研究課題/領域番号 |
23K27666
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補助金の研究課題番号 |
23H02975 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
山高 篤行 順天堂大学, 医学部, 教授 (40200703)
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研究分担者 |
松本 有加 順天堂大学, 医学部, 助教 (50813672)
須田 一人 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60784725)
中村 哲也 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (70265809)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 神経因性膀胱 / 膀胱拡大術 / オルガノイド / 腸管上皮剥離 / 二分脊椎 / 膀胱オルガノイド / 大腸利用膀胱拡大術 / 悪性腫瘍 / 大腸上皮剥離技術 / 腸管利用膀胱膀胱拡大術 / 再生医療 / 悪性腫瘍発生 |
研究開始時の研究の概要 |
腸管利用膀胱拡大術は、神経因性膀胱など疾患において膀胱容量不足改善する目的で施行される外科治療であるが、腸管粘膜由来の粘液と膀胱 上皮・尿の接触に起因する膀胱内結石や悪性腫瘍発生が術後の長期的問題である。申請者は、上皮を剥離したマウスやラットの結腸へ小腸オルガノイドを移植すると、小腸上皮機能が保持されたまま生着させられる再生医療研究技術を応用して膀胱拡大術に利用する腸管の上皮成分を膀 胱上皮に置換することで術後の長期合併症軽減に応用する着想に至り、本研究ではラット結腸組織へ膀胱オルガノイドを移植する技術を開発し 、移植部位を利用した膀胱拡大術を施行した後の合併症軽減への寄与を検証する。
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研究実績の概要 |
二分脊椎や後天的な脊髄損傷などを原因とした神経因性膀胱に対して、膀胱容量やコンプライアンスを向上させる目的で腸管利用膀胱拡大術が行われる。しかし、術後長期的に膀胱内結石や悪性腫瘍発生のリスクを有するため、それに対する管理や治療は患者にとっても大きな負担となる。代表者らは、上皮細胞成分のみを剥離した腸管組織に異なる組織上皮由来のオルガノイド細胞を移植する技術により、この課題を克服し得るかと着想した。 すなわち本研究では、①ラット正常膀胱上皮オルガノイド培養技術を確立し、②ラット結腸上皮を膀胱上皮オルガノイド細胞に置換したハイブリッド結腸を作成し、③ハイブリッド結腸利用の膀胱拡大術を行うと術後の膀胱内結石や悪性腫瘍リスクを軽減できるかを検証する。膀胱上皮の異所性移植による生着片の組織学的特徴や変化を明確にするとともに、膀胱拡大術後神経因性膀胱に対する画期的な再生医療技術開発を目標とする。 本年度は、①ラット膀胱上皮を多く単離し、かつオルガノイドとして効率よく培養できる条件検討を行い安定した培養系を確立した。②続いて、組織へのダメージは最小限でありつつも結腸上皮をキレート剤で剥離して生存性を確保するモデルを作成した。現在、結腸上皮剥離を行った組織への膀胱上皮オルガノイド移植実験と結腸利用膀胱拡大術モデル作成を進めており、今後はそれぞれで長期的な組織・分子発現解析を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、①まず移植する膀胱オルガノイド培養細胞の準備として、EGFP-tagラット膀胱から上皮を単離し培養を開始した。上皮単離に使用する基質の種類・濃度・反応時間の条件検討を行い、マウスやヒト膀胱上皮オルガノイド培養の既報や代表者ら自身の経験から、FGF2, 7, 10を組み合わせた成長因子の添加についても増殖・分化に対する効果を検証した。②続いて、ラット被移植体の腸管剥離技術導入のため、全身麻酔・開腹手術による以下の手技を試みた。すなわち、盲腸に近接する近位側結腸約1.5cm幅の領域をクランプしてキレート剤を還流させ、緩衝液の注入や様々な物理的刺激により上皮を良好に剥離し、かつ組織損傷や術後経過に悪影響が出ない被移植体モデルを作成した。ここでは、生体の生存性を維持しつつ、効率よく上皮剥離し得るキレート剤の濃度・暴露時間など詳細に検討した。さらに、上皮剥離した結腸領域にGFP膀胱上皮オルガノイド細胞を注入し、ここへ移植生着させる条件を検討した。組織解析像では、GFPオルガノイド成分では膀胱上皮由来分子を、非移植体の結腸上皮では結腸上皮特有の分子発現が確認された。予定している実験系へ順に取り掛かることができたため、進捗状況区分としては「概ね順調である」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、結腸上皮剥離を行った組織への膀胱上皮オルガノイド移植実験を継続し、移植後1週・1ヶ月・3ヶ月でGFP陽性移植片について層構造の形成、(未)分化度、増殖能について組織解析を進める。特に、移植実験のために準備した膀胱上皮オルガノイドが未分化な性質であっても生着後に分化が進むか、或いは準備の時点で高分化なアンブレラ細胞が含まれていると生着後の分化も安定するのか、検証する。 大腸利用膀胱拡大術モデルについては、術後1ヶ月・3ヶ月に生存率・膀胱内結石の有無、組織所見で慢性炎症像・リンパ球集簇の有無・線維化・過形成像や悪性腫瘍発生の有無を評価していく。 続いて膀胱上皮化大腸組織利用膀胱拡大術による合併症抑制・形態機能への作用を検討する予定とし、膀胱オルガノイド移植によるハイブリッド遊離結腸を用いて、移植後1週時に膀胱拡大術を施行する。膀胱オルガノイド非移植結腸利用拡大術施行群と比較して、拡大術後の結腸領域と元の膀胱組織をそれぞれ採取して、慢性炎症・癌化機構に関するシグナル経路の活性化をRNAシークエンスで解析する。具体的に、早期膀胱癌で活性化されるFGFR3・HRAS・PIK3CA関連シグナルや進行癌で不活化されるP53・ RB・PTENなどにも注目し、qPCRと併せて解析を進める。さらに、従来の大腸利用膀胱拡大術後にみられた膀胱結石や腫瘍性病変について、ハイブリッド結腸利用拡大術によってその頻度が軽減されるか、検証する。
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