研究課題/領域番号 |
23K27549
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補助金の研究課題番号 |
23H02858 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中村 教泰 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10314858)
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研究分担者 |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 教授 (00258401)
中村 純奈 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10821944)
水野 拓也 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (90398826)
塩浜 康雄 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40715017)
望月 ちひろ 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80831875)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 有機シリカナノ粒子 / セラノスティクス / 温熱治療 / 放射線治療 / 細胞内小器官 / 悪性黒色種 / 細胞骨格 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線治療と温熱療法の併用による難治がんの治療効果向上が報告されている。我々はこれら2種の治療を同時に行えると共に、X線と近赤外蛍光による画像診断が可能なマルチ温熱・放射線セラノスティクス粒子を合成し研究を進めている。本研究では放射線照射により本粒子ががん細胞のDNA損傷に加えて細胞骨格や細胞内小器官に障害を起こす “放射線ナノ・マルチ増感”に着目し、新たな治療法を開発する。細胞骨格など複数標的に対する多種の障害効果を増強し、それら効果の機能的かつ適切な時点による統合により強力な障害効果として集結するカスケード化による革新的な放射線ナノ・マルチ増感カスケード治療の創生を目指す。
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研究実績の概要 |
新しいがん治療戦略としてナノテクノロジーを駆使したナノ医学が提唱され展開されている。そして多機能化が可能なナノ粒子による “治療と診断の一体化”を実現するナノ・セラノスティクス医薬の開発が世界で活発に進められている。 悪性黒色腫などの難治がんに対して放射線治療と温熱療法の併用による治療効果の向上が報告されている。我々はこれまでに独自に開発した有機シリカ粒子(国際特許成立)を基本材料として放射線治療と温熱療法の2種の治療を同時に行えると共に、X線と近赤外蛍光による画像診断が可能なマルチ温熱・放射線セラノスティクス粒子の合成に成功し研究を進めている。そして本粒子が放射線照射によりがん細胞のDNA損傷を増強する効果に加えて細胞骨格や細胞内小器官に障害を起こす “放射線ナノ・マルチ増感”効果を持つことを見出した。 本研究ではこの“放射線ナノ・マルチ増感”に着目し、それを応用した新たな治療法を開発する。マルチ温熱・放射線セラノスティクス粒子の多機能化により細胞骨格や細胞内小器官など複数の標的に対して多種の障害効果を発揮させ、放射線照射後に損傷したDNAに対するがん細胞の修復反応を細胞の構造的、機能的な障害により阻害し、放射線増感効果のさらなる増強を図る。さらに複数の治療効果の機能的かつ最適な時点での発現とその統合によりDNA損傷と細胞内小器官や細胞骨格の障害が有効に連鎖し、効果が集結するカスケード化を実現する “放射線ナノ・マルチ増感カスケード治療”の創生を目指す。新規粒子と新規概念に立脚した革新的な難治がん治療の先駆けとして創造展開する。そして年々死亡率が増加傾向にある悪性黒色腫等の難治がんに対する革新的な医療の実現と患者の救済に貢献する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチ温熱・放射線セラノスティクス・ナノ粒子のマルチ増感化のための細胞内小器官を標的とした薬剤を探索し、評価を進めることができた。悪性黒色腫株化細胞B16細胞の細胞内小器官を標的として有効な効果を認める薬剤の選定が進行した。細胞内小器官に対する温熱治療により有効な細胞障害活性と放射線ナノ・マルチ増感を認める薬剤を発見することができた。細胞増殖阻害評価に加えて、細胞の形態変化と細胞死をイメージング技術を用いて評価を進めることができた。そして蛍光イメージングでの高解像3次元観察により粒子の細胞内分布、細胞骨格と細胞内小器官との結合や形態の経時的変化を1細胞レベルで多角的に評価する技法の展開ができた。さらに電子顕微鏡での細胞の3次元観察さらには光-電子相関顕微鏡法による観察を行い、治療効果と局在との相関解析する技術開発を進行できた。さらに 悪性黒色腫B16細胞担がんマウスに対するマルチ温熱・放射線セラノスティクス粒子の腫瘍組織内投与による治療効果の評価を進め有効性が確認できた。さらにX線CTによる生体内イメージングによるマルチ温熱・放射線セラノスティクス粒子の腫瘍内での検出と分布の評価を行うことにも成功した。診断と治療が可能なセラノスティクス粒子としての開発と放射線ナノ・マルチ増感に関する有効な成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、マルチ温熱・放射線セラノスティクス・ナノ粒子のマルチ増感化のための細胞内ターゲッティングと細胞内ドラッグデリバリーに重要な要素であるペプチドや細胞内小器官を標的とした薬剤を幅広く探索し、評価する。悪性黒色腫の株化細胞であるB16細胞に対して細胞内ターゲッティングについてはフローサイトメトリーや蛍光イメージングにて細胞への結合や細胞内小器官への局在の評価を行う。細胞内ドラッグデリバリーの有効性については細胞増殖阻害評価(WST-1アッセイ)等で評価を行い選定を進める。さらに有効な要素の結合法について粒子上の分子密度や分子-粒子間のスペーサー分子やリンカーの検討を行い効果の最適化を検討し、有効な構造についての知見を蓄積する。そして光学イメージングでの高解像3次元観察により粒子の細胞内分布、細胞骨格と細胞内小器官との結合や形態の経時的変化を1細胞レベルで多角的に評価する。そして培養細胞に対する粒子創製サイクルを確立する。さらに有効な粒子ついては B16細胞担がんマウスに対する効果を静脈または腫瘍内投与により評価する。粒子の分布評価や治療効果としてX線CT等のイメージング、ICP発光分光分析の元素測定による定量評価等を行う。さらに培養細胞と担がんマウスから採取した腫瘍組織での粒子の局在について電子顕微鏡レベルでの細胞の3次元観察さらには光-電子相関顕微鏡法による観察を行い、治療効果と局在との相関解析を検討する。そして犬を含めた担がん動物モデルに対する粒子創製サイクルの確立と微細精密観察の導入を進める。
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