研究課題/領域番号 |
23K27762
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補助金の研究課題番号 |
23H03071 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57010:常態系口腔科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山座 孝義 九州大学, 歯学研究院, 教授 (80304814)
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研究分担者 |
園田 聡一朗 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10831985)
久本 由香里 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40729026)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | リンパ節線維芽細胞様細網細胞 / 口腔がん / センチネルリンパ節 |
研究開始時の研究の概要 |
口腔がんのリンパ節転移は不顕性に進行し、転移後に発見されるケースが多い。患者のQOL向上のために、低侵襲的な口腔がんのリンパ節転移に対する新規治療法が必要である。センチネルリンパ節は、がん遠隔転移の防波堤である。がん転移センチネルリンパ節では、線維芽細胞様細網細胞による物質輸送系の線維化が起こり、T細胞による抗腫瘍免疫機能が低下すると考えられている。本研究では、口腔がん細胞が線維芽細胞様細網細胞を介して抗腫瘍免疫機能を抑制するメカニズムおよびセンチネルリンパ節への転移機序を解明し、センチネルリンパ節転移に対する非外科的治療法の学術的基盤の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
口腔がんのセンチネルリンパ節(SLN)への転移は予後に重大な影響を与える。他のがん種では、原発巣がん細胞の分泌因子が原発巣と直結するSLNにおいてT細胞による抗腫瘍免疫機能を抑制し、リンパ節転移が生じることが報告されている。しかし、口腔がんがSLNの抗腫瘍機能を制御するメカニズムは不明である。本研究では、口腔がん細胞がリンパ節線維芽細胞様細網細胞(LNFRCs)を介して抗腫瘍免疫機能を抑制するメカニズムおよびSLNへの転移機序を解明し、SLN転移に対する非外科的治療法の学術的基盤の確立を目指す。本年度の研究で、マウス頸部リンパ節よりLNFRCsを単離する方法を確立した。コロニー形成法によって単離した細胞は約80%以上がgp38陽性かつCD31陰性であり、LNFRCsとしての要件を満たす細胞を高い純度で培養・維持することが可能となった。また、LNFRCsとリンパ球との混合培養により、LNFRCsの免疫調節能を解析した。LNFRCsとの接触型混合培養によって、CD8陽性T細胞の割合が増加することが示され、LNFRCsがT細胞を介した免疫調整能を持つことが示唆された。さらに、口腔がんリンパ節転移症例の病理標本の観察により、原発巣および転移リンパ節、周囲のリンパ節において、アポトーシス小体様の構造が多く局在していることを見出した。ヒト舌がんリンパ節高転移株(HSC-3)にアポトーシスを誘導し、アポトーシス小体(ApoBDs)を含むアポトーシス細胞由来細胞外小胞(Apo-EVs)を単離することに成功した。次年度は口腔がん細胞由来Apo-EVsがLNFRCsに及ぼす影響を免疫調節能に着目して解析し、抗腫瘍免疫能への作用を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、マウス頸部リンパ節よりリンパ節線維芽細胞様細網細胞(LNFRCs)を単離する方法を確立した。LNFRCsの培養下での解析は本研究課題の研究計画において中枢を成す解析手法であり、研究の進展にあたって非常に重要な成果を得ることが出来た。また、LNFRCsとリンパ球との混合培養によるLNFRCsの免疫調節能を解析し、LNFRCsの免疫調節能を示した。 口腔がんリンパ節転移症例の病理標本の詳細な観察により、原発巣および転移リンパ節、周囲のリンパ節において、アポトーシス小体様の構造が多く局在していることを見出した。原発巣で生じたアポトーシス小体のリンパ節への流入が、口腔がんの転移に先立ってLNFRCsへ影響を与えている可能性が十分に考えられ、口腔がんがセンチネルリンパ節の抗腫瘍機能を制御するメカニズムを解明する上で、非常に有用な知見を得られたものと考えている。 さらに、ヒト舌がんリンパ節高転移株(HSC-3)にアポトーシスを誘導し、アポトーシス小体(ApoBDs)を含むアポトーシス細胞由来細胞外小胞(Apo-EVs)を単離することに成功した。本年度確立したLNFRCsの培養系を用いて、次年度以降は口腔がん細胞由来のApoBDsおよびApo-EVsがLNFRCsへ及ぼす影響を詳細に解析する。 研究の目的に沿った知見が得られ、次年度以降の研究計画を遂行可能な状況にあり、本研究課題はおおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らは、口腔がんリンパ節転移症例の病理標本の観察により、原発巣および転移リンパ節、周囲のリンパ節において、アポトーシス小体様の構造が多く局在していることを見出した。今後は口腔がんのアポトーシスにより誘導される因子がリンパ節線維芽細胞様細網細胞(LNFRCs)にもたらす変異が免疫制御能におよぼす影響を解析する。 1. 口腔がん特異的LNFRCsの作製: 分泌因子およびアポトーシス小体(ApoBDs)、アポトーシス細胞由来細胞外小胞(Apo-EVs)をシグナル伝達因子であると仮定し、アポトーシスを誘導した口腔がん細胞からこれらの因子を得る。アポトーシス誘導口腔がん細胞由来の分泌因子およびApoBDs 、Apo-EVsを正常 LNFRCsの培養系に添加し、口腔がん特異的LNFRCsを作製する。また、T細胞(CD4陽性CD25陽性細胞、CD4陽性CD25陰性細胞、CD8陽性T細胞)と口腔がん特異的LNFRCsの混合培養を行い免疫制御能を解析する。 2. LNFRCsの変異遺伝子発現解析: 正常LNFRCsおよび口腔がん特異的LNFRCsにおける遺伝子発現の変化をRNA-seqによって解析する。特にT細胞制御因子の発現変化に着目し、免疫制御能に対する変異を同定する。 3. LNFRCsの疾患特異的変異を引き起こすシグナルの同定: 2.の結果をもとに、アポトーシス誘導口腔がん細胞由来の分泌因子もしくはApoBDs、Apo-EVsによってLNFRCsにもたらされる細胞内シグナルを検討する。シグナル分子の遺伝子発現を遺伝子工学的にknock-down、knock-out、またはknock-in操作を行い、LNFRCsの変異メカニズムを同定する。 4. 疾患特異的変異をもたらすシグナルの遮断: LNFRCsの疾患特異的変異をきたすシグナルを遮断し、LNFRCsの正常化を試みる。
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