研究課題/領域番号 |
23K27615
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補助金の研究課題番号 |
23H02924 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
南学 正臣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90311620)
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研究分担者 |
三村 維真理 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00727084)
稲城 玲子 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (50232509)
西 裕志 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (90784174)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 低酸素 / HIF / 慢性腎臓病 / 糖尿病関連腎臓病 / エピゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
HIF活性化が臓器・細胞特異的にどのような効果を持つのかについて、HIF-PH のすべてのisoform のノックアウトマウスで HIF の部位特異的な活性化を誘導し、特に代謝リプログラミングと epigenome の変化(ヒストン就職、long non-coding RNA発現など)に注目し病態への影響を調べる。並行して培養細胞を用い、細胞外フラックスアナライザーを用いてエネルギー代謝の変化を調べるとともに、HIFの活性化が代謝リプログラミングと epigenome に与える影響を調べる。
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研究実績の概要 |
タモキシフェン投与により尿細管特異的にHIFの活性化を誘導したNdrg1-CreERT2/+:Phd1-2-3 flox/flox マウスを作成し、精査をしたところ、全身血圧の低下を認めた。血圧の低下は tail cuff法およびカテーテルによる直接計測により確認した。血圧低下の原因を探索し、血管拡張による強い降圧作用をもつ生理活性ペプチドであるアドレノメデュリンの近位尿細管での産生がHIF活性化によって亢進していることを、mRNAレベルとタンパクレベルで確認した。また、HIF活性化により複数のNaチャネルおよび二次性能動輸送のエネルギー源となるNa-K-ATPaseのβsubunitの発現低下をmRNAレベルで認めた。これらは、いずれも全身血圧低下を引き起こす可能性がある。一方、血圧低下に対するNa排泄の影響を調べるためにマウスの一日蓄尿を行ったが、尿中Na排泄量の差を見出すことは出来なかった。 また、タモキシフェン投与により尿細管特異的にHIFの活性化を誘導したNdrg1-CreERT2/+:Phd1-2-3 flox/flox マウスを用い、虚血再灌流モデルでの急性腎障害後の慢性腎臓病への移行を評価したところ、同腹のコントロールマウスと比較して障害後4週での血清クレアチニンの上昇が抑えられ、尿中アルブミンの低下を認めた。また、免疫組織学染色ではKi-67・pHH3の染色にてノックアウトマウスで障害後の尿細管の分裂が増加していた。腎障害軽減の尿細管特異的な分子メカニズムを調べるために、虚血再灌流を施行しないコントロールマウスとノックアウトマウス、虚血再灌流4週後のコントロールマウスとノックアウトマウスの4群につき、腎臓より尿細管のみ免疫磁気ビーズにより単離し、RNA-seqによる網羅解析のデータを作成して解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究計画に沿って、おおむね順調に進んでいる。初年度は尿細管特異的なHIFの活性化の影響を調べる研究を中心に計画を進めたが、全身血圧の低下という予想外の現象を見出し、当初の計画の実行に加え、それに対する検証と原因究明を進めることが出来た。今後、代謝への影響とエピゲノムの変化に注目した検証を進めるとともに、腎臓の他の細胞でのHIFの活性化の影響を調べる研究も展開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
尿細管特異的なHIFの活性化による全身血圧低下の機序を調べるため、siRNA を腎臓に導入して分子の発現調節を行う。具体的には polyethylenimine nanoparticle を用いた遺伝子導入を行う。また、組織のNOを測定して腎臓での末梢血管拡張作用の有無を調べる。マウスの一日蓄尿では尿中Naの差を認めなかったが、Naの評価の蓄尿は3日や1週間などあるていどの期間の蓄尿が必要であること、定常状態に達している段階での蓄尿では意味がないことなどから、タモキシフェン投与直後に1週間の蓄尿を行い、尿細管特異的なHIFの活性化によるNa排泄への影響を正確に評価する。 また、腎組織より得られた尿細管細胞の網羅解析(RNA-seq)の4群を比較することで、HIF依存的に働く遺伝子群、腎障害に伴って発現の変化する遺伝子群を網羅的に解析することができる。(例えば、コントロールマウスで腎障害前に比較して腎障害後に発現が下がった遺伝子は87あり、コントロールマウスと比して発現が上昇した遺伝子は630あり、両者を満たす遺伝子は7つあった。これらの遺伝子はHIF依存的に発現が上昇し、腎保護に関連する遺伝子の可能性がある。)この結果を踏まえて、尿細管特異的なHIF活性化が腎保護的に働く分子メカニズムを明らかにしたいと考えている。具体的には、RPTEC細胞などの培養細胞系で同様の遺伝子発現変化を誘導し、免疫組織学的染色で認めたような細胞分裂の促進がおこるのか、腎組織でのタンパク発現とも合致する結果が得られるか、検討することを予定している。 更に、今後、代謝への影響とエピゲノムの変化に注目した検証を進めるとともに、糸球体足細胞特異的にHIFの活性化を誘導したマウス(Podocin-Cre/Phd1-2-3 KO)などを用いて、他の細胞でのHIFの活性化の影響を調べる研究も展開する予定である。
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