研究課題/領域番号 |
23K27653
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補助金の研究課題番号 |
23H02962 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
堀江 公仁子 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (90261982)
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研究分担者 |
井上 聡 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (40251251)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 女性がん / 患者由来がんモデル / 治療抵抗性 / 内分泌・代謝変容 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、乳がん・子宮体がん・卵巣がんの女性がんについて、手術等で採取される検体から得られるがん細胞を生体に近い3次元状態で培養し、そこから動物に移植した腫瘍をつくり、これをがん親玉細胞を多く含んだ患者由来がんモデルとして確立する。このモデルを活用して治療薬に対して耐性ができるしくみや、がんが進行するにつれ、正常の組織とどのように内分泌作用や代謝作用が変化するかのしくみを一細胞レベルで解析できるような先進的な技術を用いて明らかにする。さらに治療が難しい女性がんに対して、今までに治療に活用されていない薬や新しい薬ががんモデルにおいて女性がんを抑えられるかを検討し、新たな治療法への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、乳がん・子宮体がん・卵巣がんの女性がんについて、患者由来がん培養系とそのマウス移植腫瘍系からなる実臨床に即したがん病態モデルを用いて、治療抵抗性獲得と難治化の過程で起こる内分泌・代謝変容の分子メカニズムを解明し、がん制御に関わる鍵となる分子・経路を標的とした新規がん診断・治療への臨床応用を目的としている。本研究で用いる患者由来モデルは、スフェロイド3次元培養法を用いて樹立する過程でがん幹細胞性を有する細胞分画が濃縮されており、高い自己複製能と治療抵抗性を示しやすい利点がある。この女性がんモデルとがん細胞株を比較しながら、一細胞レベルを含む各種オミックス解析によりがん難治化の転写制御機構を明らかにし、女性がんの進行に重要な転写因子・転写調節関連因子の同定と機能解析を進めている。がん病態ごとのマスター転写制御機構を探索するため、各種女性がん培養系におけるゲノム上のヒストンアセチル化領域をクロマチン免疫沈降シーケンスにより解析した上で、マサチューセッツ工科大学開発のRank Ordering of Super-Enhancers(ROSE)アルゴリズムに基づき、in silicoにスーパーエンハンサー領域を同定し、その近傍から高発現する分子に着目して、その細胞特性や治療反応性についての機能解析を進め、さらにそれら候補分子についての臨床的意義をがん臨床検体を用いて患者予後との相関解析から検討している。これらの研究成果に基づき、難治性女性がんの新たな分子標的治療法への応用を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、治療抵抗性に貢献し内分泌・代謝変容に関与しうる各種候補因子・経路について、本研究グループが同定し着目してきた各種のがん標的分子の発現調節を、女性がん臨床検体から樹立したがん幹細胞性を有する患者由来がん培養系および対照としてがん細胞株で行い、細胞特性への影響、遺伝子発現プロファイルとエピゲノム変化について解析を行った。乳がんについては、治療抵抗性をもたらす細胞特性の転写調節に重要な役割を担うスーパーエンハンサー(SE)領域をヒストン修飾のクロマチン免疫沈降解析より同定し、その近傍から患者由来がん培養系において高発現を示す転写因子に着目し、その発現調節による影響を遺伝子発現とエピゲノム制御の両面により統合的に解析して、当該転写因子の候補標的遺伝子を同定し機能解析を進めている。子宮体がんについては、複数系統の患者由来がん培養系SE領域近傍から高発現を示しホルモン治療抵抗性と関連するアクチン結合蛋白質に着目し、細胞特性に対する影響と子宮体がん臨床検体における免疫染色性と患者予後との相関解析を行う機能解析を進めている。卵巣がんについては、本疾患で高発現する長鎖非コードRNAとして独自に同定したovarian cancer long intergenic noncoding RNA 1の機能解析を患者腹水由来のがん培養系を用いて行い、進行卵巣がんの代謝変容をもたらすエピゲノム制御に当該RNAが作用する可能性を見出しており、現在その分子メカニズムの解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
各種女性がんにおいて、治療抵抗性と内分泌・代謝変容に関与すると考えられる因子・経路を見出しており、それらの発現調節による薬剤反応性、細胞増殖・遊走・細胞死等の細胞特性、代謝・呼吸状態、遺伝子発現プロファイルと転写調節等の変化を、患者由来がん培養系ならびにその移植腫瘍系により解析を進めていく。特に鍵となる因子・経路については、遺伝子発現プロファイルとエピゲノム制御への作用を患者由来がん培養系における発現調節にて一細胞レベルで解析を行い、この際の細胞遷移状態を疑似時間解析等により検討することによって、病態変化をもたらす転写制御機構を明らかにするとともに、各種がん病型の臨床検体を用いた病理学的解析によりその臨床的意義を明らかにする予定である。
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