研究課題/領域番号 |
23K27722
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補助金の研究課題番号 |
23H03031 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小早川 和 九州大学, 大学病院, 助教 (40772322)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2027年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2026年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 脊髄損傷 / アストロサイト / 好中球 / 神経幹細胞 / グリア瘢痕 |
研究開始時の研究の概要 |
脊髄損傷後の組織修復には限界があり、そのため重度の損傷を生じた患者は一生残存する麻痺に苦しむ。この脊髄損傷の病態が年齢依存性である可能性があるため、生後2日のマウス (P2マウス) と8週齢マウス (Adultマウス) を用いてそれぞれ脊髄損傷を作成したところ、Adultマウスでは歩行不能な重度の麻痺が残存した一方で、P2マウスではほぼ正常に歩行可能な程に脅威的な運動機能回復が起きる事が明らかとなった。そこで、P2マウス特異的な中枢神経組織再生メカニズムを多面的に解析し、『幼若な脊髄の性質を成熟した脊髄に導入すれば、損傷脊髄が再生するのか』について検証する。
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研究実績の概要 |
脊髄損傷後には神経細胞の軸索が切断され、残存した軸索も脱髄により神経伝達が障害され、アストロサイトと呼ばれるグリア細胞が瘢痕を形成し軸索の伸長等の脊髄再生を阻む。このように脊髄損傷後の組織修復には限界があり、そのため重度の損傷を生じた患者は一生残存する麻痺に苦しむ。この脊髄損傷の病態が年齢依存性である可能性があるため、生後2日のマウス (P2マウス) と8週齢マウス (Adultマウス) を用いてそれぞれ脊髄損傷を作成したところ、Adultマウスでは歩行不能な重度の麻痺が残存した一方で、P2マウスではほぼ正常に歩行可能な程に運動機能回復が起きる事が明らかとなった。そこで、脊髄損傷後にP2マウスのアストロサイトをCell sorterにて選択的に回収し、遺伝子発現解析を行なったところ、反応性アストロサイトのマーカー遺伝子Vim, Ctnnb1, Gfapの発現がAdultマウスの反応性アストロサイトと比べて顕著に抑制されており、これはP2マウスの脊髄におけるIL-6の発現が抑制されている為であった。また、損傷脊髄の病理組織学的解析を損傷後12時間から損傷後14日目まで経時的に行い、Adultでは損傷急性期からアストロサイトが反応性アストロサイトとなって肥大化し、損傷7日目から徐々に損傷部にグリア瘢痕が形成されるのに対し、P2では細胞突起の伸長等は見られるものの、肥大化や瘢痕形成性アストロサイトへの形態変化は起きず、さらに損傷中心の組織欠損部が損傷4日目までにほぼ消失し、組織が修復され結果的にグリア瘢痕形成が起きない事を明らかにした。更に、修復された組織内での旺盛な軸索伸展現象を発見した。今後はP2特異的な神経再生機構を多面的に解析し、『幼若な脊髄の性質を成熟した脊髄に導入すれば、損傷脊髄が再生するのか』という問いを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、本研究のテーマでもある、『幼若な脊髄の性質を成熟した脊髄に導入すれば、損傷脊髄が再生するのか』という学術的な問いを検証するための知見を得るため、幼若脊髄における損傷後の組織修復過程を解析してきた。その結果、病理組織学的には、(i) Adultでは損傷急性期からアストロサイトが反応性アストロサイトとなって肥大化し、損傷7日目から徐々に損傷部にグリア瘢痕が形成されるのに対し、P2では細胞突起の伸長等は見られるものの、肥大化や瘢痕形成性アストロサイトへの形態変化は起きず、さらに損傷中心の組織欠損部が損傷4日目までにほぼ消失し、組織が修復され結果的にグリア瘢痕形成が起きない事を明らかにした。また、(ii) P2アストロサイトでは反応性アストロサイトのマーカー遺伝子Vim, Ctnnb1, Gfapの発現がAdultマウスの反応性アストロサイトと比べて顕著に抑制されており、これが後の瘢痕形成性アストロサイトへの変化を防止するために、グリア瘢痕形成が起きない事を明らかにした。(iii)さらに、P2脊髄に出現するOlig2陽性細胞が脊髄再生に果たす役割を解析するためにトランスジェニックマウスを立ち上げ、順次解析中である。このように、現在までの研究進捗は概ね順調である。その一方で、動物の飼育費(餌代等・人件費)等の高騰によりマウス購入数や維持数、消耗品の購入数を減少させる必要がある。現時点では実験継続に支障は無いが、今後より物価上昇に伴う相対的な研究費不足が懸念される。
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今後の研究の推進方策 |
P2アストロサイトにおいて、反応性アストロサイトに特徴的なNF-κB核内移行が見られない事を我々はすでに明らかにしている。NF-κB p65の核内移行と反応性アストロサイトへの変化との因果関係(即ち、NF-κBの核内移行が反応性アストロサイトへの変化に必要なのか、それとも反応性アストロサイトになった結果、NF-κBが核内に移行するのか)も不明である。そこで、NF-κBが反応性アストロサイトへの変化に必須かを明らかにするために、アストロサイトのNF-κBを阻害し、脊髄損傷後にFlow cytometryおよび免疫組織学的解析により、反応性アストロサイトの細胞数を確認する。これにより、脊髄損傷急性期の重要なイベントである「反応性アストロサイト出現」のメカニズムを調査する。さらに、今後はグリア瘢痕を起こさずに組織修復に関与しているP2脊髄における特異的なアストロサイト分画を抽出するために、P2脊髄でのSingle cell RNA-Seq解析を行う。これにより判明したアストロサイト分画の遺伝子発現を詳細に調査し、Adultの反応性アストロサイトや瘢痕形成性アストロサイトとの違いを明確にする。また、Adultの反応性アストロサイトや瘢痕形成性アストロサイトをP2特異的な分画にダイレクトリプログラミングの手法を用いて変化させる事が可能かを検証する。
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