研究課題/領域番号 |
23K27648
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補助金の研究課題番号 |
23H02957 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
笹岡 利安 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (00272906)
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研究分担者 |
恒枝 宏史 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20332661)
和田 努 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 講師 (00419334)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 嗅覚 / オレキシン / 糖尿病 / うつ / エネルギー代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病に併存するうつ病克服のため、感情コントロールの従来概念を代謝と内臓感覚を含めた生体応答として捉え直す。①感情が感情価、覚醒度、糖・脂質エネルギー量の三要素で形成されることを実証し、ストレスに伴う感情の三要素のひずみを嗅覚系とオレキシン系を介して調整できるか検証する。また②感情調節に寄与する全身性機構における自律神経系、ホルモン系、免疫系の役割を検証する。さらに③本研究で開発する感情コントロール療法が抗うつや糖尿病治療を改善するか検証する。脳と内臓の連関が織りなす「こころ」のゆらぎやひずみの構造を解明し、回復力を促進してうつと糖尿病の連動的な新規治療戦略を開発する。
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研究実績の概要 |
2型糖尿病と併存するうつ病の連動的な克服に向けて、匂いの外部受容を介した嗅覚認知の活性化による糖尿病とうつ病の防止について検証した。マウスの空腹時における食餌の匂い刺激は、短期的には食前と食後の脂質利用を促進して、長期的には高脂肪食負荷による糖代謝異常を防止する。そこで、嗅覚系による代謝調節効果をより明らかにするため、嗅球を摘出して嗅覚機能が消失したマウスでの糖脂質代謝につき調べた。対照マウスで認められる匂い刺激による食前の脂肪酸の上昇と食後の脂質吸収の亢進は、嗅球摘出マウスで消失した。通常食摂取下で観察すると、嗅球摘出マウスは一過性の活動亢進に伴い体重が経度減少したが、26週齢以後では耐糖能に変化は認められなかった。その際に中枢性代謝調節に重要な肝臓でのGeneChip解析において脂質代謝関連遺伝子の発現変化が認められ、嗅覚刺激により高脂肪食負荷での耐糖能異常を防止したことから、高脂肪食摂取下での嗅球摘出マウスの耐糖能を調べた。嗅球摘出マウスは対照マウスと比較して体重推移に差異は認めず、26週齢以後において耐糖能の悪化を認めた。その際の肝臓でのGeneChip解析とqPCRでの検証においても、耐糖能悪化と慢性炎症および代謝異常関連肝疾患に係る遺伝子発現の変化を認めた。以上より、嗅覚の保持が高脂肪食による糖尿病予防に重要と考えられた。さらに、嗅覚刺激による感情コントロールにつき、明暗箱を用いた受動回避試験を行った。マウスは暗箱を好むが、暗箱側で電気ショックを与えてストレスを体験させると、その記憶により明箱から暗箱に入る時間が遅延する。空腹時食餌性嗅覚刺激により暗箱での侵入潜時には変化を認めなかった。一方で、電気ショックを与えた暗箱に食餌を置いておくと、嗅覚刺激により暗箱への侵入潜時は短縮したことから、嗅覚刺激により葛藤が克服できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書への記載に基づいて研究を実施した。申請者の今までの研究成果をもとに、嗅球摘出マウスを用いて嗅覚の消失が高脂肪食負荷による耐糖能異常を悪化させた成果をもとに、嗅覚の保持が糖尿病防止に重要な知見を得て研究を発展させた。さらに、本年度の研究において、食餌性嗅覚刺激により電気ショックによるストレスの葛藤を改善する成果を得たことから、嗅覚認知の活性化が抗うつに役立つ知見として本研究の進展と成果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2023-2025年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書に記載したとおり、2024年度は2023年度の研究成果を更に発展させる。通常食および高脂肪食嗅球摘出マウスで実施したGeneChip解析をもとに嗅覚機能により糖脂質代謝恒常性の維持に重要な遺伝子群およびその調節機構を解明することで、嗅覚系の活性化による糖尿病防止に向けた介入標的基盤の確立をめざす。また、食餌性嗅覚刺激が葛藤を克服することと認知機能の関連および抗うつ効果を強制水泳試験や社会性敗北試験などで検証すると共にそのメカニズムの探求に向けて研究を推進する。さらに、オレキシン系からの介入により、感情価、覚醒度、およびエネルギー量の制御による糖代謝と抗うつ効果の連動的な検証についても研究の推進を図る。
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