研究課題/領域番号 |
23K27749
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補助金の研究課題番号 |
23H03058 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
相原 一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80222462)
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研究分担者 |
伊藤 大知 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50447421)
本庄 恵 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60399350)
木村 麗子 (山岸麗子) 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80704642)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 緑内障 / 眼圧 / 生体医用材料 / 瘢痕化 / ドラッグデリバリー / 房水流出路 |
研究開始時の研究の概要 |
緑内障の眼圧上昇の本態は房水流出組織瘢痕化といえる。房水流出路組織瘢痕化の標的因子からの瘢痕抑制薬の開発、また術後にはその薬物投与も兼ねた癒着防止剤、空間保持剤となる医用材料、この双方の開発による瘢痕化抑制が治療成績を向上できると考えた。また、既存の薬物治療法は自己点眼であり、持続性が課題である。そこで低侵襲かつ持続的なドラッグデリバリーシステム(DDS)が求められる。今回の研究目的は、眼圧上昇抑制のための瘢痕化抑制薬と、DDS・空間保持・癒着防止に応用できる生体医用材料を融合させ、房水流出路および濾過胞組織瘢痕化を抑制し『眼圧を上昇させない』新たな視点からの緑内障眼圧上昇抑制治療を展開する。
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研究実績の概要 |
1.組織瘢痕化病態因子の探索と薬物開発 ①「緑内障各種病型および術後眼での組織瘢痕化関連物質の検証と探索」については房水中の房水流出路瘢痕化促進物質として、ATX-LPA経路とTGFβに注目し、in vitro培養系で瘢痕化への関与を検証し論文化した。また、細胞内シグナルとして小胞体ストレスと、MEKが関与することを見いだし阻害薬が瘢痕化抑制することも論文化した。さらに、瘢痕化を抑制する物質としてATMに新たに着目した。ATMは傷害された細胞を貪食するマクロファージが認識するタンパク質である。ATMが線維柱帯房水流出組織に存在し、瘢痕化による房水流出抵抗上昇を抑制することを発見し論文化した。これらの瘢痕化に関与する新たな因子の発見により新たな眼圧上昇抑制への薬剤開発が期待される結果となった。 ②「ATX高発現マウスによる高眼圧動物モデルの開発と阻害薬投与による眼圧上昇抑制の検証」についてATXは確実な眼圧上昇因子であるため、高発現マウスを作成した。眼特異的に発現させるconditional 遺伝子改変マウスを作成し、tamoxifen誘導により慢性的な高眼圧を確認、組織学的変化を検証し、論文化した。このモデルは初めて臨床的に見いだされた房水中の眼圧上昇因子に基づいた開放隅角緑内障動物モデルとして今後、緑内障性視神経症の機序や新規薬剤開発に有用であると期待できる。 2.組織瘢痕化抑制への生体医用材料の応用とDDS 既に眼科治療薬手術補助剤として認可されているアルギン酸とヒアルロン酸をベースとした高分子ゲル化剤やマイクロニードルを用いてラットとウサギ結膜下での組織反応分解を検証し、生体適合性を確認した。続いて、濾過手術をウサギで施行し、濾過胞維持効果を検証したが、手術手技が安定しないため、満足のいく結果が得られなかった。現在、手技の改善習得中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題は大きく3つあり、組織瘢痕化病態因子の探索と薬物開発については7つの学会発表、4つの関連論文に成果が出ているため、極めて順調と考える。一方、関連課題2つの緑内障術後組織瘢痕化抑制への生体医用材料の応用とDDSについては、生体医用材料の作成と生体内反応は確認が取れたが、術後瘢痕化抑制や薬剤を混入した状態での有効性については未だ検証できていないため、遅れている。従って全体では概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
1.「房水流出路組織瘢痕化病態因子の探索と薬物開発」について、臨床応用するには細胞内シグナルではなく、房水中の因子を修飾する方が効率が良いと考え、ATX-LPA経路に標的を絞り、ATX阻害薬による眼圧下降が得られるか動物モデルを用いて検証する。具体的にはATX高発現マウス2系統を作成しているので、これらのATX阻害薬前房内注入あるいは点眼、結膜下注射などの方法で効果を検証する。また、貪食促進効果のあるATMの投与で眼圧上昇を抑制できるかをマウスモデルを用いて検証すると伴に、実際の緑内障病型でATMが関与している病態があるかを患者房水採取により検証する予定である。 2.「緑内障術後組織瘢痕化抑制への生体医用材料の開発と臨床応用」について、ヒアルロン酸ゲル化剤を用いてウサギ濾過手術モデルにおいて術後瘢痕化抑制の有効性を検証する。安全性については検証済みである。また、濾過手術モデルが安定しないため、最新の濾過手術に使用されているチューブを用いて濾過手術動物モデルを確立し臨床応用できるようにする。 3.「持続可能な薬物投与を目指した生体材料を応用したDDSの開発と臨床応用」前述の緑内障術後瘢痕化抑制へのゲル化剤の応用と伴に、最も頻度の高い白内障手術の術後抗炎症感染抑制に用いられる薬剤を混入したゲル化剤を開発し、DDSモデルとして動物での白内障術後眼に投与して、点眼との効果を比較し、ゲル化剤によるDDSが有効か検討することにした。白内障手術後抗炎症へのゲル化剤によるDDSが成功すれば、同様に緑内障術後抗炎症にも応用が可能である。 研究体制は変更せずに今年度以降も実施することで問題ない。
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