研究課題/領域番号 |
23K27558
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補助金の研究課題番号 |
23H02867 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
張 明栄 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 部長 (80443076)
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研究分担者 |
謝 琳 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (30623558)
森 若菜 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 研究員 (30835442)
藤永 雅之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主幹研究員 (70623726)
山崎 友照 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (80627563)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ7 / PETイメージング / PETプローブ |
研究開始時の研究の概要 |
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(cyclic nucleotide phosphodiesterases、PDE)は、細胞内における環状アデノシン一リン酸(c AMP)及び環状グアノシン一リン酸(cGMP)のレベルを調節する酵素のグループである。本研究は、PDEファミリーの11個のアイソフォーム(PDE1-PDE11)の1つであるPDE7を注目し、ヒト脳内におけるPDE7を画像化できる、かつ定量性が優れる陽電子断層撮像(PET)用プローブを創出することを目指す。
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研究実績の概要 |
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(cyclic nucleotide phosphodiesterases、PDE)は、細胞内における環状アデノシン一リン酸(cAMP)及び環状グアノシン一リン酸(cGMP)のレベルを調節する酵素のグループである。本研究はPDEファミリーの11個のアイソフォーム(PDE1-PDE11)の1つであるPDE7を注目し、ヒト脳内におけるPDE7を画像化できる、かつ定量性が優れる陽電子断層撮像(PET)用プローブを創出することを目的とする。 PDE7は、PDE7AとPDE7Bとの2つの遺伝子で組成され、cAMPのみを加水分解する。PDE7Aは脳や末梢器官に発現しているが、PDE7Bは主に脳内の線条体、視床、海馬などに分布している。PDE7は広範な薬理機能を有するため、近年創薬のターゲットとなっている。例えば、PDE7阻害剤は動物実験で神経保護と抗炎症効果を示し、学習と記憶能力を改善できることが期待された。しかし、PDE7の機能が臨床で必ずしも明確でないため、PDE7阻害剤は他のアイソフォームに比べ、臨床開発が遅れ、適応症も決まっていない。PETを用いることで、生きた脳におけるPDE7の分布、機能解明及び治療薬の評価に役立つと期待できるが、現在までに、定量性がよく、真に臨床有用なPDE7のPETプローブの開発は開発されていない。 今年度申請者らは、10種以上の新規化合物を設計し、化学合成を行なった。その中から、PDE7に対して、高い結合能力と選択性を有する数種の化合物を見いだした。また、これらの化合物に対し種々な標識技術を用い、11Cで標識し、自動合成装置でPETプローブを合成した。 さらに、これらのプローブに対し、マウスやラットを用い、放射能分布、オートラジオグラフィ(ARG)、PET及び代謝物分析などを行い、PETプローブとしての特性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、申請者らは約10種の新規化合物を設計し、合成を行った。これらの中から、有用な新規PETプローブ候補として[11C]1を見出すことに成功した。 [11C]1はマウス及びラットへの脳移行性を有し、インビトロARGにおいても、脳内で一定の特異結合を示した。この結果から、[11C]1はPDE7のPETプローブ開発のLead Compound になりえることが明らかとなった。以下詳細に記す。 1. 化合物設計と合成: PDE7タンパク質の立体構造と先行論文で報告されたPDE7結合に必要な化学構造に基づき、計算化学などの手法を用いて、PDE7と選択的に結合できる新規化合物を10種設計し、合成した。2. インビトロ活性: 上記の新規化合物がPDE7及び他のPDEへのに対する阻害活性を測定し、また、脂溶性、トランスポーター活性などの物理化学性質を考慮したうえ、4種の標識化合物候補(logD: 1.5-3; IC50; 20 nM)を選出した。3. 標識合成: サイクロトロンより製造される11Cと18Fを用い、自動合成装置で標識合成を行い、4種の[11C/18F]標識化合物を得た。4. 有用性評価: 正常ラット脳の凍結切片を作製しバッファー中に入れ、[11C/18F]標識化合物とインキュベートを行った後に、脳切片上の放射能を測定し、インビトロ ARG画像を得た。また、 標識化合物をマウスとラットに投与し、マウス全身臓器における放射能分布及びラット脳PET測定を行った。 その結果、新規PETプローブ候補として [11C]1を見いだすことに成功した。[11C]1はPET試験では脳移行性を有し、インビトロARGでも、脳内で一定レベルの特異結合と選択性を示した。従い、[11C]1をベースにして、有望なPETプローブを見出す可能性があると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
[11C]1をLead Compound として、継続して計算化学などの手法を用いて、誘導体化合物のデザインと化学合成による構造最適化を進めつつ、in vitro/in vivoにおいてPDE7に対する高い阻害活性及び選択性を有する化合物を探索する予定である。また、これらの新規化合物がPDE7に対する阻害活性及び他のPDEへの選択性を測定しつつ、脂溶性、トランスポーター活性などの物理化学性質を考慮し、標識化合物候補(logD: 1.5-3; IC50; 20 nM and/or Kd; 10 nM)を取得する予定である。さらに、有望な標識化合物候補に対して、所属研究部で製造、使用可能な放射性合成中間体である[11C]CH3I、[18F]F-、[11C]CN-、[11C]COCl2、[18F]FEtBrなどを駆使して標識合成を行い、各種のPETプローブを得る。また、[11C]CH3IによるC-11Cカップリング及び18Fをベンゼン環に直接導入する技術を利用し標識合成も実施する予定である。以後、ラットin vitro ARG、屠殺法によるマウス放射能分布、ラットPET及びマウス代謝物分析などの手法により、[11C]1より優れる性質を有するPETプローブ候補を見出す予定である。また、これらの有用なプローブ候補に対して、PDE7だけでなく、他のPDE酵素に対する選択性など詳細のプロファイルを調べる予定である。さらに、これらの結果を用いて、ラット脳に対するPET測定を行い、プローブが脳内PDE7への結合能を定量で測定し、各種の数式モデルで解析して、小動物PET定量法を確立する予定である。
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