので、我々の研究が、いくつかの領域で世界の最先端であることを確認することができた。この過程で、英文総説3篇を出版した。Investigative radiologyやJ of Mag reso imagingといった放射線領域におけるハイレベルの雑誌も含まれている。 S状静脈洞周囲の髄膜リンパ管の描出や基底核の血管周囲腔への造影剤の移行が、静脈内投与後24時間での脳脊髄液からの造影剤排出(老廃物排泄機構)と関連があることを示せたのは意義が大きい。内リンパにおける造影剤の動態解析について世界で初めて扉を開いたのも、大きな成果である。これらは今後の論文化予定となるが、ほかにも関連原著論文としては、5篇を出版した。海外グループの非造影での髄膜リンパ管描出についの研究手法の問題点を発見したので、短い報告ではあるが、Nat communicationsにも論文が出版された。S状静脈洞周囲の髄膜リンパ管と脳脊髄液排泄機能との関連、睡眠障害およびその治療と老廃物排泄機構機能変化の関連や、内耳内リンパの透過性と年齢や内リンパ水腫との関連など、今後、論文報告を続けるべき結果も多く得られた。患者における眼球の撮像も症例が蓄積しつつある。さらに動物眼球での実験も複数回行っている。よって脳においても、眼球においても、内耳においても、本研究課題は順調に進展していると言って良い。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度(2023年度)までで、学術調査と国際共著の総説出版、パスルシークエンスの最適化はある程度、目途がついた。今後は、睡眠障害患者の介入前後のデータの詳細な解析と論文作成、髄膜リンパ管の静脈洞周囲や頭蓋骨骨髄における分布や発達程度のデータ解析と論文作成、頭頂部嚢胞と認知機能に関係の解析、内耳における内リンパ、外リンパへの造影剤微量分布の解析とその結果についての論文執筆、動物眼球における点眼薬や各種トレーサーの薬剤分布の経時的変化の解析方法の確立と、ヒトへの応用準備、非造影法と造影法での脳実質における間質液動態解析手法のさらなる洗練を進める予定である。 また海外の研究者との共同での動物における新規トレーサーの脳やくも膜下腔での分布動態の解析 海外における軽微な頭部外傷患者コホートを用いた間質液動態の解析も継続する。 2024年6月にはスエーデンのルンド大学でのGlymphatic symposiumにおいて、8月にはやはりスエーデンのウプサラ大学でのBarany society meetingで招待講演をすることとなっている。Glymphatic symposiumはGlymphatic systemを活発に研究している世界中の研究者が一同に集まる機会である。Barany society meetingはメニエール病関係の研究者にとって最高権威の学会である。これらの機会を通じて様々な情報発信、情報収集を行って、さらに効率的に画期的な研究を展開する。
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